13
新しい朝が来た騒がしい朝が……。
あぁ昨日の夜は本当に大変だったなぁ……ふと部屋を見渡すとカーテンの隙間から朝日が射し込んでくる、「眩しい」そう思い目を擦り上半身を起こす、昨日の夜着せられた猫着ぐるみパジャマの猫耳フードを外し髪の毛をかく。
「ふあぁぁ……まだ眠たい」
大あくびをすると眠気が襲ってくる、昨日はロアのせいで眠れなかったからな、仕方無いだろう……。
横を向くと隣ですぅすぅ寝息立ててるロア、黙っていれば可愛いな、昨日は散々俺にちょっかいだしたあげく、急に「眠い……」って言って俺の隣に移動して寝むりについた……女が隣で寝ていて男が寝れると思うか? 答えはNOだ、だから今は超絶眠たい……このまま寝ていたい位だ、そんな事を思った時だ。
ぐぅぅぅーー
腹が鳴ってしまった。
「そう言えば昨日の夜、何も食べてないな……」
風呂で倒れてそれ所じゃなかったしな、眠いし腹が減ったし……全く朝から散々だな……。
「はぁ……着替えるか」
ベットから立ち上がりクローゼットに移動する、この猫パジャマ、着心地は良いけど明らかに女が着る服だ、はやく男の服に着替えなくては! 脳内でそう考えつつ歩いていると。
がちゃっーー
ゆっくりと扉が開いた、咄嗟にその方向を見てみる、そこにいたのはヴァームだった、何故か微笑みながら入ってくる。
「ふふふ…昨日はお楽しみでしたね」
なんだ? こいつの「昨日の事は全て分かってますよ?」と言いたげな表情は……。
「全く楽しくなかったからな! ある意味死にそうになったぞ!」
「あらあら……それは散々でしたね」
くすくすと笑ってくるヴァーム……こっこいつ、絶対に昨日の事に関わってるよな?
「お前……何かしたのか?」
「いえいえ……わたくしは上手くシルクさんをお風呂に誘導しただけですよ?」
「思いっきり何かしてるじゃないか!」
昨日のロア探していたのは演技か! 全てヴァームの計画の内か! くそっ! それにまんまと引っ掛かってしまったのか。
「で……いかがでした? ロア様の裸は」
「あっ阿呆! そっそんなの見てない!」
にやにやと笑って俺に近寄るヴァーム、顔が赤くなった俺は横を向く、ぐっ! また思い出してしまった、ろっロアのはっ裸を……あぁぁっ! 落ち着け俺! 失せろ俺の煩悩よ!
「ふふふ……嘘はいけません、私があの場で直接隠し撮りして、シルクさんがロア様の裸を凝視してたのがばっちり写ってますから」
「なっ! かっ隠し撮りだと!」
あっあそこにいたのか? 全然気が付かなかった、ってそんな事より!
「そのカメラを寄越せ! データごと消し飛ばしてやる!」
「嫌ですよ勿体ない……」
自分の胸を押さえながら後退りするヴァーム……そう言えばカメラってどう言う原理か分からないが、ヴァームの胸の中に入ってるんだよな?
「正しくはメイド服の胸の裏ポケットですね、色々と入る様に細工してるんですよ?」
「いや……だからと言って、そんな大きい物入れな……って! 俺今、口に出してなかったよな?」
「心をよみました、これもメイドの嗜みです」
ふふふっと笑ってスカートの裾を持ち、ぺこりと頭を下げる、そんな嗜みあってたまるか!
「ふふふ……細かい事はどうでも良いじゃありませんか」
「いや、色々とよくないからな?」
駄目だ、まともに話してたら頭が可笑しくなってしまう。
「さて、そろそろロア様を起こしましょうか」
ヴァームは窓の方へ歩いていきカーテンを開ける、部屋一杯に光りが照らす……その眩しさに俺は手を目に覆う、するとロアが……。
「うぅぅ……」
眩しいのか窓とは反対の方に寝返りをうつ、こっこいつ……人の気も知らないですやすや寝やがって……腹がたってきた。
「昨日は幸せな体験をしましたからね、良い夢をみてるんでしょう」
「こっちは死にかけたけどな」
悪戯な笑みを浮かべ俺に聞いてくるヴァーム……苦笑しながら言ってそっぽを向く、あの夜の風呂場の出来事は綺麗さっぱり忘れたい……だが今でも脳裏にロアの霰もない姿が……っ! くそぅっ! 煩悩退散っ!
ばちんっーー
頬っぺたを叩き平常心を保つ、その様子を楽しそうに見つめるヴァームはロアを起こそうとベットの方へ歩く。
「ロア様ロア様、朝ですよ」
「んー……あと2時間……寝かせて……欲しいのじゃ……ぐぅぅ」
ゆさゆさと身体を揺するヴァームを払いのけ布団を被り寝てしまう、どうやらロアは朝が弱いらしいな……そのまま今日1日寝てくれたら平和だろうなぁ。
「何いってるんですか! ほらっ起きてください!」
「煩いのじゃ……うぅぅ、わらわ朝は弱いのじゃぁ……」
弱々しい声で話すロアだがヴァームは気にせず身体を揺らし続ける、さてこの隙に俺は着替えようかな……ヴァームは今ロアを起こすのに忙しい、だから着替えを見られる心配は無い、さっさと着替えてしまおう。
って、そう言えば俺の服ってちゃんとクローゼットにしまってるんだよな? メイド服に着替えさせられた後、俺の服ってどうなったんだっけ? まっまぁ服はクローゼットにしまってるだろう、俺はそこまで歩いていきクローゼットの扉を開ける……殆どロアの着ている服ばかりだな、あのへそ出し衣装しかないぞ? 同じ服を着回す魔王って一体……いや、そんな事より俺の服だ! ちゃんとあるかな……ん? あった! 間違いなくこれは俺の服だ! 俺はその服を手に取りクローゼットから出す。
「…………ぇ?」
そしたら気の抜けた声が出てしまった、あっあれ可笑しいな? 俺の服って普通の布の服だったよな? こっこれはどういう事だ?
「ローアーさーまっ! 起きてくださいっ!」
「むぅ……いやじゃぁ……」
ゆさゆさとロアの身体を揺らしまくるヴァームの光景を見ながら思う。
これは色々と問い詰めなければいけない!
「うぅ……仕様がないのぅ、起きるとするかぁ……って、あれ? シルクがおらぬ! 何じゃ、もう起きておったのか……ん? 何じゃその顔は?」
やっと起きたロアはベットに座りつつ俺の表情を見るなり?を浮かべるロア。
「やっと起きてくれましたか……あら? シルク様どうしてわたくし達を睨んでるんですか?」
ヴァームは、俺の表情を見てにっこりと微笑んで来た、ここに来てから散々な目にあって来た、その殆どがこいつらの仕業だ! だから俺の服に何かしたのもこいつ等に間違いない!
「なぁ、俺の服なんだが……」
そう言って手に持っている服を2人に見せる、すると「あぁ……その事か」と言いたげにヴァームが頷いた。
「シルクさんの服は、私好みに仕立てちゃいました」
「そうか……やっぱりお前の仕業か」
ヴァームの言葉を聞いて改めて服を見てみる。
「折角ですので可愛くしてみました、喜んでくださいね?」
なんと言う事だ、俺の服が女の子物になってしまった……どこが変わったかと言えばデザインだ……無地の布の服が少し可愛くなってる、左胸の当たりにハートの刺繍をしてある、ズボンも何処をどうしたのか分からないがスカートになっている、どうやら俺はヴァームに説教をしなければいけないらしい。
「喜ぶとおもってるのか?」
「おぉ! シルクっ早うその服を着るのじゃ!」
ロアは寝起きだと言うのに元気だな……と言うか今ヴァームに説教をする所だから邪魔しないで欲しい、だがそんな事を言ってもロアは邪魔するだろうな。
「はぁ……」
「ん? 元気が無いのぅ、あ! そう言えばおはようのちゅーがまだだったのぅ……ちゅぅーっ」
しゅばっ!ーー
俺の所へ走ってくるロアを交わす! そう何度も唇を奪われてたまるか!
「ぐぬぬっ、避けるとはけしからん! ヴァームっ、押さえ込んでしまうのじゃ!」
「了解しました」
俺の朝は騒がしい、いつもなら起きて歯を磨いて顔を洗ってシャワー浴びて朝食を作るんだがな……そんな平穏な日常とはかけ離れている。
「もう胃薬が常備薬になっても可笑しくないかもな……」
そう呟きながらもヴァームに押さえ込まれる、抵抗はしないのかって? もう無駄なのは分かっているからしない……言ってしまえば無抵抗の方が胃の負担が楽になるからな、流れに身を任す事も大切だ、まぁ本当に嫌な事は抵抗するがな。
「うふっうふふふ……猫耳シルク様を脱がすっ、あぁっ…興奮します!」
舌をぺろりっと出しながらヴァームが妖しく笑う、この恐ろしさ多分慣れそうもないな、さてこの後はロアが何か仕掛けてくる筈だが……。
「今の内にわらわはシルクの唇を奪うのじゃ!」
おっと、そうはさせない! 俺は座り込んで顔を近付けてくるロアに、ごちんっーーと頭をぶつける。
「あだっ! うぅぅっ……にゃにをしゅるのじゃぁ」
痛さのあまり頭を押さえるロア、片手で髪の毛をいじりながら、じっーーと目を向けてくる。
その時、頭に痛みが走る、先程の頭突きのせいだろう……凄く頭が痛い、あれは自滅技だな……だがこれでキスは免れたぞ!
「いきなりキスしようとするからだ……って、おいヴァーム! 何どさくさに紛れて脱がせ様としてるんだ!」
残念、今回も抵抗は出来なかった……脱がされた俺は女物に仕立てられた俺の服をきさされた、え? パンツは女物なのかって? 言わせるなよ恥ずかしい……。
抵抗虚しく服を着替えさせられる様子を悲しげに見ながら思う俺であった、ここの生活ある意味精神が鍛えられるかもな、不本意だがな、はぁ……。
章のタイトルにスライムとあるのに、まだあの方が出て来て無い事については触れないで下さい……。
もう少しお待ち下さい……。