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肝だめし2組目は俺とヴァーム、早速静かな林の中を歩いてるんだが……少し問題が起きちまっている。
「おい……そんなにくっついてんじゃねぇよ、歩き難いじゃねぇか」
シルクとロアが帰って来た、なんか知らねぇが2人共あらから視線を合わせてねぇ気がした……まさか喧嘩でもしやがったのか? と、そんな事よりもだ……俺にとっては今の状況の方が大切だ。
「ヴァーム……頼むから少し離れやがれ」
「お断りします、皆さまの目の前であんな事をしたんです……これは仕返しです、素直に受けてください」
恥じらってるのか、ちらちら俺を見やがるヴァーム、その時、いつも着ているメイド服が夜風に揺れる……。
「んだよ……あぁでもしねぇとおめぇは元気が出ねぇじゃねぇか」
「うっ……そっそれはそうですが……ほっ他にも色々あったでしょう! 」
他ねぇ、無理だな……俺はあれしか思い付かなかった。
じとぉ……とこいつを睨んでやると「なっなんですか? その目は!」と怒って横腹を叩いて来た。
「てぇな……なんだ? もしかしてあれか? 暗くて怖いのか?」
「違います! ただ……えと、その……違うんです! 怖くなんてありません!」
やけに顔が紅い……まさか本当に暗いのが怖いのか? いや違ぇな……これはいわゆるあれだ。
「……甘えてんのか?」
「っ! ちが……いませんけど……その……いっ言わせないで下さい……」
普段は絶対に見せないヴァームの恥じらう顔、可愛いな……俺はこの表情でヴァームに惚れたんだよな、ってこんな時に何を思ってるんだ……と言うかヴァームは本当に素直じゃねぇな、まぁそこが可愛いんだが……。
「なんですか? その顔は……気に食いませんね」
「何でもねぇよ」
もう少し弄りたい所だがそろそろ止めるか……じゃねぇと本気で怒るからな。
ゆっくり歩きながら俺は周りを見渡す……海の家を開いてはいるがここら辺を歩くのは初めてだな。
こんなに静かで綺麗な場所だったんだな……少し勿体無い事をしたな、こんな綺麗な場所なら早く来たかったぜ。
「どうしました? 急に黙ってしまって……」
きゅっ……
腕に寄り掛かってくるヴァーム、俺を見上げて小首を傾げる。
「別に……何でもねぇ」
「そうですか?」
不思議そうな顔をするヴァーム、今の一連の動きで分かったが……少しやる気が出てきたな。
ビーチバレーの一件で完璧メイドからダメイドになっちまって俺も手が負えなかった。
それもこれもシルクとラキュが勝ったからだ……それが原因でヴァームのやる気をごっそり削った……空気の読めねぇ男の娘コンビだ。
……と、ここで愚痴っても仕方ねぇか……と言うか、今この場でヴァームが何時もの状態に戻ったから良いじゃねぇか、そう思った俺はヴァームの方を向いて微笑み掛る。
「元気が出たようだな」
「なっ……いきなりなんですか? また恥ずかしい事を言うんですか?」
「俺が恥ずかしい事しか言えねぇ奴みたいに言うな……」
じぃ……と睨むヴァームに少し強く言い返す、たくっ……心配したのにこの返しか。
「あら、私はそう思ってるのですが?」
「……怒るぞ?」
「ふふふ……すいません、少しからかい過ぎちゃいました」
……どうやらいつもの調子が出て来た見てぇだな。
安心したが、いらっとしちまった……だが愛する竜の笑顔に免じて水に流すとすっか。
「あらあら……なに不貞腐れてるんですか? 行きますよ?」
「誰のせいだと思ってんだよ」
にこっーー
月明かりに照らされたヴァームの笑顔、憎まれ口を叩いてなければ素直に可愛いと思ったんだがな……。
「つーか……早すぎないか? もうちっとゆっくり歩かねぇのか?」
「あら? リヴァイ……それはあれですか? 少しでも長くデートがしたくて言っていてっ」
少しキレてしまった、だからヴァームの頭を軽く小突いた。
「ふふふ、照れちゃって……可愛いですね」と叩かれた所を擦りながら笑う。
「うっせぇ事言ってと転んで怪我すっぞ?」
「その時はリヴァイが助けてくれるんでしょう?」
「……助けられる時はな」
そう言った後、俺は恥ずかしさからかヴァームから視線を反らす、その後はゆっくりヴァームの方に寄り添った。
そうするとヴァームは少し驚きはしたがそれを受け入れてくれた。
そのまま俺とヴァームは肝だめしを楽しんだ、ほんの少しの時間だが気持ちの良いデートになって良かった……これは、この肝だめしを企画したロアに感謝しなくちゃいけねぇな。
で、俺とヴァームはスタート地点に戻った。
仲良く腕を組んで戻ってきてしまったのでヘッグにからかわれたのは言うまでもない。
このお二人はとにかく、良い夫婦感を出そうと思ってかいてみました。
今回も読んで頂きありがとうございました、次の投稿日は5月10日の0時になります。