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どうやら魔王は俺と結婚したいらしい  作者: わいず
ここまで変だと心配出来ない
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「きょっ、今日は良い天気ですますね」

「そっそうですね……」


なんだこれ、なんなんだこの煮え切らないメェと鬼騎の会話は!

あの2人から離れた席に座ってる俺とロア。


入ってから、俺とロアに気付かずにあんな感じで話をしている。

お前ら初対面か? って疑問が沸くくらいのぎこちない会話だ。


だが、その2人から発せられる邪魔してはいけない雰囲気に当てられ、俺もロアも何も喋れないでいた。

ずっと、顔を合わせて小さな声で「どうする?」「いや、黙って見ているしかないじゃろう」て感じに会話している。


「いやぁ……なっなんと言うか、その……秋でげすなぁ」

「あっ秋ですぅ」


会話! 会話の内容が薄い! お前ら、もっと濃い内容の話をしてただろ?

鬼騎っ、いつも以上にキョドってないか?

そしてメェ! お前までキョドってないか? いつもの明るいノリは何処にいった!


ほんと、どうしたんだよ、一体何があったんだ? なんて疑問が沸きつつ厨房を見てみる。


俺はそれを見て顔をしかめた。


「……うん、取り合えず全部煮込も、なんとかなる筈」


適当な事を呟いたのはアヤネ、彼女は今厨房に立っている。

本来ならその立ち位置は鬼騎なんだが、今日は何故かアヤネが立っている。


で、今アヤネが鍋に放り込んだのは魚とジャガイモとニンジンと生の牛肉、そして調味料を適当に放り込む。


…………これ、止めた方が良いよな? 止めないと命に関わるよな?

でも、今は止めちゃいけない雰囲気が出てる。


何故なら、鬼騎とメェが発する気まずい雰囲気で口を挟めない空気になってるからだ。


……いや、そんな空気を察する前に、真っ先に考える事があるだろう。


「なぁ……なんでアヤネが厨房に立ってるんだ?」

「しっ知らぬ、わらわに聞くでないわっ」


顔を地下付け合ってボソボソ声で会話する。

アヤネは、そんな俺達に構わず料理? をしている。


さっきの食材を鍋に入れた後、ゴォォッと火で煮詰めている。

その間に、まな板にリンゴを乗せて包丁を握る。


「よしっ、ウサギさんを作るっ」


かっ!

目を見開き、空いてる手でリンゴを持ち、何を思ったのか上に放り投げる。


ぽいっ……。

リンゴはゆっくりと真っ直ぐ上に投げられた。

それをじっくり見た後、包丁を構えて……振るう!


スパァンッ……。

リンゴを切ったっ、だがアヤネの動きは止まらない。


スパッ、スパァンッ!シュババババァンッ!

まるで剣を扱うかの様な包丁捌きでリンゴを切っていき、アヤネは動きを止めた。


すると、リンゴは下に落ちてくる。

それをアヤネが丁寧にキャッチ、それを皿に乗せる。


「出来た、ウサギの形に切れた」


にぱぁっと笑うアヤネ、ポニーテールをふりふり揺らし、とても嬉しそうだ。

だがな、アヤネよ……1つ突っ込ませてくれ。


お前はリンゴをウサギ切りにしたと言ったな? だけどな……その切られたリンゴ、俺の知ってるウサギ型のリンゴじゃない。


お前がやったのは、1口サイズに切って、皮をウサギの形に残す切り方じゃなくて、まんまウサギの形にリンゴを切ったんだ。


いわばリンゴでウサギの彫刻を作ったんだ。

だから俺は今、声を上げて「違う、そうじゃない」と言いたいよ。


て言うか……良くそんな風に切れたな。

ある意味全料理人が驚くレベルの事を平然とやってのけたな……。


「よし、次は……あ、シルクだ。ついでにロアもいる」


ぴくっ……。

身体を少し震わせて反応したアヤネは俺を見てくる。

なんだ、気付いてなかったのか……それほど集中して調理? をしてたんだな。


「あっアヤネ、何故貴様が料理をしている? あと、つっついでとはなんじゃ!」


ロアが小声でアヤネに言い寄る。

すると、アヤネは「ん?」と言いたげな顔をして首を横に傾ける。


「ひみつ」


そして、きっぱりとそう言った。


「ひっひみつ?」

「ん、教えてあげない……じゃ、私は料理するから」

「え、あっ、まだ話しは終わって……くっ、無視して調理を続けおったわ……」


アヤネは鍋の様子を見に行き、くるくるとお玉でかき混ぜる。

…………おっ可笑しい、今日朝起きてから何時もと違った事が起こりすぎている。


朝起きたら、隣にアヤネがいなくて。

食堂に来たら、鬼騎とメェが変な雰囲気になってて、アヤネが厨房に立って料理をしている。


……なんだ? 今日は槍でも降るのか?

そう思うくらい可笑しな事になっている。


取り合えず俺は……口を閉ざしてじっと座っている事にした。


「ぐぬぬ……何か知らぬが、嫌な予感しかせん」


ぽつりと呟いたロアの言葉に賛同する。

嫌な予感しかしない、これは何かが起きる予兆じゃないのか? そう思ったら心がざわざわしてきた。


とっ取り合えず……今は様子を見よう。

いや、ダメだ! アヤネの料理を止めよう。

口に出せない雰囲気なら、直接動いて止めれば良いんだ。

よしっ、動くぞ!


そう思った俺は席を立った。

その時だ、ぎろり、とアヤネに睨まれた後、低い声で「動いちゃダメ」と凄まれ、俺は少し怖くなりゆっくりと座った。


その後、カウンターに肘をついてため息をはく。

……だめだ、動けない状況に陥ってしまった。

喋れない、動けない、何にも出来ないじゃないか。

これはあれだ、もう他人に任せるしかない……。


横にいるロアもお手上げなのか「くっ、なんじゃこの空気は……わはわにはどうにも出来ぬ」と言っている。


だからここは、他人任せにするしか解決出来る方法はない。


だから、ヴァームっ、ラキュっ、ラムっ……。

いや、この際誰でも良いから早く来い! 俺はこの微妙な雰囲気にどうにかなってしまいそうだ。

アヤネの料理のクオリティはある意味凄い。


今回も読んで頂き有難うございました。

次回の話しは27日0時に投稿されます。

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