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どうやら魔王は俺と結婚したいらしい  作者: わいず
真夏の戦闘 戦えチーム男の娘!
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「くふふふぅ……シルクの息使い可愛すぎるのじゃ!」

「あのままお持ち帰りしたい」


ネットを越えた先で興奮するロアとアヤネ、俺はそんな2人に対して……。


「……っ……っ……っ……」


何も言えずに膝を抱えて苦しんでいた。

本当なら「ふざけた事を抜かすな阿呆」と言いたい所だが、もう疲れすぎて声が出ない、汗もかきまくってる……。


「シルク君がんばれ! あと5点! あと5点だよ!」


ラキュ……今初めてお前を本気で殴り飛ばしてやりたいと思った、他人事だと思ってにこにこ笑いやがってぇぇ……。


「ねぇ、ヴァーム……シルク君に水上げていいかな? このままだと脱水症状起こしちゃう」


あっ……それは助かる、丁度水が欲しいと思ってた所だ、ナイスラキュ! 殴り飛ばすのは止めてやろう。


「そう……ですね、倒れてしまっては水着コンテストに出れませんからね」


ヴァーム、お前は何を言っている? 倒れなくても出る気はないからな。

とか思ってるとラキュが小走りで海の家に行き、また直ぐに戻ってきた、手には水が入った透明のビンを持っている。


「はい、お水だよ」

「っ……り…………と」


ありがとう、そう言ったつもりだ。

俺はのろのろと手を動かしラキュから水を受けとる、そしてそれを口に含む……あぁ冷たい、そして気持ちいい。

顔を上げて、ぐびぐひと飲んでいるとラキュが俺の手首を掴んでくる。


「あっ、ゆっくり飲んで……いっきに飲むと身体に悪いよ」

「……っ……っ……っ」


今は多目に見てくれ、そう言った。

聞こえてないと思うので目で伝えた、するとラキュが苦笑いしつつ頷き俺の背中をぽんぽん叩いてくる。

「わかったよ」と言う事だろうか? ラキュはそのまま黙って見てくれる。


「あぁ……負けて欲しいです、シルクさんとラキュ様がいない水着コンテストなんてクリームが入っていないパンみたいな物です」


そしたら不快な言葉が聞こえてきた……絶対にヴァームの思い通りにはさせない、あとクリームの入っていないパンはただのパンだ。

そんな事を思いつつ水を飲み干す……ふぅ、ほんの少しだけ楽になった。


「ふぅ……ふぅ……」

「あっ、やっと声でたね? 大丈夫?」

「そう……思うなら……少しは……ブロック……して……くれ」


なのでラキュに自分の想いを伝えた、そしたらラキュは苦笑して頬をかく。


「いやぁ……僕がブロックしたら2人共容赦なく攻撃してくるよ? ちゃんとカバー出来る?」


確かにその通りだ、今ラキュがブロックに出たら「前に出るな愚弟! シルクを前に出さんか!」と言って容赦無い一撃 (物理)を喰らわせられるだろう、最悪魔法で消し飛ばされる可能性がある……恐ろしい。

で、話しは俺がちゃんとカバー出来るかと言う話だが……。


「……出来ない」


今の体力じゃ出来るわけ無い、悔しい事にな……。


「でしょ? じゃ、頑張ってね! 僕はサポートに徹するよ!」

「ラキュ、やっぱり……後で……ぶっとばす」


静かに拳をつくる俺を見て苦笑する。

……そんな事がありつつ試合は再開される。



「ちょっとロア様! アヤネさん! 確りしてください! シルクさんはもう虫の息なんですよ!」


ふざけた事を言うドラゴンだ……あぁ、気分が悪い……動きすぎて気持ちが悪い。


「しっしかしヴァーム! シルクのあの顔は反則じゃろう……その、かっ可愛すぎじゃ」

「右に同意」


ははっ、可愛いか……もう勝手に言ってろ、疲れすぎて突っ込む気力も無い。

だからラキュ、変わりに突っ込んでくれ……と思い、身体をラキュの方に向ける、そしたら。


「……大丈夫? 死にかけてるみたいだけど」


と言われた……そう言われるのは仕方ない、何故なら俺は……片膝を砂浜につけて声にならない疲れの吐息を出している。

もう汗を掻きまくって上の水着がずれ落ちた……それによってギャラリー達が鼻血を吹き出した、そんな惨状なんてどうでも良い。

俺は……俺は今すぐ休みたい!


「……ゅ……う……れた」

「え? なんて言ったの?」


また声を出せなくなった……いった言葉は「ラキュ、もう疲れた」だ。

俺に近付いて耳を向けてくるので同じ事を言う、すると……。


「なに言ってるのさ! あと3点だよ? 今の所無失点だよ? シルク君のブロックは完璧だ! 弱気になっちゃ駄目だ!」


励ましてくれるのは嬉しい……だがな、俺は気づいたんだ。

お前……1人だけ楽してないか?


「ほら、サーブは僕がやるから頑張ろ!」


ははっ……こいつ、終わったら殴る! もしくはヴァームに引き渡して「ラキュがコスプレしたがってたぞ」と言ってやる。


心の奥底で沸き上がる怒りでそんな事を思う俺はラキュは睨む、そしてのろのろと所定の位置に着く、その時だ……。


「ロア様! アヤネさん! 良く聞いてください」


ヴァームが声を上げた、次はどんなふざけた事を言うつもりだ? 声にならない息使いをして黙っていると……。


「このままではシルクさんとラキュ様の水着姿がみれなくなるんですよ!」


うわぁお……見事にふざけた事を言ったな、そしてロアとアヤネ「はっ!」じゃない、何を驚いてるんだ、お前達はもう……。


「いや、今僕達の水着姿みてるから良いよね?」


あっ、言たかった事言ってくれた。

そしたらヴァームが鼻で「ふふっ」と笑い続けて言い放つ。


「今は今と言う言葉があるのはご存じですか? つまりそう言う事です」


いや、どういう事だ? で、ロアとアヤネ……なんでそんなにやる気出してるんだよ、さっきまで「きゃぁきゃぁ」言ってただろう……。


「ラキュ様、そろそろ試合を始めてください……ふふふ、貴方達が水着コンテストに出るのが楽しみですよ」


ぞくりっーー

疲れてる身体に悪寒が走った……ヴァームはどうしても俺とラキュに負けて貰いたいんだな。


「くふふふ、散々ふざけた事言ってるけど……それは絶対に無いよ」

「ふふふ、絶対にですか……何時にもまして自信があるんですね」


……火花だ、火花が散っている。

今、ラキュが負けない意思を言うのはなんか腹立つけど……言ってくれて気持ちが楽になった。


「残り3点とって勝つ!」


なんでだろう? 格好良く勝ち宣言してくれたんだが……ふに落ちない。


「ふふふ、頑張って下さい」


出来るわけがない……語らずともそう言ってる感じがする。

……空気がピリピリしてきた、そう感じた刹那「行くよシルク君」と言いサーブする。


くっ……もう少し休ませて欲しかった。

このままだと俺は倒れてしまう、いや待て……ここで倒れたらどうなる?

俺は考えた、その思考時間僅か1秒……考えた次の結果は次の通りだ。


倒れる→強制的に俺達の敗退→水着コンテスト出場


「つ……てる……ば……じゃ……い」


疲れてる場合ない、そう口ずさんだ……ゆっくりと視線を前に向ける。

もう身体が震えて足も動かしにくい……だがそれでも動かないといけない。


「来たぞ、アヤネ!」

「ん」


アヤネがネット際にボールを上げた、足は重いが跳ばないといけない……。


「さぁ、シルクよ! わらわの目の前に飛び込んで」

「むっ……抜け駆け良くない」

「え? あいだぁぁ!」


と、身構えてたら……ロアが跳んだ、そしたらアヤネも跳んだ……そしてロアを吹き飛ばしアヤネが前に出た。


「さぁシルク、飛び込んで来て」


いや……アヤネよ、なにやってんだ? とか思ってたらズダダァっーーと頭から滑れる様に落ちるロア、頭が砂に埋もれた。

尻をつき出す形で頭だけ埋もれる……なんか卑猥だからロアの方に目を向けないでおこう。

と言うか……空中タックルで魔物を吹き飛ばすって……アヤネ、お前人間か?


「っ! 跳んで……こない?」


俺がブロックにこなかった事に驚くアヤネは驚いて目を見開く、俺はあの光景を見て驚いて跳べなかった。

だからボールはアヤネに頭に、ぽむんっと当たって砂浜に落ちバウンドして突き出ているロアのお知りに当たる。


ボコンッーー

あっ……頭を出した、そして思いっきり頭をふった。


「あっアヤネ! 何をする!」


喧嘩だ、喧嘩が始まった……そりゃあんな目にあったんだ、喧嘩が起きるのは当然だ。


「そんなのどうでもいい」

「どうでもいいじゃと!?」


おぉ、どうでもいいの一言で片付けた……そしたらロアは、がっ! とアヤネの肩を強く持つ、それを気にせずアヤネは続けて言った。


「シルクが酷いフェイントした」


あれフェイントじゃなくて驚いて跳べなかっただけなんだけど……今は疲れて喋るのもしんどいから突っ込まなくていいや。


「何を訳の分からん事を……」


確かに訳の分からん事を言った。

何か言いたげなロアであったが、ぶつぶつと文句を呟きアヤネの肩から手を離す。


「シルク……次は騙されない」


睨まれた……なんか物凄く睨まれた、もう訳が分からない。

と、思ってる内に相手のサーブ……次サーブするのはロアだ、俺は動かない、サーブを受けるのはラキュの仕事、これまでもそうしてきた。


「喰らえ!」


そんな掛け声と共に放たれた強烈な一打、それをラキュが「はっ……」と声上げて俺の所にボールを上げた。

俺はこのままトスすれば良い……だが手が重い、しかし攻撃しないとダメなので何とか手を上げる。

ぼむんっーー

何とかボールをトス出来た、しかし……変な所に上がってしまった。


「大丈夫、僕に任せて!」


しかしラキュが素早く対応、きちんとアタックしてくれる。

それを受けたのはアヤネ、そのボールをロアがネット際に渡し、次はアヤネが攻撃する番……俺は残る体力を足に集中させ跳ぼうとした。


「……さぁシルク、私の前に来て!」


なんで手を大きく広げてるんだろう、アタックする気はあるのか? と言うか趣旨が変わってないか? とか思いつつ跳んだ。


「させるか馬鹿者!」

「えっ? わわっ!」


その時だ……。

びゅんっーー

音が出る程強烈な風が吹きアヤネが空中で体勢を崩しネットに当たる。


「ふべっ」


アヤネが砂浜に落ちた、直ぐに起き上がってロアの方に向かう。


「おい魔王……邪魔しないで」

「そっちがわらわの邪魔をしたんじゃろうが! お互い様じゃ!」


また喧嘩……お前らビーチバレーしろよ。

とか思ったが点はこっちに入った、深くは思わないでおこう。

ん? そう言えばこれで俺とラキュの得点は9点だよな? 残り1点とれば勝ちだな……とか思ってたら。


「ロア様! アヤネさん、 最悪反則でもなんでも使って良いですから勝って下さい!」


と、ヴァームの声が上がる、必死だ、必死すぎる……そんなに俺とラキュを水着コンテストに出したいのか?


「黙れヴァーム! こっちはシルクのブロックが掛かっておるんじゃ!」


……うん、もう何も思わない、何も思わないからな?


「魔王の言う通り、今大切なのは……シルクにブロックされる事!」


もうビーチバレー関係無くなってるじゃないか! ふざけんな!


「…………」


あっ、ヴァームが黙った……そしてうつ向いて落ち込んだ。


「えと、もう良いかな?」


ラキュの声が聞こえた、次はラキュがサーブをする番だ。


「あっ……よいぞ弟よ」

「きて、らっ君」


やっと静かになった。

そしてラキュがサーブをした!


ボールは相手コートの角に飛んでいく、それをアヤネが取りに行く。


「この時点でアヤネに取らせたらダメじゃ!」


その時だ、ロアが叫びながらアヤネに向かって飛び込んで行く。

体制が跳び膝蹴りの構えなんだが……気にしない方が良いか?


「ふっ……そう来るのは分かってた」


するとアヤネはロアの方を見る、向かってくる跳び膝蹴りを片手でいなす。


「くふふふ、読み通りじゃ馬鹿め!」

「っ!」


ロアが消えた、そしてアヤネの真後ろに現れた。

魔法だ、魔法を使ったんだ。

反応が遅れたがアヤネは直ぐに後ろを振り向く……しかしロアはいち早くアヤネに足払いを仕掛ける。


「っわ……」

「くははははっ! いくら貴様でもその体制から直ぐには起き上がる事は出来まい! この勝負わらわの……ありゃ?」


ロアは高笑いする……が、やっと気付いた。

ばか騒ぎをやってる間にボールは砂浜に落ちていると言う事を……。


「えっえと……今の無しと言うのはダメかえ?」


ぎこちなく首を俺の方に向ける……なので言ってやった。


「だ……め……」

「いっいけず! ヴァーム、何とか言ってやるのじゃ!」


今度はヴァームの方を向いた、すると……。


「もう……どぉうでも良いですよ、どうせ今のを無しにしてもロア様とアヤネは勝ってくれませんから……あぁ、やる気を無くしました私はふて寝します」

「ちょっ、ヴァーム!」


今までに見た事無いヴァームのやる気の無い顔、それだけを言い放ってヴァームは海へと入っていった。

きっと海の宿に行くんだろう……。


「くっ……こっこんな筈では」


愕然とした表情で砂浜に膝をつくロア、それを見て思う、勝った……勝ったんだな、と。


「シルク君! 勝ったよ! 僕達勝ったんだよ!」

「!」


後ろからラキュが抱き付いて来た。

体力が残り少ない俺は前のめりに倒れそうになるがラキュに支えられ倒れるのは回避された。


「嬉しいよ、初めて抵抗できたね!」

「そ……う……だ…………な」


掠れる声で言った、ラキュの言う通り俺達は初めて抵抗できたんだ。

そう思ったら身体中に嬉しい気持ちで道溢れた。


「さっ、シルク君……休もうか」

「……あぁ」


俺はラキュの肩を借りて海の家へと向かう。

ゆっくりとした足取りで向かう途中、ギャラリーからは「なんか変な試合だったな」とか「ある意味白熱した試合だった」と言う言葉が聞こえた、全くその通りだと思う。


「くふふふ……」


あっ、ラキュが笑った。

嬉しそうだ……そりゃそうだ、俺とラキュはそれだけの事をやってのけたんだ。


「結末はあれだけどさ……勝ちは勝ち……それもこれも」


そう、それもこれもラキュの魔法と俺の必死のブロックのお陰だ。


「全部僕の作戦のお陰だよね?」


…………は? え? は?

満面の笑みで俺を見つめるラキュ、おいおいおい待ってくれ、お前……それ、本気で……あっ、駄目だ、目の前が……真っ暗に……。


「え? しっシルク君!?」


先程の激闘で俺は糸が切れたかのように意識を失った、そして今回の事が次々と頭の中で思い出されていく。


ヘッグの感動的な戦い、ヴァーム&リヴァイ対メェ&鬼騎の嫉妬に満ちた戦い、そして大苦戦するかと思われたが魔法のお陰で勝てたヴァーム&リヴァイとの戦い、そして今回の戦い……。


印象的だったのが最後だ……最後の得点が馬鹿みたいなミスで入る、これに限るだろう。

まぁ……そのお陰で俺達は勝った、嬉しい筈なのに……なんでだろう? このふに落ちない勝ち方は? もっと死力を尽くしたって感じを想像していたんだが……違った。


まぁ良い……俺とラキュは勝った。

そして今は疲れて眠った……難しい事は考えないで今は寝よう。

そして目が覚めて清々しい気分になった所で、俺がやると決めていた事をしよう。

最後の最後で阿呆みたいな事を言ったからな、きちんとやらないといけない、ラキュをぶっ飛ばすって事をな……。

シルクとラキュは勝ちました。

この勝ちは皆の記憶に残る事でしょう……さて、次回はまとめです。

これでビーチバレー回は終わりだよ。

お次は日常回だよ、楽しみだね!


今回も読んで頂きありがとうございました! 次回もお楽しみに。

そしてブックマークや評価してくれてありがとう! とても嬉しいです。

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