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ロアが作ってくれた料理はお粥だった、病人にはこれ! とうメニュー……熱々で美味しそうだ。
「薬味もあるがどうする?」
「いや、このままで食べるよ」
お粥からは湯気があがっている、熱い内に頂きこう……ロアの返事に軽く応じ土鍋の横にあるスプーンを取ろうとするが……。
「あっ待つのじゃ!」
「ん、どうした?」
ロアがそれを制止した、代わりにロアがスプーンを手に取る、そしてうつ向き気味で恥ずかしげに話してくる。
「わっわらわが食べさせてやるのじゃ」
きた、いつものやつだ、料理を持ってくると聞いた時から薄々感じていたがやはりこうなったか……。
「いや、自分で……」
「シルクに拒否権はない!」
そう言ってお粥を掬って口元にスプーンを持ってくる、食べさせて貰う程衰弱してないんだがな、正直恥ずかしいから自分で食べたい……だが俺の為に作ってくれたんだ、それ位聞き入れよう。
「わっ分かった……そうさせて貰う」
「っ! おっおうふっ……いっ何時になく素直じゃの、どうしたのじゃ?」
素直に聞き入れたってのにこんな言葉を返された……。
「どっどうもしない……」
「そうか……」
ロアは凄く嬉しそうだ、これはせめてものお礼だ、普段ならこんな事は断るんだからな! と言い訳を考えていた時だ……今までで黙っていたラキュが口を開く。
「何だか良い雰囲気だね、姉上もしかして僕はお邪魔かな?」
何時の間にか椅子に座っているラキュは悪戯に笑う。
「まっ全然全くもって邪魔ではないから食べていけ!」
そんなラキュの言葉を聞いて恥ずかしがるロア、ん? なんかこの光景、珍しくないか?
「そう? じゃぁ、食べて行こうかな? まぁ僕の事は空気だと思ってよ」
ラキュがまた姉貴をからかってる……楽しそうな顔をしてるな、恥ずかしがるロアは、べしべしっーーとテーブルを叩きラキュを睨む、完全に遊ばれてる。
「ほっほれ口を開けるのじゃ、あっその前に…」
スプーンを手に持ち、リゾットを掬うロア、それを「ふぅ…ふぅ…」と息を当てて冷ます、なんか可愛いな…。
「ねぇシルク君、今どんな気持ちかな? 見てて微笑ましいと思わない? 少なくともそんな顔してるよね?」
「っ!?」
うおっ! いきなりラキュが話し掛けて来たぞ、横から俺を覗くように見て来るラキュ…その顔はにやにやと笑っていた。
「今、姉上が……ふぅふぅしてくれて、可愛いなって思ってない?」
「!!」
なっなななっ……こっ心を読まれた……だと!
「その顔は図星? 図星だよね? そっかぁ思ってたんだ、ねぇ否定しても良いんだよ? あっ、本当に図星だった感じかな?」
はっ話し出したら止まらない、と言うかこっこいつ……。
「シルク……この愚弟は物凄くうざいじゃろ?」
あぁ…もの凄くうざい! 絶対に人をからかうのが大好きだろ!
「ごめんごめん、シルク君もからかうと面白そうだからね、ついやっちゃった、くはははっ」
満面の笑みで言いやがった、絶対に反省してないなこいつ。
「たくっ……程ほどにするんじゃぞ?」
「わかったよ姉上」
棒読みじゃないかったち悪いなこいつ、そんなラキュの様子を見てため息を吐きスプーンを俺に近付けてくる。
「さて、もう冷めた筈じゃろう……口をあけるのじゃ」
俺は頷き言われるまま口を開く。
「すっ少し焦げてしまったが…気にするでないぞ?」
そうか…少し焦げたのか、俺の口にスプーンを入れる……リゾットを口の中に入れるとスプーンを元に戻す。
「どっどうじゃ?」
俺はもぐもぐと咀嚼する、トマトの酸味が良い味出してるな……しかし風邪で味があまり分からない、薄く感じてしまう、だが美味しいのは分かる、ごくっーーリゾットを飲み込み感想を言う事にしよう。
「旨いよ…ロア」
「そっそうか、旨いのか、ふふっ…嬉しいのじゃっ」
本当に嬉しそうな顔をしている、微笑ましい。
「あっ……尻尾がたっておる」
「……あっ本当だ」
忘れていた、俺は今猫耳と猫の尻尾がついているんだったな、この猫耳状態早く戻れば良いんだけどな……まぁその事は今置いておいて言う事を言わなければいけない。
「ロア、ありがとう」
ロアにお礼を言うと照れる仕草を見せると「うぅ…」と小声で言って下を向く。
「ロア、後は自分で食べるよ」
「え……あっあぁ、そうか」
ん? 残念そうな顔をしたな……ん? 何か可笑しくないか? 何時もなら俺の言葉を無視してぐいぐい来る筈なのに素直に退いた……気になってロアを見てみると俺はある事に気が付いた。
「…ロア、目元どうしたんだ?」
「ふぇ!? なっ何も無いのじゃが?」
目元にくまがあるな…もしかして寝てないのか?
「わっわらわの事は気にせず食べるのじゃ、冷たくなると味が落ちてしまうぞ?」
笑って誤魔化すロア、そうか俺が病気になってる間ずっと介抱してくれたんだ、だからあまり寝てないんだ、それなのに料理まで作ってくれた…寝不足にもなるだろう。
「俺は寝れば治ると思う…少し寝たらどうだ?」
そう言ってロアの頬を触る、すると顔がぼふっーーと一瞬で真っ赤になる、まるで茹で蛸だ。
「しょ……しょしょ……しょんな事はははっ!」
慌ただしく目が泳いでる……図星か。
「人の介抱して自分が病気になったら駄目だ、寝てくれ」
「シルク君の言う通りだよ、姉上全く寝てないんだから……汗とか拭いたり、タオルとか拭いたりしてさ……時折、微笑みながらシルク君の唇にキスしたりしたよね?」
ラキュがそう言うとロアががたっと席を立つ、って俺が寝てる間にそんな事をしたのか?
「はわわわっ……わっわらわは! わらわは! もう帰るのじゃぁぁっ!」
ロアは大声をだし涙を流しながら部屋から掛け出ていってしまった、普段もキスする癖に何を恥ずかしがる必要があるんだ? その事実を知らされた俺の方が恥ずかしいんだぞ。
「あはははっ姉上って隠し事をばらされてるとこうなるんだよ」
そっそうか……と言うかラキュあまり姉をからかうんじゃない! そんな事を思いながらロアが作ったお粥を口に入れる、旨い……そう思いながらゆっくりと料理を堪能するのであった。
投稿が遅くなって申し訳ありません!