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DNA

休日の研究室の内部は静まりかえっていた

友人と私はDNA合成装置の前に立っていた


「すごいなあ!これが噂の機械か、生物が合成できるんだろ?」


どうしても見たいと言う友人にせがまれて、規則違反だがこっそり連れてきた

主任研究員である私の特権を使って・・


「ああ・・まだ試験段階だがね、倫理的な問題がクリアできれば、理論的にはどんな生物も

 作れる・・・理論的にはね・・・最終的な目標は長期惑星間航行にも耐えられる

 絶対的な生物機能を持った人間の創造だね」


「これで人類の夢だった宇宙開拓の歴史が、始まるってわけだな?」


「このキーで入力して、塩基配列を操作する。タンパク質の合成ストックは軽く10万種を超える。

 細菌からクジラに至るまで合成可能だ。全く新種の生物をつくることも可能だが、さっきも言った

 ように、倫理的、安全保障上、制約が多いがね」


「すごいな!・・・こっちの端末は何を操作するんだい?」


そういって友人はもうひとつの装置の前へ立った。


「ああ、それは機械合成装置だ、当初は生物と機械の融合した人間を考えていたんだが・・・

 計画の変更でやはり生物一本でスタートすることになって・・・

 いづれはそっちも試験することになるだろう。あらゆる機械の組み立てが可能だ、

 マイクロカメラから宇宙船までね・・・君の専門だろ?」


友人は機械工学の専門家だが、最近自宅にこもって何かを研究していたらしい。

そんな彼が突然、研究室を見たいと言いだしたのだ。

実験プラントの完成と同時期だったので、ひょっとすると、DNA合成装置よりも

この機械合成装置のほうに興味があったのかもしれない。

へたな機械工場よりも効率のいい機械なのだ、データを入力するだけでOKだ



しばらく何かを考え込んでいた友人はおもむろに振り返り


「なあ、じつは俺にひとつのアイデアがある・・・もちろんお前の研究に役立つことだ

 俺の理論も実証したい、今日はデータを持ってきているんだ、

 この機械を使わせてくれないか?

 惑星間航行に革命的な発明なんだ、」


私は一瞬躊躇したが、惑星間航行に関すると聞かされては、心が動いた、友人の精神状態も

普通のようだし、兵器でもつくらないかぎり、特に問題はないだろうし、メインの研究には

影響がないかぎり、誰も文句は言うまい


「トースターでもつくるのかい?いいよ使えよ」


私の面白くないジョークには反応なく、友人はさっそくデータ転送を始めていた


それからしばらくたって、機械の組み立てが始まった

騒音と工作機械、電子部品の基盤やらが、透明なカプセルのなかでめまぐるしい速度で

組み上げられていく様を、友人と私は黙って見ていた。



機械はそれほど大きくなく、人間よりもちいさいサイズだ



装置の動きが止まった・・完成だ



透明なカプセルが自動的に開き、おもむろに物体が動き始めた

俺は失望した・・なんとも不格好なロボットだった

惑星間航行にロボットを使うなど、なんともレトロな発想だ、そんなものはすで実用化されて久しい


ロボットは我々の前まで来ると、腹部の亀裂から何かを取り出して床に据え付けた


次の瞬間俺は愕然とした・・・


ロボットが床に据え付けた何かの向こうには、見たこともない銀河が輝いていた。


友人は笑っている


私は、そのネコともタヌキともつかない奇妙なロボットをまじまじと見つめた。


 

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