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テーブルに先程作った料理を並べ、あたいはアヤネちゃんを呼んできた。
「お腹減ったから動けない」と言ってたけど、無理矢理連れてきた。
で、今……アヤネちゃんはソファーに座って食事中、それをあたいは正面から見てる。
「あむっ……むぐっむしゃ……おぃひぃ、まぎゅっむぎゅっ……」
すっ凄い食べっぷり……誰も取らないからゆっくり食べれば良いのに、勢い良く食べてる。
もっもっと作っておけば良かったかも……これじゃ「おかわり」って言われそう、だって……明らかに足らなさそうだもん。
モキュモキュとパンを食べるアヤネちゃん、そのままあたいを見てくる。
なっなんだろ……もしかして言うのかな? 「おかわり」って。
「あひかと、くーひゃん。ほかけてたしゅきゃっしゃ」
ちっ違った、けど……何言ってるのか分からない、きっ聞き返さなきゃ。
とっと言うか、口に物入れて喋るのはダメだよ。
「ちゃっちゃんと、呑み込んで……かっから話さないと……だっダメ……です」
「ん」
あたいの言葉を聞いて、黙って口をモキュモキュ動かす。
そして……こくんっと飲み込んだ。
「ありがとクーちゃん、お陰で助かった」
「あっえっ……どっどう……いたしまして」
いっ言いたかったのは、おっお礼でしたか……。
「それと……おかわり」
くぅぅぅぅっ……。
またお腹を鳴らすアヤネちゃん、早く早くっと言いたげにフォークとナイフを持ってテーブルをトントン叩いてる。
「えと、よっ用意してるのは……こっこれだけ……なの」
「え」
あ、しょげちゃった……がっくりと下を向いちゃった。
どっどうしよ、もっもっと用意しとけば良かったのかな?
「……クーちゃん」
「はっはい!」
わわっ、話し掛けられた! もっもしかして怒られる? あたい怒られるの?
「そこは、厚かましいって突っ込むところ」
「…………へ?」
おっ怒られなかった、変わりに変な事言われちゃった、きょとんとするあたいに、更にアヤネちゃんは……。
「……ん、今の忘れて」
「え、え?」
更に変な事を言ってきた。
どっどうしよぅ、本当にどうしよう……訳が分からないよ。
「あ、クーちゃん」
「ひゃっひゃい!?」
こっ今度はなんですか? 身構えるあたい、アヤネちゃんは、フォークとナイフをテーブルに置いて微笑んだ。
「美味しかった、また食べたい」
「へぇ!? あっ……うっ……あっありがっありがとう……ごっございま……す」
あっあわわわ、美味しいって言われた。
うっ嬉しい、けっけど……とっ唐突すぎませんか? まっまぁ……そこは気にしちゃ、だっダメですよね。
そう考える事にしたあたいは、空いた食器を片付けようと立ち上がる、すると……。
「クーちゃん、聞きたい事があるの」
「はっはい?」
きっ聞きたい事? なっなんでしょうか……それは。
「あ、片付け手伝うよ」
「あ、えと……だっ大丈夫です」
「そう」
「えっえと……その、きっ聞きたい事ってなっ……なんです……か?」
「あ、うん……言うね」
アヤネちゃんって、話してたら突然話が変わる事がある気がしますね。
片付けの事は心配しなくても大丈夫です、だから聞きたい事を言ってください。
「城下町の出口……教えて」
「……へ?」
じょっ城下街の出口? そんな事を聞かれると思ってなかったから無意識に座っちゃった。
えと……それは知ってはいるんだけど、なっなんでそれを聞くのかな? 出口を知りたいって事は……街の外にお散歩に行くのかな?
「実はね……」
「はっはひ」
考え事してる間にアヤネちゃんは話し出した。
もしかして、理由を話してくれるのかな?
「出口に行こうとしたら……迷ったの」
「そっ……そうなんですか」
「うん、それでね。数日間歩いてたの」
「え!?」
すっ数日間歩き回ってたの? ほっ方向音痴過ぎませんか……。
「それでね、お腹へったの。で……倒れちゃったの」
衝撃の事実に固まるあたい、倒れてた理由はそれだったんだ……。
「でも、クーちゃんが助けてくれた。ありがと」
「っ、どっどう……いたしまし……て」
うぅっ、また感謝されちゃった。
背中がむず痒くなるから……言わなくていいよぉ。
「……と言う訳で、出口教えて」
てっ、また話が唐突に変わった! えと……りっ理由は分かったけど、なっなんだろ……アヤネちゃんの顔、なんか悲しんでる。
思い詰めた顔……って言うのかな、そんな顔をしてる気がする。
いっ言う前に聞いた方が良いかも知れない。
「そっその前に……いっ良いですか?」
「……いいよ」
こくっと頷くアヤネちゃん、よっようし、じゃぁ聞きましょう。
「魔王城の外に出て……なっなに……するんですか? おっお散歩?」
「違うよ」
即答された。
お散歩じゃないんだ……じゃぁ、何をするんだろ?
「お家に帰るの……」
聞く前に話してきた。
え? 家に帰る……あっアヤネちゃんが? なっなんで? アヤネちゃん……シルク君と付き合いたいから此処に居るんだよね。
なっなのに……帰っちゃうの? 訳が分からなくて黙ってると、アヤネちゃんは……。
「帰りたい、気分……なの」
え、なにそれ。それってどう言う気分なの? そっそれと……なんで、そんなに悲しい顔してるの? えっえと、どっどうしよ……あっ頭が真っ白になってきちゃった。
「だからクーちゃん、出口……教えて」
ぺこりっと頭を下げてくるアヤネちゃん、それを見たあたいは……とっ取り合えずもっと詳しく話を聞いた方が良い、そう思ったのでした。
マイペースなアヤネちゃん、いつも通りですね。
今回も読んで頂きありがとうございました。




