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どうやら魔王は俺と結婚したいらしい  作者: わいず
チョコより甘い告白を……
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お待たせぇ、って感じで待ち合わせの場所まで辿り着いた。

そしたら、待ってた俺の友達の3人が「おせぇよ」と口々に言ってきた。


それ、アヤネにいってくれ、俺は遅れてないぞ。

まぁ、言ってもアヤネは反省しないだろうがな。


「よぉしっ、取り合えずかったぱしから行こうぜぇ」

「あ、でもよぉ。パン屋のババァん家は止めようぜ。あのババァこぇもん」

「さんせー」


友達達がわいわい話してる中、俺とアヤネはその話を少し離れて聞いていた。

因みに、こいつ等が言ってるパン屋のババ……お婆さんと言うのは子供の中で恐れられるアフロヘアーで、サングラスをかけた80歳で現役バリバリでパンを作る女性パン職人だ。

怒らせると恐い、そうでないときも何か恐い。


悪戯してる子供を見付けると全速力で追っ掛けて来るから物凄く恐い! と言われてるお婆さんだ。

俺はそのお婆さんには怒られていない、たまににこっと笑って「良く食えよ」と言ってパンを貰った事がある。

……美味しかったのを覚えている。


「シルク、話しにいかないの?」

「いかない」

「なんで?」

「……なんとなく?」

「そう」


じぃっと見つめてくるアヤネに俺は淡々と答えた。

あ、この時顔が赤くなってたかもしれない。

だって、この時も手は繋がれてたからな。


「あぁぁぁっ、お前ら手ぇ繋いでるぅっ」

「ひゅぅひゅぅっ」

「カップルだカップルぅぅ」


と、ここで友達3人がはやし立てて来た。

指を指したり、口笛が吹けないから口で「ひゅぅひゅぅっ」言ったり、そして妙に見てて腹立つステップを踏んだりと、子供特有のからかいをしてくる。

今の俺ならスルーしたんだが、この時の俺はそうならなかった。

カッ! と顔を真っ赤にして何か言おうとした、だが……。


「あんまり言わないで……照れる」


アヤネが先に言った、しかもど偉い事を……。

否定しろよ! と心の中で突っ込んだだろう。


普通なら、そんな事言ったら余計にヒートアップするところなんだが、頬を紅く染め、視線をずらし恥じらうアヤネを見て、何かしらの反応をしちゃった3人は顔を見合わせてモゴモゴ言い合ってる。


「おっおぅ」

「あっ……うぅ」

「……」


なんだあんた等、顔真っ赤にしてうつ向いて……。

当時の俺は頭に?を浮かべてただろうな……。


「じゃ、行こ……こっちから良い匂いするよ」

「あ、ちょっ……!」


ぐいっ、と俺を引っ張るアヤネ。

鼻をすんすん鳴らしてどんどん進む、思えばこの時からアヤネの嗅覚は凄かったんだな……。


「あの2人……だよな」

「あぁ、将来もしかしたら………するかも」

「あっあぁ……だな、羨ましい」


後ろの3人も何か言いながら着いてきてる。

今になっても……こいつ等がなんて言ってたのか聞き取れなかったんだよな。

まぁ……たいした事は言ってないだろう。


「クッキー……違う、これはケーキかもしれない」

「わっ分かったから、引っ張るのは止めろ! 服が延びるだろ」

「やだ」

「えぇぇ……」


くすくす笑うアヤネにため息をはいた。

自分のしたい事は曲げない……この時、強く注意してれば成長した時、多少自分の意見を曲げてたかも知れない。

こんな事、今更思っても手遅れだけどな。


「あのね、私決めてるの」

「何をだよ……」


もう、引っ張られる事にした俺は呆れながら聞いた。

そしたら「ふっふっふっ……」と不適に笑ってくる。


「この街にある家全てまわってお菓子を食べるの……そしたら美味しいもの沢山食べた事になる」


さも賢い事言った様にドヤ顔してるけど、バカみたいな事言ってるからな。

とは、言わなかった、代わりに言ったのは……。


「あんまり食べ過ぎると太るぞ。あと虫歯になったりするぞ?」


こう言う台詞だ。

それを聞いたアヤネは「盲点だった!」と言わんばかりに驚いて足を止める。


「それは頭になかった」

「そっそうか……」

「虫歯になるのはヤダ、痛いもん」

「あぁ、俺も嫌だ」


頬をむにぃっと押さえて涙ぐむアヤネ。

誰も虫歯になりたい奴なんていないだろう、だって虫歯になったら治療しなきゃいけない、その治療が痛いのなんの……想像するだけで震えるね。


「決めた」

「なにを?」

「全ての家に行って、適度にお菓子食べる。そしたら大丈夫」

「全ての家に行くのしんどいぞ? 後ろの3人も嫌な顔してるし」


俺がそう言うとアヤネはちらりと後ろを向く。

友達3人は各々首を横に振っている、そして目で語っている。

「流石にそれはいやだ」「いきたくない」「行くなら一人でいけ」と。


その後、アヤネは俺を上目使いで見てくる。


「シルクは行くの嫌?」

「いやだな。疲れるし……そこまで行く体力もない」


その視線にどきっとしたのかそっぽを向いて言った。

それを聞いてアヤネは「そう」と呟く。

そしたら、急ににっ! と笑って……。


「分かった、行けるとこまでにしよ」


元気良くそう言った。

ふぅ……良かった、と安堵のため息をはくと、アヤネがまたぐいっと引っ張ってきた。


「いこ、速く行ってお菓子食べよ。今はそう言う気分なの」

「っ、だっだから……引っ張るなぁぁぁっ!!」


俺の叫びなんて「やだ」の一言でかきけされる。

そんな状況に道行く人達は微笑ましい視線を向けてくる。くっそんな目で見るなよ……とか思ってたんだろうなぁ。


この時の俺は思いっきり、恥ずかしがっていたが……今はハッキリ言える。


この時間この瞬間が、すっごく楽しかったんだ。

だってアヤネも友達も……皆笑っていたからな、楽しくない訳がないんだ。


そんな楽しい気持ちを表に出さない俺は、楽しい気持ちを表に出しまくってるアヤネ、他3人とで、お菓子を貰いに街を歩いていった。

友達3人、名前とか考えたりしましたが……この話しか出てこないキャラなので無名にしました。

でも、個性は強くかいたつもりです!


今回も読んで頂きありがとうございました。

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