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……どうも、ラキュだよ。
さっきさ、アヤネに自分の想いを伝えに言ったよ。
正直超恥ずかしかった……さっと言ってさっと帰るつもりが長引いたかな? って思ってる。
それと、さっきは変なテンションになってたね。
と言うか、これ……振られるの前提で告白したよね。
他の人に言ったら「玉砕覚悟で告白するとかアホだね」とか言われそうだ。
まぁ、それは僕も分かってたよ。
そこは僕の今後の動き次第、だからなんとでもなるからね、あまり気にしてないよ。
なんとでもなる、そう……なるんだけど。
目の前の状況は……なんともなりそうもないなぁ。
「ねぇ……どうして僕に抱き付いてるのかな?」
「きっ気分……です」
はい、言った通り……僕はクーに抱き付かれてる。
どうしてこうなった……自分でも分かんない、でもこうなった経緯は説明できるよ、それは少し前の事だ。
◇
「はぁ。逃げてきちゃった。今頃きょとんってなってるよね……」
僕はさっき、アヤネに気持ちを伝えた。
なんと言うか、凄く強引な告白だったと思う。
と言うか、あの状況で告白するとか、空気読めないにも程があったかもしれない。
失敗したね、完全にやるタイミングじゃなかったよ。
でもさ、仕方無いじゃん。
早くしないと、アヤネが何処かへ行っちゃいそうだったし、それなら早めに言った方が良いじゃん。
「まぁ、後悔はしてないんだけどね」
僕がやりたいって思ってやったからね、それが出来て満足だよ。
ただ……勢いついて、するタイミングを間違ったから反省してる。
過ぎた事はどうにもなら無いのにね、よしっ……この事で悩むのは止めよう。
一旦シルク君とアヤネの様子を見に行こう、その後は城に帰ろうかな。
「ラキュ君……」
後ろから声がする、この声は……クーだね。
「クー、シルク君の所にいたんじゃないの?」
さっきまでいたの見たけど、こっち来て良いの? まぁ2人きりにした方が良い雰囲気ではあったけどね。
だからクーはここに来たのかな。
なんて勝手に思ってるんだけど……全く喋んないね、黙ったまま、じぃっと僕を見てるよ。
「クー? どうかした?」
「……」
話し掛けても無言、困ったねこれは。
とりあえず、話し掛け続けてみる? あっ……そうだ、クーには言う事があったじゃないか、それを伝えないといけないね。
「クー、アヤネを引き止めてくれてありがと。それと、クーが言った様に自分の気持ちに素直になってみた。お陰でスッキリした、その事も含めてありがと。今度おれぃっ! ちょっ、クー!?」
びっビックリした! お礼を言おうとしたら急にお腹に向かってタックルしてきた!
めきょっ……と変な音がして僕のお腹にカボチャの被り物が少しめり込んだ。
クー……君さ、かっ被り物してるの分かってる? それ当たると痛いんだからね? 気を付けてよ!
なんて言えずに悶絶してると、がばっ……と僕の背に手を回してくるじゃないか。
その行為の性で、僕はパニックに陥った。
え……クー……さん? なにしてるの……かな?
困惑して、口をパクパクさせてると……。
「しっ暫く……こう……させてくだしゃい」
小さな声でこう言ってきた。
◇
それからずぅぅっとこんな感じ、今に至るって訳さ。
暫くこうさせてください……か、正しくは"させてくだしゃい"って言ったんだけどね……それは噛んじゃったんだろうね。
いや、そんな事は置いといてだ……抱きついてきた意図はなにさ、全く分からないよ!
だから……僕は、苦笑いしてる。
やっばい、なにこの状況……今僕に何が起きてるの? それが分からないまま時間が過ぎていく。
「どうしたの、クー? 体調でも悪い?」
「ちっ違いま……す」
ふむ、違うのか。
抱き付いてるから分かるんだけど、震えてるんだよね……だから何処か悪いのかと思ったけど、違った。
「あっあたい……」
「ん?」
「あっアヤネちゃんみたいに……だっ大胆な事、でっででっ出来ないけど……あっあたいなりの、あっアピール!」
えっえと、なにが? アピールって何さ。
怪訝な顔をクーに見せると、きゅっと力が強まった。
ちょっ、やばい……やっ柔らかいのが、あっ当たってる。
「あっあたいだって……やっやってやります! 前から頑張って……たんだもんっ!」
「あの……さっきから何言ってるの? 意味分かんないんだけど?」
「今は、わっ分かんなくて、いっ良いです!」
えぇぇ……なんで今怒られたの? すっごいキツい口調で言われたよ、ほっんと訳分かんないな、この状況。
「もっもう……ライバルの手助けは……しっしない」
「え、なにそれ。なんのこと?」
「なっなんでも……ない、です!」
おぅ、またキツい口調だ。
なぁんか隠してるっぽいね、まぁ……それは良いから早く離して欲しいんだけど。
「いや、なんでもないって……っ! いたっ! ちょっ痛い! 強く抱き締め過ぎだって! ちょっと……きっ聞いてる? 折れるっ折れるよ! クー! 聞けっ、僕の話を聞けぇぇぇっ!」
喋ってる途中から、段々抱き締めの力が強くなった。
これっ、締め付けてるよね! 明らかに抱き締めじゃなくて締め付けだよね!
「クー! いっいい加減に……はっ離せ!」
「やりますっ、やっやりますよ、あっあたい……前から……ほっ本気で……ががっ頑張って……まっままっましたから……」
「変な喋りしてないで離せぇぇぇっ!」
ミチっミチミチミチ……。
ねぇ、聞こえてる? 今の音聞こえたよね? これ、僕の肋骨が悲鳴をあげてる音だよ? 人間だったら絶叫するレベルの音鳴ってるの分かってる? いや、分かれ!
そう思いながら暴れる。
その時だ、クーが我に返り「うひゃぁぁっ」と悲鳴をあげて離してくれた。
あぁぁぁっ……やっと離れてくれた、助かった。
助かったから、クーに問い詰めよう。
なんでこんな事、したのかをね……変な理由だったら、ちょっと許せそうに無いよ。
「あっあのっ……ごっごごっごめんなさいっ! あっあたあっ、その……ごめんなさいぃぃぃっ」
「え、ちょっ…………行っちゃった」
なんで抱き付いて来たのか問い詰めようと思ったけど……その前に謝って何処かへ走っていっちゃった。
別に追い掛けても良いんだけど……今は止めよう、なんでか知らないけど、そうした方が良い気がしたからだ。
「……取りあえず、帰ろうか」
胸を押さえ、僕はそう呟いた。
アヤネに気持ちを伝えた。
正直、想いは確実に伝わっていないだろう、そこは今後の動き僕の動き次第だね……なんとかしてアヤネを振り向かせてみせるさ。
と、もうひとつ。
クー……さっきは明らかに様子が変だった、その事が凄く気になる。
気になるけど……後で考えよう、城に帰って姉上に今の事を伝えよう。
ふぅぅ……気になる事は出来たけど、何はともあれ一件落着……かな?
さて、じゃぁそろそろシルク君とアヤネを見つけながら城へ帰ろう。
あ……そもそも、あの2人きちんと解決出来たのかな? そんな不安を抱きながら、僕は歩いていった。
前に、この章はクライマックスだ! と書いてたけど……まだ続くっぽい。
話の終わらせ方って難しいよね! でも、もうすぐ、この章が終わるのはほんとだよ!
今回も読んで頂きありがとうございました!




