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どうやら魔王は俺と結婚したいらしい  作者: わいず
厳格な男、されど凄くお茶目さん
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ヴァームが姉上を抱き締める。

大きな胸に顔を埋めて声を圧し殺して泣いている。


暫くこのまま泣くのかな? そう思った姉上は何処かに座ろうとした。


「ありがとうございます。大分落ち着きました」


だけど、早くもヴァームは落ち着きを取り戻した。

すっと姉上から離れて、キリッとした顔になる。

え? 変わり身早くない?


「はや! 変わり身はや!」


あ、姉上も同じ事思ってたみたいだ。

確かに早い、さっきまであんなに落ち込んでたのに……なんて変わり身の早さ、まるで何事も無かったかの様にしれっとしてる。


「え、その……ヴァームよ。お主、その……平気なのかえ?」

「何がでしょうか?」


あっ、それ言っちゃうんだ。

今までの事なんて無かったように振る舞うんだね。


「いっいや、だってほら。止めるとか言ってたし? その……なにかあったんじゃ無いのかえ?」


オロオロしながら言うけど、ヴァームは涼しい顔で。


「あぁ、ありました。ですがもう大丈夫です」

「……」


こんな事を言ってきた。

これには姉上、何も言えず「えぇぇ……」と渋い顔して困った。


くははは……。

もう全く気にしてないんだ、ヴァームって不思議な所があったんだね。

と言うより、あまり思い悩まないタイプなのかも知れない、にしても変わり身速すぎだけどね。


「ロア様」

「なっなんじゃ?」


やたらと警戒する姉上、ずざっと後ろに下がって身構える。


「改めて言います。先程は失礼しました……」


真っ直ぐ姉上を見て、また謝った。

そんなヴァームに一瞬驚き、警戒を解く。


「あぁ……ん、うん。まぁ……許す。謝ってくれたからの」


そう言いながら視線をずらし気まずそうに頭をコリコリかく。

そして……なんだか喋りにくそうに口をモゴモゴさせてる。

ん? 何か言うつもりなのかな?


「まぁそのぉ……教えてくれんかの。さっき、なんであんな事言ったのじゃ?」


……そうか、姉上は寝てたからその理由を知らないんだ。


「それは……」


言い辛そうに唇を噛む。

そして意を決したのか……少しずつ、ゆっくり淡々と理由を話始めた。



「と言う訳です……」


時間を掛けて理由を話せたヴァーム、その間姉上は黙って話しを聞いていた。

その話が終わって、姉上は目を瞑る……暫く何かを考える様に腕を組み、目を開けた。


「ふむ……なるほどのぅ」


そう言いながら大きく息を吐いた。


「ヴァーム、あとラキュ。率直に聞くぞ」


そして、キリッとした顔をする姉上。

ん、なに? 何を聞かされるの?


「わらわってそんなに自分に自信が無いように見えるのか?」

「はい」

「そうだね」


そう思ってるから直ぐ答えてあげた。

そしたら、がくっと肩を下ろした。


「そっ即答……じゃと」


いやだって、そう思うもん。

そんなに驚く事なのかな?


「うぐぅ……そのぉ、なんじゃぁ。ダメじゃ、何言って良いか分からん」


難しい話だったもんね、言うことが出てこないのは仕方無いよ。


「複雑じゃなぁ、頭が痛くなってきたのじゃ」


そうだね、複雑だよ。

でも、難しく考える必要なんて無いんじゃない? ただ姉上は自分に素直になれば良い話だもん。


……ん? 姉上、腰に手を当てたね、そしてヴァームを見つめた。


「ヴァーム」

「はい」

「わらわを思って色々してくれたのは正直嬉しい、じゃが……一部間違った行動をしたのは、分かるな?」


……そうだね。

間違った行動、アヤネを失恋させるように導いた事。

結果、そうなるとしても他人がやって良い事じゃない。


ヴァームは、姉上の言葉を聞いて頷いた。


「はい」

「うむ、では……きちんと謝らないといかんな。まぁかなり難しいと思うけどのぅ」


そうだね、難しいね。

今はこんな状況だし、言うにしても、とても言い辛い事だ。

でも、ヴァームは真っ直ぐ前を向いて「はい、必ず」と答えた。


それを聞いて姉上は「そうか」と言って微笑んだ。


「よし、じゃぁ一旦この話しは保留じゃ!」


パンっ! と手を叩いて「くはははは」と笑う。

保留にするんだ、でもそうか……アヤネに謝る前にする事があるもんね。


「取り合えず、まずはシルクをなんとかする! まぁ……どうするかなんて考えが出てこんがな」

「まぁ……そう、だね」


姉上の言う通りだ。

どう関わって良いかわからない、だから同意した。

ヴァームも同じ意見なのか黙って首を振っている。


「……じゃが、始めにするべき事だけは分かる!」

「え、そうなの?」

「うむ。ってラキュよ……やっと喋ったな。さっきまでずぅぅっと黙ってたのに」

「うっ煩いよ。話に入るタイミング分かんなかったんだよ」


そんな事は良いから、始めにする事を教えてよ。

そう姉上に言うと、突然不適な笑みを浮かべ腕を組む。


あ、これあれだ。

きっとアホな事言う流れだ、僕には分かる。


「始めにするべき事、それは……食事じゃ!」


そう言いきった後、姉上のお腹から"ぐぅぅぅぅっ"と音がなった。

ほらやっぱり、アホな事だったよ。

なんだよそれ、いまの状況で言うことなの? なんて思ったけど、そうだね……姉上の言う通りお腹が空いた。

暴れた姉上を止めたり、難しい話とかしたからね……同時に疲れもしたよ。


「という訳で、行くのじゃ」


にっと笑った姉上は、僕とヴァームの手を握って部屋を飛び出した。

あぁもぅ、手握んなくても自分で行けるっての。


そんな事を思って、食堂へと引っ張られていく。

なにはともあれ、仲直りは出来た……後はシルク君とアヤネの事だけ、しっかりと解決しないといけないね。


でもその前に、腹ごしらえしようか……ちゃんと解決出来る様に。

今回も読んで頂きありがとうございました。


明日の更新、旅行に行く為無いかもしれません。

その時は申し訳ありません。


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