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それは、ロアがラキュにシルクが見付かった事を伝えに行っている時、彼はまだ廊下を歩いていた……。
◇
魔王城の長い廊下をゆっくりと歩く。
その足取りは重い、気持ちも重い。
そう言えばさっき、ロアに抱き付かれた。
いつもなら叫び声の一つあげるんだが……そんな気分じゃなかった。
ただ黙ってロアを見つめた、きっとロアは不思議に思ってただろうなぁ。
それと、さっきロアに強く当たってしまった。
あの時、俺の事が心配で「何があったのじゃ?」って聞いてきたのに……冷たく返してしまった。
最低だ、放っておいて欲しいからと言ってあの態度は無いだろう。
後でロアに謝らないとダメだ。
「……」
そんな事を思いつつ、深いため息を吐く。
きっと、俺の表情は暗いだろうな。
しようがないだろ? さっき……そうなる様な事が起きたんだから。
俺は、思い返す様に斜め上を見る。
そう、それはアヤネが俺に告白してきた時の事だ。
そして、それに対して俺が答えを言うところ、その部分を思い返していく。
◇
ゾクンっ……ゾクンっ……ゾクンっ……。
心臓を高鳴らせながら、俺は息を整える。
「俺の答えは……」
頭がぽぉ……とする。
この数秒後、俺はアヤネに答えを言う。
「……」
アヤネは黙ったまま目を瞑る、そして俺の手をきゅっと握ってきた。
じっと答えを持っている、なら……早く、早く言わないと。
頭がぽぉ……とする中、俺はゆっくりと口を開き、静かな声でハッキリと、こう答えた。
「ごめんなさいだ」
その瞬間、ピシッーーと崩れる様にアヤネの表情が崩れた。
それと同時に、俺は我に返った、そして自分が言った事に驚く。
なに……言ってるんだ、俺は。
「え……うそ」
ぼそっと呟くアヤネ。
明らかに落ち込んだ顔をする、その顔を見た時……一気に罪悪感が膨れ上がる。
でっでも……アヤネに告白された時、急にナハトの顔が浮かんで来たんだ。
その時、言わないと……そう思った。
そう思った瞬間、自分でも良く分からない内に……ごめんなさいを言っていた。
完全に無意識だ……無意識でアヤネの告白に答えてしまった。
「シルクは言った、好きな人がいるって」
「え……」
と、その時……不意にそんな事を言ってきた。
そんな事、言った覚えは……いや、ある。
思い出した! 確か、アヤネが俺に「一緒に帰ろ?」と言ってきた時だ。
その時俺はそう答えたんだ。
……って、ちょっと待
今思ったが、アヤネがここに残るって言い出した理由って……俺に告白する為? だからアヤネは俺を元の街に連れて帰ろうとしたのか?
きっ気付かなかった。
そっそんな意図があったなんて……まったく、思いもしなかった。
「今でも、その気持ちは変わらない?」
目を潤ませて言ってきた。
え……こっこれ、どう答えれば良い? わっ分からない、どうすれば良い?
答えに迷ってると、アヤネは続けてこう言ってくる。
「ハッキリ言って……いいよ。シルクの本音が聞きたい」
苦しそうな表情だ。
そんな表情で俺を見てくる、ハッキリ言って……良い?
そう言われたが躊躇した。
良いのか? 本当に言っても……正直、言うのを戸惑っている。
いま、ハッキリと自分が思ってる事を言えば……何かが崩れそうな気がするからだ。
「……なにも言わないの? それとも、喋りたくない?」
くりゃっと首を傾げるアヤネ、俺はアヤネから視線を背けた。
その行動を見たアヤネは「そう……」と呟き、俺から離れて行く。
「頑張ったのに……シルクは私を見てくれないんだね」
っ!!
その言葉が俺の心に深く突き刺さった。
咄嗟に「いや、違う!」と言おうとした時……アヤネは笑顔を見せていた。
本当の笑顔じゃない、作られた笑顔、目から涙を流していた
そして、アヤネは……。
「ばいばい……」
そう告げた後、アヤネは逃げるように部屋を出ていった。
俺はベットから飛び起き、追い掛け様とした時、脚が止まった。
追い掛けてどうする? 俺は今、アヤネを傷付けた……そんな俺がアヤネに何をする気だ?
そう考え、俺はベットに座り、両手で頭を抱えた。
……やってしまった。
また、アヤネを傷付けてしまった。
独り部屋に残された俺は、嘆き悔やんだ。
バカだ、鈍感にも程がある……おれは、俺は! アヤネの気持ちに気付いてやれなかった。
◇
暫くそんな風な事を思った。
その数分後、自分でも良く分からない内に部屋から出て意味もなく歩いてる。
自分でも何処に行こうかとか決めてない。
はぁ……俺、あの時、どうすれば良かったんだろうな。
今回も読んで頂きありがとうございました。
沢山のブックマークありがとうございます。
因みに、もう少しで文字数が10万文字になります。
では、次回もお楽しみに。
 




