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どうやら魔王は俺と結婚したいらしい  作者: わいず
3グループ三様の日常風景
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そこは、昼間にも関わらず薄暗くて狭い場所だった。

人通り、いや……魔物の通りは少ない、と言うか全く無い。

上を見上げれば、大きな雲がそこに影を作っていた。


そんな風景を見せるその場所は、目的地への近道の為にしか通らない通路、今俺とロアはそんな所にいた。


そこは何処かと言うと……裏通りだ。


魔王城、城下町の裏通りに来るのは2度目、表通りの明るい感じとは違って、路地裏と言うのは、静かで薄暗くて……そして、何故かは分からないが、居心地が良い。

こんな事を思うのは俺だけかもしれないな。


と、そんな事を考えるのは後にして……本題に入ろうか。


「ロア、こんな所に連れてきて、なんの様だ?」


未だ俺の手を掴んで、後ろを向いてるロア。

突然こんな所に連れて来たのは良く分からないが、何か凄い事を言われるんだろうな? と言うのはうっすらとだが察している。

だが、今回のロアの様子は可笑しい、だから何を言われるのか分からないとも考えている。


「えと……そのな? その、なんか改めて言うのは言い辛いとは思うが……気になったのでな」


俺の手を離し、もじもじする……この時も後ろを向いたままだ、なんだ? 前を向かないのか?

さらさらの紫色の髪が風で揺れる、そんな背中を見ていて解るのは……恐らくロアは、言うのに勇気がいる事を言おうとしている。


「えと……」


訳が分からないので、どういう事だ? そう聞こうとした。

だが、ロアは俺の言葉を遮ってこう言ってきたんだ。


「喫茶店で……わらわに何を聞こうとしたのじゃ?」


っ!

それを聞いた瞬間、俺は一瞬頭が真っ白になった。

……喫茶店、そうだ、俺は喫茶店でロアに大切な事を聞こうとしてたんだ。


だが……あの2人が来て、それ所じゃなくなった。

その場の勢いと流れで、頭の中から、スルッと抜け落ちていた。


「えと……やはり言い辛いかの?」

「……」


俺が思い出して何も喋らないでいると、やっとロアがこっちを見た。

熱のこもった視線で俺を見つめてる、その視線を向けたまま、ゆっくりと俺に近付いて、また手を握ってくる。


両手で、ぎゅっと……された俺の右手は、温もりと柔らかさに包まれた。


「いっ言い辛ければ……言わなくても良い、ただ……正直に言ってしまえば、今聞いておきたい」


俯くロア、その言葉は本音と俺への配慮が込められている。


「ロア」

「っ、なっなんじゃ?」


俺の声を聞いて、肩をぴくんっと震わせる。

すぅ……と呼吸した後、続けてこう言った。


「言うよ、多分……いや、絶対に今言わないといけない事だから、言わせてくれ」


静かに、だが熱意の様な物をもって放ったこの言葉、それに驚いたのか、ぎゅっと手を握る力を強くしてきた。


「うっうむ……こっ心して聞こう」


すぅ……。

大きく息を吸い込んで飲み込むロア、目を大きく見開いて真剣に俺の言葉を聞こうとしている。


ロアの為にも聞かないと、その事は自分自身の為でもある、聞ける時に聞いておかないと後悔するだろう。

それが例え、改めて聞き難い事であっても……。


「ロア……」

「なっなんじゃ」


……くっ、言わなきゃいけないのに、口が震えて来た。

情けない、ほんっとに情けないな! 覚悟を決めろ俺! あれだけ言っておいて言わなかったら最低な男だぞ!


自分で自分を鼓舞しながら、次の言葉を言おうとする。

あっ……呼吸が荒くなる、体温が熱くなる、視界が……ボヤける。

くそっ……極度の緊張で身体がどうにかなってるのか? ふざけるなっ、こんな時にそんな体調になってる場合じゃないだろう!

くそっ……一旦落ち着く、どうにかして落ち着くぞ。


そんな自分に苛立ち、目を閉じて、そこから数秒経った頃に、俺は大きく深呼吸して……。


「あぁぁぁぁぁぁっ!!」

「うひゃぁっ、なっ何事じゃぁっ!?」


ネガティブな考えを吐き出すかの様に、思いっきり大声を上げた。

そしたら俺の声に驚いたロアも大声を上げた。


おっ驚かせてしまった、悪いことをしたな……すまん。

でも、さっきより大分楽な気持ちになったよ。


「すまん……今から言うから、聞いて欲しい」

「え? あっ……うっうむ」


何が起こったか訳がわからなくて、目をパチパチさせるロア、そんなロアに向けて……俺はやっと、言う決意が出来た。


「ロア、お前は……」


その瞬間ロアが、俺の初恋の人と重なって見えてしまう。

その事に心が揺れながらも、次の言葉を言った。


「ナハトなのか?」


……俺がそう言った瞬間、周りの音が消えた気がした。

風の音や、微かに聞こえていた魔物達の声が聞こえなくなった。


そして、大きな恥ずかしさと、言えた事への達成感が俺に襲いかかってきた。

うっうぉ……なんだこれ、凄く何とも言えない変な感じがする。


そんな心境の中、ロアの方を見ると……目を丸くして、口をぽかーんと開けて呆けていた。


さぁ……ロアはなんと答える? それによっては俺の今後の行動が決まるだろう、だから俺は、ロアの言葉をしっかりと聞く事にした。

はい、聞きましたね。

聞いちゃいました、ここを書くときには凄く悩みました。

とても大切な場面ですからね……。

で、今回、少し展開が早足かな? と思ったりさています。

……大丈夫だよね?


今回も読んでいただきありがとうございました!

次の投稿日は明日ですよー。

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