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「シルク、大好き……だから私と付き合って。お願い」
アヤネの想いがこもった言葉、俺は決して眼を反らさず、その言葉を聞いた。
「悪い、俺には好きな人がいるんだ」
その上で、まっすぐアヤネを見て伝えた。
今回はうつ向いて言ってない、ちゃんと俺の気持ちを真っ直ぐ伝えた。
前みたいな事は、絶対にするか。
何があっても、アヤネを真っ直ぐ見てやる。
「……どうしても?」
「どうしてもだ」
一瞬、ぴくっと眉を動かしたアヤネ。
表情を変えずに聞いてきたから、直ぐに答えた。
そしたら、小声で「そか」と漏らした。
「私、本当に好きなんだよ?」
「その気持ちは嬉しい」
すたっ……。
アヤネが一歩近付いてきた。
俺は動かない、ただ真っ直ぐアヤネを見続ける。
「私より、その娘が良いの?」
「……あぁ」
「私の方が……シルクの事、好きだよ」
「それでも……俺は、あいつの事が好きなんだ」
アヤネの質問に自分の気持ちを押し通して答えた。
だんだんアヤネの表情が必死になっていく、そして距離も近くなっていく。
正直、近いと言いたい、でも……今だけは我慢だ。
「ほんと? 嘘ついてない?」
「嘘はついてない、俺の本心だ」
「そんなの嫌、私の事好きになって」
かなりワガママな事を言っている。
ぷくっとほっぺたを膨らまして、ぱちんっ! と俺の頬を両手で叩いて、むにっと押さえつけてきた。
冷たい、細い指先で俺のほっぺたをむにむに触ってくる。
……えと、なにしてるんだ? 地味に痛いから、止めてほしい。
「お願い」
「……」
「ダメなの?」
こくっ、と俺はゆっくりと頷いた。
「そか」
まずい、嫌な空気になった。
そりゃそうなる、俺はアヤネを2度振った、アヤネは2度振られた。
こんな空気になるのが普通だ、だが……このままじゃダメだ。
「アヤネ……」
「待って」
「っ!」
そう思って声を掛けたが止められた。
「まだ……諦めない、から」
「え」
「シルクが、うんって言うまで……諦めないから」
アヤネの手……どんどん熱くなってくるのが分かる。
眼を潤ませて、口を尖らせて……いじける様に言い放ってきた。
その視線、指から感じる温度、紅潮した表情から俺は察した……。
アヤネ、まだ……諦めていない。
フドウさんの言った通りだ、失恋して悲しんだけど……立ち直って、また俺に告白してきた。
だけど、また俺が振った……でも今度のアヤネは逃げなかった、泣かなかった、それどころか意地になって想いを伝えてきた。
「今は他の娘が好きでも関係無い、あと……らっ君に告白されたけど……それも関係無い! 私が好きなのはシルクだけだから」
ぴとっ……。
アヤネが身体を密着させて来た、その瞬間俺の体温が急激に上がった。
思わず後ろに下がろうとしたが、しゅばっ! と素早い動きで後ろに手を回され逃げられない。
「……それだけ、伝えたかった。あ、それと……今は親友、でも……もうすぐ恋人になるから」
若干だが、声を震わせている。
そっ相当恥ずかしかったんだな……見てて分かる、視線は俺を向いてるが、めんたまが不自然に動いてた。
かくいう俺も、それを聞いて緊張してる、だから何も言えずにいた……。
「だからね、これはロアへの宣戦布告。した事ないしやり方分かんないけど……ぱっパパと、まっママのをこっそり見たのを……じっじつっじちゅえんしゅる!」
「……あっアヤネ?」
だけど、急に慌ただしい口調になったから声を掛けた。
パパとママ……て言うのは、フドウさんとシズハさんの事だよな? こっそり見たって……何を? 何をみたんだ?
って、おい……なんか抱き締めが強くなってないか?
それと、なっなんで背伸びをする? かっ顔……顔が近い! って、うぉっ!? ちっ近っ! 顔っ、近付いて……っ!?
「んっ」
「っ!? っっ! っっっ」
その瞬間だった、俺は、アヤネに……キスされた。
眼を瞑って、口を尖らせて……むちゅっと強く俺の唇に自分の唇を合わせてきた。
凄く強めのキス、ちゅっ……ではなく、むちゅぅぅっ……って感じか?
呑気に心の中で解説しているが……とんでも無い事が起きた。
その事に気づくのは……あと10秒くらい経っての事だった。
久し振りのキス描写。
やはり、この小説にはキスが無いとダメだと作者は思います。
あと、ラキュ君がふびんな気がするけど……気にしないでね。
今回も、読んで頂きありがとうございました。




