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「服、此処に置いておくからな」
篭に俺の服を入れつつ風呂場にいるナハトに声を掛ける。
「了解した」
風呂場からシャワーの音が聞こえる、磨りガラスごしにナハトの姿が見える、一糸纏わぬ姿……まさに生まれたままの姿だ、ナハトは斜め上を向いてシャワーを浴びている様だった。
「……くっ」
こっこれ以上見てはいけない……そう思って脱衣場から出る、その後俺はリビングに行き椅子に座ってナハトを待つ事にした。
「うふふぅ、楽しみだわぁ、なっちゃんのお風呂上がりの火照った姿っ」
「……」
その横で頭が痛くなる事を言う奴がいるが放っておこう、母さんが楽しそうに小躍りしてくる、全く……何が楽しいんだ?
「しぃ君の服……サイズが合うかしらぁ」
「どう…だろうな」
そう言えばそうだ……ただ服を置いて来たが……ちゃんと切られるよな?
「やっぱり私のを貸して上げれば良かったかしらぁ、お気に入りのぉバニースーツっ」
「あーはいはい、そうだなぉー、貸してあげたら良かったな」
「むぅ……思いっきり棒読みぃ、しぃ君ったら酷いわ」
酷いのはどっちだ……全く何時までも子供みたいな親だ、と言うかバニースーツ持ってたのかよ!
「ねぇ、しぃ君」
「なんだよ……」
「あれぇ? 何か疲れてなぁい……肩でもこったの?」
肩がこってるのは、あんたの性だよ! と言ってやりたいが……我慢しよう! 言ったら多分泣きじゃくる、そしたら面倒くさくなる!
「何でもない」
「まぁ良いわぁ、なっちゃんとは知り合いなの? 何か親しげだけどぉ……」
「親しげだったか? 1週間前に会ってそれっきりの相手だぞ?」
「えぇ!? 1週間前に会ってそれっきり! もぅっ、しぃ君ったらおませさんで酷いわっ! 女の子を1週間も放っておくなんて!」
母さんは腰をくねくね動かして、ぽっと頬を染める、一体何を考えてるのか知らないが絶対に母さんが考えてる様な事はしていない、酷いのは母さんの考えだ。
「ただ街を案内したんだよ、その間少し話をしただけの関係だ」
「そうなの? つまんないのぉ……てっきり母さんはぁ、なっちゃんのばーじ……」
「聞こえなかったのか? 街を案内して話をしただけだって!」
がっーー
と母さんの頭を掴んでがくがくっーーと揺らす、そんな事しか話せないのかあんたの口は!
「ふわぁぁっ! やっやめてぇっ、しぃ君が暴力振るうよぉ! 親不孝者ぉ!」
わんわんと泣き喚き俺をぽかぽか殴ってくる、忘れた方にもう一度言おう、俺の母さんは現在38歳である。
「あっあの……すまない、もう風呂を使わせて貰ったんだが……」
ん? どうやらナハトから風呂から出て来たみたいだ、見苦しい物を見せてしまった……。
「あぁ……そうか、わか」
振り替えってナハトを見た俺は言葉を詰まらせた、何故かって?
「ん、どうしたシルク? 我の顔に何か付いてるか?」
「いっいや! 何にも付いてないぞ……」
風呂上がりで火照った褐色肌から湯気が上がっていて艶のある肌もより一層艶っぽくなっていた、とても綺麗だ……つい見とれてしまった。
「まぁっ、なっちゃん似合ってるわぁ」
半袖の服と長い丈のズボン、まさにシンプルな服装……だが服のサイズがあってないのか、へそが見えてしまっている、サイズが合わないのは大方ナハトのあの大きな胸の性……いや何も言うまい。
「そっそうか? そう言って貰うと助かる」
「うふふふぅ……じゃぁ、私なっちゃんの服を乾かして来るわねぇ」
あっ……まだ乾かしに行ってなかったのか……そう思っていると母さんは小走りしてリビングから去っていく、あれ? なんか2人だけになったんだが……。
「朝方は降っていなかったのにな」
「……え? あっあぁ、そうだな」
とっ突然話し掛けて来たからびっくりした、びくっと身体が揺れてしまったじゃないか、そう言えば朝は雨降っていなかったな……降りだしたのは昼前位か?
「草原を散歩してたらこの様だ、運が悪いよ……でもここに家があったからそうでもないかな?」
「ははっ……そうだな、ある意味幸運かもな」
そんな会話をしつつ笑い会う、ナハトは艶のある髪の毛を靡かせ俺の隣にある椅子に座ってくる、少し良い匂いがした……。
「そうだな、そう考えると幸運だね。お陰でシルクに会えた、久し振りにね」
「なっ! 急に何言ってるんだよ、と言うか久し振りって今更かよ」
くすくすと笑うナハトに対して、俺は視線を反らす。
「くふふっ。まぁ元気そうで何よりだよ」
「あぁ、そっちもな、と言うかそれじゃ寒いよな? 上着取ってくるよ」
「いや、大丈夫だ問題ないよ……くふふ」
ん、なんだ急に笑って……何か可笑しな事を言ったか? そう思ってナハトの方を見てみる。
「優しいなシルクは」
「なっ! かっ風邪引いたら困るから言っただけだ! 阿呆……」
かぁぁっーーと顔が熱くなるのを感じた、その様子を見て悪戯に笑う。
「くははっ、本当にシルクはからかいがいがあって面白いな」
「煩い。上着取ってくるからそこにいろ!」
「あっいや……別に我は」
「良いから着とけって……万が一って事があるだろ?」
そう言って立ち上がりさっさと自室に行く、正直言えばこの場から逃げ出す為の言葉だ、あのままあの場にいたら可笑しくなってしまう。
「あっありがとう」
「あぁ」
自室の扉前まで来たら後ろからナハトの声が聞こえた、素っ気なく答えて自室に入る、さてなるべく大きい上着を渡さないといけないな、さっさと見付けてさっさと渡してしまおう。
「風邪なんか引いて欲しくないからな……」
そう呟いてクローデットの方へ行く……その時「風邪なんか引いて欲しくない」と言うふと出た言葉に少し妙な気持ちを感じながら服を物色するのであった…。
今回は短かったかな?
皆様、読んで頂きありがとうございます!




