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あれから眠って少し時間が経つ、風邪を引いているせいか寝苦しさで俺は寝れなかった、なのでシパシパする目を何とかあける、すると窓から朝日が差し込んでくる、うっ……眩しいっ、どうやらすっかり夜が明けたらしいな。
「ふぁぁ…」
大きな欠伸をしてしまう、あぁ身体が重い、まだ風邪をひいているのか体調が万全ではない……だが取り敢えず起きようか? ずっと寝ていたから身体を伸ばしたい、そう思いベットから立ち上がる。
「さて……どうしようか?」
身体をぐぅっと伸ばして深呼吸、すぅ……はぁ……すぅ……はぁ……だめだ力が入らない、と言うか今の行動だけでダルさが急増してしまった。
「ふらふらする……もう一度寝よう」
まだ熱があるのか身体の震えを感じる、起きたばかりだけどベットに戻る事にした、その時だ……俺は何かに気が付いた、ん? なんだこれ? 何か床に黒くて長いのがぴょこぴょこ動いてないか?
「……?」
俺の足元にもふもふした黒くて長いのがある、なんだこれ? そう思って取り敢えず触ってみた、ピクッーー
おっ動いた! 気になってみてしゃがんで掴んでみる。
「っ! 触ったらびくんっとしたぞ!」
ふにふにして心地良い感触だ、だが触った瞬間俺の身体がびくんっとしてしまった、はて? 何故だろう……ん? あっあれ? この黒いの何か可笑しいぞ? こっこれ……もしかしなくても。
「俺についてないか?」
疑問に思いつつその黒いのを伝っていく、するとおれの腰に当たった。
「どっどうやらまだ熱があるみたいだな」
うん、これは尻尾だな……長くてすらっとした尻尾 、なんだか知らないが俺に尻尾が生えてしまった……って! そんな事あってたまるか! まだ熱があるから、こんな阿呆みたいな幻覚を見てるんだ。
「寝よう、そしたらこの幻覚も消えてるだろう」
そう思ってベットに再び寝る、まさか幻覚を見る事になるとはな……ある意味貴重な体験かもしれない、だがこのままだと困るのでちゃんと寝て治そう……よしっ、きちんと寝付く様に羊を数えよう……そうすると眠れると聞いた事がある、よしっ! 実践するぞ。
「羊が1匹…」
バタァァンッーー
俺が1匹目の羊を数えたその時だ、勢い良く扉が開け放たれた! なっなんだ! 俺は上体を起こし、扉の方を見る。
「おっはようございますですっ!」
そこには騒がしく挨拶する知らない人がいた、ん? 人って言って良いのか? その人には人間には無いものがあった、呆けているとゆっくりと近付いてくる謎の人。
「君がシルク君です? お初にお目に掛かるですねぇ」
身体に合わないぶかぶかの白衣を着た……えーとっ、これ何て言ったら良いんだろ?
「あっあの…あんたは?」
「ん? あぁ……そう言えば名前言ってなかったですねぇ、にへへぇ……うっかりしてたですぅ、メェは羊の獣人でメェと言うですっ」
リアクションに困ってたら向こうから名乗って来た、ひっ羊の獣人? よっ良く分からないが……羊を数えたら羊の獣人が来たと? 奇跡的なタイミングで現れたな……。
「んー? まだ顔が赤いですぅ」
とか思ってたら、そう言って心配そうな表情をして近付いてくるメェ、あっ……今気が付いたがメェは背が小さい、160㎝くらいだろうか? ふわふわとした天然ヘアーの白髪で頭の天辺にはぴょこんっとアホ毛が1本、耳の上にはくるんっと丸まった角、くりくりの大きな目でオレンジ色の瞳、可愛らしい顔立ちだ、背は小さいがそれに似つかわしくない程に胸が大きい……お腹がすらっとしていてお尻が小さい、そんな体型をしている。
「……まだ熱があるですね、それに熱の症状が現れてるです!」
そう言いながら、ぺたっーーと俺の額を触る、手は小さくてぷにぷに、この格好からして医者か? もしかして俺を看病しにきたのか?
「なっなぁ……君は」
「んー? あっ、メェはこのお城の医者だから安心するです」
やっぱり医者か……あ、そう言えばロアからメェの名前を聞いた事があるな……しかし子供っぽい喋り方だしゆるゆるした雰囲気だから心配だ、この人……いや、この獣人に看病して貰って大丈夫か?
「そっそうか……」
「そうなのですっ!」
むふぅーーっと誇らしげに胸を張る、そしたら、ぷるんっーーと胸が揺れた、あっあまり直視出来ない胸だな…。
「えと…変わった所とかあるですか? 猫尻尾と猫耳が生えた以外で気付いた事があったら言うですよ」
と、考えた瞬間その考えを振り払う、
そしたらメェが心配そうにどんな症状が現れてるのか聞いてきた、なんだきちんと医者らしい事をするじゃないか……心配して損した……ん?
「いっ今……なんて?」
メェの口からとんでも無い事が聞こえた気がする、猫尻尾がどうだとか……聞き間違えか?
「猫尻尾と猫耳が生えた以外で気づいた事はないです? って聞いたですよ?」
首を傾げ話してくるメェ、えっと……ドユコト? 俺が疑問を感じていると、メェがぽんっと手を叩く。
「まさか気付いてないです? ほらっ! これですよぉ」
そう言ってメェは布団の中に手を突っ込み何かを掴む
「んぎゃっ!?」
「うぉっ! 色っぽい声が出たですっ」
あっ明らかに俺の身体の一部が掴まれた感触だ、メェは何かを掴んだまま布団の中で掴んだ何かを見せる、それは紛れもない猫に生えてる尻尾だった。
「可愛い尻尾ですぅ、にへへー…」
にこっと微笑み掛けるメェ、俺の顔はどんどん驚愕の表情になっていく、なっななななっ!
「なんっだよこれぇぇ!」
「何って…猫の尻尾ですよ?」
いや、なにしれっと言ってるんだよ!
「わっ訳が分からないんだが……」
「まぁ訳が分からないのは無理も無いです、これは毒の症状ですからねぇ、それにぃ……えいっ!」
ぎゅむっーー
メェが驚く俺に説明をしてる時だった、メェが俺の頭に手を伸ばしまた何かを掴んだ。
「んにゃにゃ!?」
その瞬間、どくんっーーと身体が跳ねた、メェが手を離した後、俺は恐る恐るそこに手を伸ばす。
「嘘……だろ?」
そこには人には無い物があった、それはメェの言っていた猫耳だったのだ。
「シルク君が受けた毒はニャンニャカニャァンと言うです、この毒に犯されたら獣人以外は暫く猫の獣人になるです! そしてっ! その副作用で高熱を出したりするです」
「いっいや……説明されても理解不能なんだが?」
それなんて風邪だよ! 魔界にはこんな症状の病気があるのか? と言うか何だよニャンニャカニャーンって! 阿呆なのか? ふざけた毒の名前だ、その毒の名前を付けた奴誰だよよ!
「えへへぇ、まぁ人間界には無い風邪ですからねぇ、理解不能なのは無理も無いですっ! 因みに毒の名前を付けたのはメェです」
ポーズを決めながら、ぱちんっーーとウインクするメェ、お前がつけたのかよ! いや……今はそんな事はどうでも良い!
「これは治るんだよな?」
「時間経過と共に治るですよ? 今の様子だと……あと1時間位したら治るです」
「いっ1時間!?」
ふっふざけるな! この状態で1時間だとっ! ぺしぺしっと尻尾が布団を叩く、その様子を見て表情がひきつる俺、なっ何が悲しくて猫の獣人にならなくちゃいけないんだ!
「きちんと治るからそんな睨んじゃ嫌です」
「いっ今すぐに治せないのか?」
「無理です」
そっ即答……だと、それでも医者か! だっだが無理な物は仕方ない、ここは不服だが1000歩譲って受け入れよう、そう思って心を落ち着ける、すると動いていた尻尾が大人しくなる。
「この尻尾…感情によって動くんだな」
さて治るまでは1時間だったな……この間どう過ごす? ヴァームに見付かったら絶対に色々される、それは間違いないから見付からない様にしないと駄目だ。
くそっ、熱で身体が怠いのにこんな事をしないといけないなんて物凄い不幸だ、見付からない様に対策を考えていた時だ、メェが急に片手で俺の身体を押さえ付けてくる。
「どっどうした?」
「えへへへぇ、人の獣人化なんてレアですからねぇ……」
妖しく微笑みもう片方の手で白衣の中に手を入れる、あっあれ? 物凄く嫌な予感がするぞ。
「色々と調べるですよ!」
そう言って白衣から取り出したのは注射器だ、あっこれ……本気でヤバい奴だ、瞬間に身体が反応した……だが遅かった、メェは俺の身体の上に乗る。
「にへっにへへへーぇ、痛くしないですよぉ……ちょっと検査するだけですぅ」
涎を滴ながら、はぁ……はぁ……と妖しく息を吐く、妖しい視線で俺を見下ろしてくる。
「いっ嫌だ! やっやめろよっ医者がそんな事して良いとおも」
「お注射っ! ぶっすんですぅ!」
「いだぁぁぁぁぁぁぁっ!」
問答無用で腕に注射器を突き刺された、ものすっごく痛いっ! 注射器の刺し方間違ってるぞ! 痛くしないんじゃなかったのか! やっヤバい……今まで以上にヤバさが桁違いだ! これ、ヴァームやロアの比じゃないぞ!
「にひっにひひっにひひひひっ……」
わっ笑い方がマッドだ、しかも目が完全にイッてしまってる、俺はこの時命の危機を感じた……あぁこんな事言うのは初めてかもな。
「ロアぁぁぁぁっ助けてくれぇぇ!」
大きな声でロアを叫ぶ! まさかロアに助けを呼ぶ事になるなんて思わなかった、だがこうでもしないと俺は助からない! さて後は……。
「にひっにひひぃ…まずは猫耳から調べるですぅ」
艶かしく猫耳を触ってくるこのマッドな医者をどうにかしないといけない、俺とメェの戦いの火蓋今が切って落とされる!
濃い新キャラ登場なのです!




