29
あれから1週間経った、今日の天気は雨、シトシトと草原に雨が降り注ぐ……その様子を自室から覗く、内装は極普通と言って良いだろう。
ベット、テーブル、本棚、クローデット、そして窓が1つあるだけの部屋だ、必要最低限の家具しか無い部屋、あぁ…こんな部屋じゃ何もする事がない凄く暇だ。
「こんな日はアヤネが押し掛けてくるんだけどな……」
いつもなら、まるで借金取りの様に玄関扉をリズム良く、どんどこどんっーーと叩いて「いるのは分かってる……扉を開けて」と言う、雨の日は俺の自宅に雨宿りしにくる、俺の母は喜んでアヤネを家に入れる、その後アヤネは濡れた身体で俺の部屋に入って本を読み耽る、正直迷惑だ……本が濡れるだろう。
「話し相手がいないのは……寂しいな」
はぁ……まぁいないものは仕方無い、母さんの手伝いでもするか……そう思って部屋を出る、目の前に広がった景色は食事をするテーブル、椅子、後は綺麗にしてある台所だ、そこに俺の母さんが鼻唄を歌いながら、じゃがいもを剥いている。
「ふんふふんっふぅんふんふん」
一体何の鼻唄を歌っているんだろう? そう思いつつ母さんに近付いて声を掛けてみる。
「母さん、何かする事ないかな?」
「ふんふーん……んう? あぁしぃ君!」
すると、俺の方に振り返りきゃぴっとした表情で話してくる。
「どうしたの、しぃ君」
「えと……なっ何か手伝う事ないか?」
レティ ハーベスト、茶髪のショートヘア、俺より少し低い背丈、そして元気な声音でこの子供っぽい喋り方が何処か痛々しい人、この人が俺の母さんである。
優しそうな表情、常ににこにこしているのは糸目の性だろう、本人曰くちゃんと目は見えてるらしい、で今は白いふわふわした服の上にピンクのエプロンを着けている。
「えっ! 手伝ってくれるのっ! お母さん嬉しいよ!」
「っ! だっ抱きつい来るな!」
自分の子供なのにも関わらずこのスキンシップ、俺は変な人の下に生まれてきたなぁと度々思う事がある、今まさにそう思っている。
「じゃぁ、皮剥きを手伝ってくれる? ……あらやだ! 皮剥きだってっうふふふ」
今の言葉、何処に照れる要所があったのか? 母さんは、ぽっーーと頬を赤く染めている。
「分かった、皮剥きだな」
「こらっ、前にじゃがいものって付けなさい! なんか卑猥になるじゃない!」
「母さん……何言ってるか分からないぞ?」
俺の言葉をスルーして、台所に引っ張って行く、俺もスルーしておくか、突っ込んだらややこしい事になりそうだ。
「はい庖丁よ、気を付けて使うのよ?」
「分かってるよ」
母さんに庖丁を手渡される、さてと……やるか! 俺はジャガイモを手に取る。
とんとんとんーー
「ん?」
突然扉を叩く音が聞こえた、アヤネか? そう思って庖丁とジャガイモを置き玄関の方へ行く。
とんとんとんーー
そしたらまた聞こえた。
「あら? 誰か来たみたいねぇ」
「俺が開けるよ」
ドアノブに手を掛け扉をガチャッと開ける。
「すまない、少し雨宿りをさせて貰わないか? ……あっ! シルクじゃないか」
「なっナハト!?」
そこには雨で濡れたナハトがいた、なっ何でここに? いやそれよりも今はナハトを中にいれないといけない、風邪を引かれちゃ困るからな。
「とっ取り敢えず入れよ、風邪引くぞ?」
「うん、そうさせて貰うよ」
初めて出会って1週間ずっと会ってなかった、だから驚いてしまった……濡れた長い紫髪を揺らしながら家に入るナハト。
「あら? 可愛い娘ねぇ……どちら様?」
「ナハトと申します、少し雨宿りをさせて欲しい」
ぺこりと深く頭を下げるナハト、礼儀正しいな……。
「ナハトちゃんね? 私はレティよ、よろしくね、ってずぶ濡れねぇ……」
母さんはそう言って、ナハトの腕を掴む。
「シャワー浴びてっ、服は乾かしておくわ」
「あっありがとう」
強引だったので慌てるナハト……あのままだと風邪を引いてしまうからな、そのまま母さんとナハトは脱衣場へと行ってしまう、ん? 母さんまで風呂場に行く必要あるのか?
「ふふ、綺麗な服ね……あっ! お肌すべすべ! 羨ましいわぁ!」
「ちょっ! さっ触らないでくれ」
「ふふふぅ……褐色肌素敵だわぁ」
入って暫くした後、妙な声が聞こえてくる……何やってるんだ?
「あらぁ! おっぱいおっきぃ!」
「なぁっ! やっやめ」
物凄く恥ずかしい声が聞こえてくる……母さん……何女子学生みたいな事をやってるんだ! これは止めないといけない!
「おい! 母さん、何やって……あ」
直ぐに脱衣場の扉に駆け寄り勢い良く扉を開け放つ! そこには母さんに服を脱がされて胸を揉まれているナハトの姿があった、抵抗しているが引き剥がせないでいた、あぁ……これはあれだ。
「あらあらぁ? しぃ君ったら大胆っ」
「いやっちが……!」
「にゃっ! みっみみみっみるにゃぁぁ!」
不慮の事故が起きてしまった……ナハトの悲鳴が脱衣場中に響く、俺は直ぐ様後ろを向く、ぐっ……なんて事をしてるんだ、この馬鹿親!
「ねぇしぃ君! なっちゃんっておっぱい大きいのよ、うふふふぅ……柔らかぁい」
「こっこらっ……てっ手を……離せぇ」
もう見てなくても母さんが何をしてるのか分かってしまう、たっ多分……いや確実にナハトのむっ胸を揉み続けているんだろう。
「いい加減にしろよ! ナハトが困ってるだろうが!」
「あらぁ? もう呼び捨てしてるの? しぃ君ったらなっちゃんに気があるのかしらぁ」
「なっ何言ってるんだよ! ってそんなのは良いから離してやれ!」
こんな親、世界中探しても1人しかいないだろう……初対面の女の人の胸を躊躇なく揉む親なんてな。
「やぁよ、あぁ……揉み心地最高だわぁ」
「ひゃぁぁぁっ! たったしゅけてくれぇぇ、」
もうやる事はあれしかないな……俺は極力ナハトの姿を見ない様にして母さんに走り寄る。
「鉄拳制裁!」
「ぎゃんっ!」
母さんの頭を思いっきり叩いてやった、すると直ぐに頭を押さえてその場にしゃがみ込む、ナハトはその隙に風呂場に逃げ込んだ。
「酷いっ、しぃ君! 乙女の頭を打つなんて!」
「何が乙女だ! 人の胸を揉むんじゃない!」
「胸じゃないわ! おっぱいよっ!」
「どっちも同じ意味だろうが!」
涙ぐみながら立ち上がって、ぽかぽか叩いてくる、まるで駄々をこねる子供みたいだ、こんな母は現在38歳だったりする……なんと言うか何にも言えない。
「もう分かってないなぁ………まぁ良いわ、さぁ、なっちゃん今洗ってあげるわよぉ」
「いや、行かせないからな? と言うか今更だけどもうあだ名で呼んでるのかよ!」
「うぅぅっ、しぃ君のいけず!」
がしっと母さんの頭を掴む、「なんだこの色々と残念な母親は!」と思わないで欲しい……なぜかって? 悲しくなってくるからだ。
「ふーんだ、良いもんっ、シャワー浴び終わったら脱衣場に突撃しておっぱい揉ませて貰うもーん」
「母さんがやってるのは揉ませて貰うじゃなくて一方的に揉んでるんだよ!」
ずるずると母さんを脱衣場から引っ張り出す……もう良い歳なんだからしっかりして欲しい物だ。
「ナハト、シャワー使い方分かるよな?」
「わっ分かるよ、心配は無用だ」
ナハトにそれだけ言って脱衣場から出ていく俺と母さん。
「本当はしぃ君も見たい癖にぃ、むっつりさんめ!」
「母さん……早くナハトの服、乾かしてやれよ」
……もう色々と疲れる、だけどきちんと、しっかりした部分もあるんだよな……。
「あら! そうね……じゃっ、服を乾かしましょう! でも直ぐには乾かないからぁ……しぃ君の服を貸してあげなさい」
「……は? なっ何でだよ!」
「仕方無いでしょ? そうしないとなっちゃん、自分の服が乾くまで、すっぽんっぽんよ?」
そっそれはダメだ……だが俺の服を貸すんだよな? なんかそれ……物凄く恥ずかしい。
「あら? 顔が赤いわぁ、何を考えてるのかしらぁ」
「別に何も考えて無い!」
にやにやと微笑む母さんはつんつんっと肘で突っついて来る、ただ恥ずかしいなって思ってるだけだ……。
「なっちゃんが脱ぎ終わったら匂い堪能するの?」
「……服取ってくる」
「あれぇ? 無視するの?」
母さんのふざけた言葉を華麗にスルーして自室に行く、一々付き合っていられるか!
自室に行ってクローデットを開ける、さてどれを着せるべきか……服を選びながら、ふと考え付く、ナハトはなぜここへ来たんだ? また会おうとは言っていたが正直会えるとは思っていなかった。
「まぁ……嫌じゃ無いんだけどな」
少しだけ、どきどきしているだけだ、まぁその事は風呂から出て来たら色々と聞こうか、そう思いつつ服を選ぶ俺……ナハトはまた会えて嬉しいって思ってるんだろう、そんな気持ちに戸惑う俺であった。
なんか、堅苦しい書き方になってしまった気がする……。
読んでくれてありがとうございます!
これからも頑張ります!