146
チームが決まった後、対戦相手も決まった。
なので早速試合開始になった。
「くふふふふ、ヘッグよ! 貴様1人じゃが、わらわは容赦はせぬ!」
「イケメンさん覚悟」
コートを通じて睨み合う、ボールを器用に指先でクルクルと回すヘッグは白い歯を見せ、髪の毛を靡かせニヒルに笑う。
「はっはっはっ! 例え不利な状況でも俺は勝つさ……何故なら、イケメンだからな!」
そう言い放ったヘッグはボールを空高く上げて手元に落ちてきた所を片手でキャッチしサーブを打つ位置に行く。
第1試合はロア&アヤネVSヘッグか……2対1ってかなり不公平じゃないか? と思いつつ試合の様子を見守る。
「ヘッグ勝ってくれないかな……」
そしたら強敵が1チーム減る、だが無理だ……ビーチバレーで2対1は圧倒的不利、くっ……ラムがいれば勝機はあった物を!
「はぁ……」
「シルク君、さっきからため息ばかりついてるね……まぁ何でついてるか分かるけど」
そう言ってラキュもため息をつく、俺とラキュは女性陣に好き勝手やられる運命にあるのだ……ため息をつかない方が可笑しい。
「では、試合開始です!」
と、傷心しているとヴァームが声を上げた、そしたらヘッグが後ろへ大きく下がった後走りながらボールを空高く斜めに上げた、ボールはゆっくりと落ちて行き、良いタイミングで腕を振る!
「せやぁっ!」
バシィンッーー
綺麗な音が鳴ってビーチボールが勢い良く向こうのコートへ飛んで行く、すっ凄い……風に流され易いビニールのボールなのに真っ直ぐ飛んでいった!
「くふっ……中々やるな、じゃが!」
そのボールをロアが上手く受ける、ボールはコート手前へと飛んで行く。
「甘いのじゃ! いったぞアヤネ!」
「ん」
アヤネはコート前に立ちジャンプ! ボールを見据えて勢い良く腕を振りヘッグのいない所へとボールを叩き飛ばす!
斜め下に勢い良く飛んでいったボールは白い砂浜に着く……筈だったが。
「イケメンっスライディング!」
「んなっ!」
「すごっ」
言葉通りヘッグがスライディングしてボールを浮き上がらせる。
なっなんて身体能力だ! と思っているとヘッグが浮き上がったボールを見た後、ボールが落ちる所へ移動しトスを上げる。
ここで特別ルールが発動した、通常バレーボールでは同じ人が連続でボールに触れてはいけない、だがヘッグは1人なのでそれが可能になっている。
「決めさせて貰うよ! 美技っイケメンシュート!」
コートから少しだけ遠く離れた位置からアタック! それがロアとアヤネの間へ飛んで行く。
「ここはわらわが!」
「いや私!」
そのボールを取ろうとして2人が同時に動く、そんな事をしたら……。
「あだっ」
「いっ」
ドンッーー
とぶつかってしまう、ボールはザシュッーーと砂浜に落ちてしまった、これで0対1だ。
「はっはっはっ! イケメンは決める時には決めるのさ! クールかつビューティフルにね!」
格好良いポーズを取るヘッグに向けてこのビーチバレーの試合知ってを見に来たギャラリーに拍手と黄色い声援が上がる。
すっ凄い……ヘッグも強敵だったと思う中試合は進んでいく。
「でぇぇやぁぁっ!」
「はっ!」
「はぁっ!」
「ほいっ!」
現在、0対7でヘッグが圧勝している。
「くっ、この! さっさと負けろっ!」
「イケメンさんしつこい!」
苦悩の表情を見せるロアとアヤネ、中々得点が入らなくてイライラしていた。
それを見て俺は「凄い」その一言しか出なかった。
先程からロアとアヤネの攻撃を華麗に対処して向こうのコートへと返している。
ヘッグは左右に動かされているが涼しい顔、激しく動く度に、キラキラーーと汗が輝いてゆっくりと飛び散る。
「はっはっはっ! イケメン足るものっ、動きは華麗でなければいけない! それがイケメン鉄の掟さ!」
2対1でも関係ない……ヘッグは強すぎる! いっイケる……これはイケるぞ! このままロアとアヤネに勝ってくれ……頼んだぞイケメン!
「……これは取って置きたかった、でも仕方ない」
サーブをするのはアヤネ、1人で何かを呟いている、何かを仕掛ける気だ……。
アヤネは軽く息を吐きボールを上にあげ……ずにそのまま下に落とした。
「なっ……下からのサーブだと!」
つい声を上げてしまった、通常ならサーブは上から、下からのサーブは威力が低い上、相手にチャンスを与えてしまう結果になる。
そんな事をしたアヤネにロアは驚愕の表情、そんな事に構わずアヤネは下からサーブを上げる。
バシュッーー
下からにも関わらず勢い良くボールは空に山なりに上がった……まるで煌めく太陽に当たる勢いで。
その時だった、ヘッグの表情が曇った……そして仕切りにボールを探す。
「へぇ……やるじゃないかアヤネ」
くふふふ……と笑うラキュ、その台詞が終わった時、ボールは……ヘッグの側に落ちた。
「決まった……」
「あっアヤネ! 貴様今何をした!」
くすりと笑ってVサインをするアヤネにロアが駆け寄る。
何が起こった分からないロア、俺も何が起きたか分からない……。
「分からない様だねシルク君」
「らっラキュ、お前はアヤネがした事が分かるのか?」
「うん、分かるよ……あれは」
ラキュが話すと同時にアヤネが口を開いた。
「太陽光消滅……」
えっ偉く格好良い技名が出て来た……だがやっぱり分からない、すると苦笑したラキュが変わりに答えてくれる。
「あれは太陽に向かって山なりにサーブを上げてボールを太陽の光で見えにくくするサーブだね」
「……きっ聞いてみれば単純な事だった」
これが分からなかったなんて少し恥ずかしい……。
「してやられたね……やるじゃないかアヤネ!」
ビシッーー
と指をさし笑うヘッグ、まだ彼の顔には余裕があった。
そうだ、まだ1点取られただけだ……まだ余裕がある!
油断しなければきっとヘッグが勝つ! そう思っている内に試合は進んでいった。
「はぁ……はぁ……やっやるじゃないか……ぜぃぜぃ……」
あれから時間が進むにつれラリーする事が多くなり肩で息をし始めるヘッグ、そんな彼は全身から汗が吹き出しているヘッグ、もう髪の毛なんか乱れまくっている。
「相手は疲れて来ている様じゃな」
「ん、後少し」
あれからヘッグは点数が入らなくなった、なので今の得点は9対7になって逆転されている上にピンチになっている、やはり1人だから体力に限界が来たのだろう。
サーブはヘッグ、ボールを片手で持ち歯軋りする。
「くっ! 髪が乱れているなんて俺の美学に反する……だがっ! 負けるのはもっと美学に反するっ、俺は負けない!」
カッ! と目を見開いて空を見上げた後ボールを高く上げる。
「イケメンっ! シューっ……」
ヘッグが跳ぼうとした時だった、彼の足は上がらなかった。
だがヘッグは脚に力を入れて跳んだ! 「イケメン! シュート!」そう叫んだ後、ボールを叩き付けるヘッグ……だがそのボールはゆっくりとロアとアヤネのコートへ飛んで行く。
もう体力に限界が来た……ヘッグはその場で膝をつきそのまま顔を俯かせた。
「イケメンさん……ナイスファイト」
そう言った後、アヤネがボールを受けてコート前に飛ばす。
「健闘を称えて全力で決めさせて貰うのじゃ」
ロアはボールを見た後、跳び腕を振るってボールを砂浜に叩き付けた!
ザシュゥッーー
そんな音を立ててボールは勢い良く砂浜に落ちた、得点はロアとアヤネのチームに入る……同時にヘッグの敗北が決まった。
「はっ……ははっ、負けてしまった……だが、俺は……美しく戦えたよね?」
そう言ってヘッグは俯せに倒れ込んだ、それと同時に彼の健闘振りにギャラリーは涙し盛大な拍手をした……「良くやったぞぉ」とか「格好良かったわぁ」とか色んな声が上がる。
メェなんか涙してるし、鬼騎は男泣きして拍手してる。
ロアとアヤネも微笑んで拍手する、ヴァームとリヴァイはヘッグの方へ行き優しく担いでヘッグを海の家へと運んでいく。
ヘッグの姿が消えるまで拍手と健闘を称える声援は終わらなかった。
さて、この感動の空気をぶち壊す様で悪いが……そろそろ突っ込ませて貰う。
なんっだよこれ! なんか感動的な事になっているがこれ! 罰ゲームを掛けたビーチバレーだからな! え? 何? この感動的な光景は! 調子狂うわ! と俺は思ったが空気を読んで俺も拍手をした。
そんな俺を横目に見ていたラキュは「良く突っ込むの我慢してたね」と言ってくれた、そんな彼には「ありがとう」と言っておいた。
そして、暫くするとリヴァイとヘッグが戻って来た。
さぁ……次の試合が始まる、今度はどんな試合を見せ付けてくれるんだろう。
ヘッグの健闘に拍手! 今回はヘッグを目立たせて見ました、こう言うキャラも目立っても良いと思うんだ。
と言う訳でまだまだビーチバレーは続きます。
因みに、ビーチバレーのルールは物凄く簡略化しております……調べてみたらややこしかったのです……ご了承下さい。
次の話の投稿日は19日の0時になります、是非お楽しみに!