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どうやら魔王は俺と結婚したいらしい  作者: わいず
襲撃のヴァハムート あの日の事を彼女は悔やむ
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辛い……もう一度言おう、辛い。

何が悲しくてヴァームの部屋で強制コスプレを受けているのか、それは勿論ラキュのせいだ。


いやでも、これは俺が引き起こした事であってこれはその反省……いや、まてよ? ラキュは俺を生け贄にした可能性があるよな? だとしたら物申したい気分だ。


「うふふふふ……」


色々考えながら、さっきから笑ってるヴァームに睨みを効かせてやる。

だが、俺の睨みをみるやいなや「あら、可愛いですねぇ」と言う始末。


何時も通り、コスプレをされると何時もこうなる。

当然だ、されるのが嫌だからな。


「はい、出来ましたよ」


ヴァームは俺の背中をぽんっと押した後、にこっと笑う。

俺は深くため息を吐いた後、無表情でこう言ってやった。


「そうか、じゃぁ脱ぐぞ」

「ダメです、まだ目に焼き付けてません」


目に焼き付けるな、俺を見るな、さっさと着替えさせろ! て感じの不満を心に抱きながら黙ってコスプレされる。


今回のコスプレはゴスロリ、いつどやに着たことがある服だ。

……くっ、ほんっと着心地だけは良いんだよなぁ。


「どうしたのです? そんな恨めしそうな目をして」

「その理由、分からないか?」

「はい」


はいと来たか、にっこにこの笑顔でさらっと言いやがって……腹立つなぁ。


「今のシルク様、お人形さんみたいですよ」


で、俺の今話した事はもう終わりか……少しは俺が恨めしい目をしてる理由を考えろ。


「……」

「あ、シルク様……まだ脱いではダメです」


そう思った後、しゅるりと服を脱ごうとしたが止められた、ちっ……。


「今舌打ちしませんでした?」

「気のせいじゃないか?」

「そうですか」


そう言ってヴァームは、俺の周りをあらゆる角度から見始める。

やけに鼻息が荒い……心なしかいつもより荒い気がする。


「んー……全体を見て良いとは思うんですが、何かもの足りませんね」


そうか、なにかが足りないのか……そんなの分かりきってる。

ここはバシッと言ってやろう。


「足りないのは常識だ、男が女の服を着てるのは可笑しいだろ?」

「何をいっているのです? シルク様は男の娘でしょう」


すっごい真面目に返された。

しかも「何言ってんだコイツ」的な顔をしてる。


「男の娘じゃない、極普通の男だ」

「いい加減認めませんか? 自分を偽るのは辛いですよ?」

「偽ってない! これが俺のありのままの姿だ!」


と言うか、偽る意味すら無い!

ぶんぶん腕を振って喋ると、ヴァームが慌てて俺の手首を掴んでくる。


「あぁ、そんな激しく動かないでください。ゴスロリの服を着てる時は静かな振る舞いを心掛けて下さい」


何が静かな振る舞いを心掛けろだ、してやるものか。

と言いたい所だが……無視して暴れて、この服に傷でも付けたら俺は酷い目に合う。

だから激しい動きはしないでおこう。


「なぁ……」

「はい、なんでしょう?」

「この服装……ハロウィンパーティで着るのか?」


その代わり口煩く喋ってやろう。


「はい、着ますよ? あ……その質問をすると言う事は、気に入りましたか? ゴスロリ」


嬉しそうなヴァーム、声を弾ませて俺に問ってくる。

うぉっといけない、この流れは完全に勘違いされたぞ。

さっさと否定しよう、じゃないとハロウィン当日にこの服を着る羽目になる。


「違う、勘違いするな」

「それ、ツンデレですか?でしてらもっとツンに意識を当てて下さい。そしてデレるならちゃんとデレて下さい。今のツンデレは0点です」

「お前は何を言ってるんだ」


否定したら、あらぬ誤解をされた。

何がツンデレだ、俺はそんな風になった覚えはない!


「ただ単に気になったんだよ」

「あら、そうですか……。残念です。気に入って貰えなくて」


はぁ……とため息をつくヴァーム、残念そうに目を細めて頬に手を当てる。

良かった、取り合えず誤解は解けたらしい……。


「でも、ある意味それで良かったかも知れません」

「……え?」


それで良かった? それってどう言う意味だ?


「実はですね……ロア様にいわれてシルク様とロア様専用の服を作っていたんです」


……やはりか、ハロウィンの為の服を作っていたんだな。

で、今それを俺が着ていると……。


「ですが、何時もと同じなんです……聞けばハロウィンは大きなお祭りだと聞きました。そのお祭りに何時も通りの服装を着ても良いのでしょうか? 否、良くありません!」


……熱弁してる所悪いが、俺はいつも通りの服装で良いと思うぞ。

ハロウィンだからって着飾る必要はない、仮装するとは言ったが……やらない人も当然いる。


仮装と言うのは個人の意思でするもの、だから押し付けるのは良くない。


と言いたい所だったが、口を挟まないでおいた。

今挟んだら、きっと真顔で「それが何か?」と言われるからだ。


「だから私は今、悩んでいるんです!」

「そうか……」


至極どうでも良い悩みだが、一応心配はしておく。

形だけだ、形だけしておいてこの場を乗り切ろう。


「はぁ……ここまでコスプレの衣装を作るのに悩んだのは初めてです。ハロウィン恐るべきですね」


俺の場合、恐れてるのは完成される衣装の事だがな……。


憂鬱な気分になりつつ、ため息を吐いてヴァームを見る。

ヴァームもため息を吐いて頭を抱える、本当に悩んでるみたいだ。


「……シルク様」

「ん?」


そしたら、急に話し掛けて来た、何か名案でも思い付いた様な顔だ。


「ハロウィンでは、どんな仮装をしてたのですか?」

「俺は仮装してないぞ」

「あら、勿体ない……と、そうではなくて。皆様はどんな仮装をしていたかを聞いているのです」


げっ……。

聞かれた、薄々感じてはいたが……ついに聞かれてしまったか。

そんなん教える分けないだろ! そんな敵にヒントを与える様な行為誰がするか!


だから絶対に教えたくない……だが教えないと確実に何かをされてしまう、そんなの勿論嫌だ。


そんなどっちに転んでも痛手しかみない究極の2択に悩む俺は腕を組んで「んー、どうだったかなぁ」と思い出す振りをした……。


暫くこうして誤魔化しておこう。


暫くやってれば疑いの目を向けられるだろうが、構わず誤魔化してやる。


そして誰かが来てくれるのを願おう、そんな無駄な願いを抱いた俺はひたすら思い出す振りをする。


と、その時。

その願いが通じたのか、部屋の外でゴトッ! と物音がした。

まさか、本当に誰かが来てくれたのか? そう考え、俺は内心もの凄くほっとした。


助かった、ナイス物音! 心の中でガッツポーズをとる。


物音に気付いたヴァームは「あら、誰でしょうか?」と呟いた後、扉まで歩いていく、俺はそれを黙って見ている。


そしたら扉が、カチャリ……と開かれる。

いったい、誰が来てくれたんだ?

今回も読んで頂きありがとうございました。

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