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女しかいない学園に男の俺が…!?  作者: ミキ
オリエンテーション山!
9/42

オリエンテーションでテンション上がるのは普段制服の女子が私服着てくるからということを熱弁したら狭山皐月から腹パン食らった有栖川優と、それを聞いてお洒落してくる1組女子

オリエンテーション当日。


俺たちはまず朝早くに正門に集合した。


全員私服で集まって、学園の所有するバスに乗って移動することになっていた。


バスに乗って3時間くらい移動して、山に着いた。


途中、高速のサービスエリアに寄ったときに、俺たちは久しぶりの外の空気にハメを外してはしゃいだ。


具体的に言うと、そりゃもうガキのように走り回ったり、売店のおみやげ物コーナーのペナントを意味もなく買ったり、木刀を買ってちゃんばらごっこしたり、そういうくだらないことだ。


担任の片瀬教官に非常に怒られ、頭を叩かれた。


まあ、そんな多少のトラブルはあったが、かくしてクラスの全員がABC学園敷地外、青森県にある帝国陸軍第23演習場に到着した。


第23演習場は、整備が進んでいないようなところで、鬱蒼と木々が自己主張をしている。


樹海だと言われれば納得しそうだ。


まあ、樹海がどんなのか見たことないんだけれども。


とにかく山の麓までバスで来た俺たちは、そこから支給品のベルゲンを背負って仲良く山登りした。


ベルゲンと言っても、ノルウェーの都市ではない。


軍のバックパック、リュックサック、背嚢のことだ。


ある程度進むと、開けた場所に出て、片瀬教官たちから全員に地図が配られた。


「とりあえず、初日はお前らにここらの整備をやってもらう」


とりあえずってなんだよ!


思わずツッコミそうになったが、押しとどめる。


下手にツッコミを入れると、後々酷い労働を強いられることになるということを、俺は入学して以来、身にしみて思い知らされたからだ。


「時間は2時間。気を抜かないように」


各班が担当の区画ごとに散っていく。


皐月班のメンバーは、狭山皐月を筆頭に、そのルームメイトの畠山香織、その友人の重松茉莉、そのルームメイトのジャネット・コリンズ、そして俺、有栖川優の合わせて5名。


他の班はルームメイト3組で6名の班なのに、1人人数の少ない皐月班も他の班と同じ広さの区画を任された。


不公平だと思ったが、仕方がない。


みんなで力を合わせればすぐに終わるよね!


「じゃあ、とりあえず香織と私はこの1/3を。茉莉とジャネットはこっち1/3。あんたは残りね」


おっと、ナチュラルに2倍の労働を強いられた。


抗議の声を上げるか上げないかのところで、皐月に遮られた。


「男子なんだから。ね?」


かわいらしくウィンクをされた。


お前、それをかわいいと思ってやってるんだったらかなりサムイぞ。


別にかわいくないとは言ってないし、キスしたくならないこともない。


うん。


キスしてくれたら頑張って引き受けよう。


「お前、それ言えば済むと思ってるだろ……」


「お願いってば」


俺が女子に頼まれれば断れないことを知ってのお願いである。


思えば、この下心のせいで、小学校、中学校と苦労したものである。


女子に頼まれれば、日直の仕事、掃除当番の仕事、委員会の仕事、給食係の仕事、その他いろんなことを二つ返事で引き受けた。


おかげで遠慮無く頼んでくる馬鹿な野郎どもがいたが、そこは女尊男卑。


悲しい男の性というもので、何が悲しくて野郎の言うことを聞かねばならんのだ。


男にはそういう旨伝えて断った。


うーん……、今思えばこれはただのパシリではないのか。


そう考えると、恋愛対象として見られていないのだから、俺のやっていることは途方もなく虚しいことなんじゃないだろうか。


しかし悲しいことに癖として染み付いてしまったものはなかなか消えないもので、こうして皐月にお願いされると断ることはできない。


まあ、皐月は小学校と中学校のころもクラスの女子ランキング(坂田くん調べ)で上位にいたほどの容姿で、それはABC学園に入学してからも変わっていない。


というか、よりかわいくなっているんじゃないかと思う。


うん。普通にかわいい。


普通ってどういう普通かって言われると言葉にしづらいのだが。


皐月の髪は黒くて長くて綺麗で、きっと手入れに時間がかかるんだろうなというどうでもいい感想を抱かせるほどだ。


今みたいに作業するときや、授業中なんかはずっとその綺麗な髪を束ねてポニーテールにしている。


そこから見えるうなじなんてドキッとするに決まっている。


これは俺個人の考えなんだけれど、女子のうなじを見てドキッとならない男子はいないんじゃないかと思う。


ほら、もう今回の作業なんかみんな髪の毛が汚れるのが嫌だからか、単に邪魔だからか、ほとんどの生徒が髪を束ねている。


束ねていない生徒は束ねる必要性がない、もしくは束ねられない長さの髪の毛だからだ。


おお、理想郷はここにあり!


そういえば、今日はオリエンテーションなので、いつもと違いみんな私服である。


しかし、演習だというのに、みんなオシャレな格好をしているようだった。


俺はシャツにパーカー、ジーパン、そしてスニーカーというシンプルで、ハリウッドスターでもない限り「似合ってる」とか「決まってる」とかいう評価は望めないような服装である。


ちらちらとこちらを見る視線を感じる。


ファッションチェックでもされているのだろうか。


ザ・無難とも言える格好の俺の、何をチェックするというのか。


ふと心配になってチャックが開いてないか見るが、大丈夫だ。


社会の窓は閉め切っている。


いやこういう言い方をするとまるで俺が社会との繋がりを拒絶しているかのように聞こえるが、その社会の窓は開けてはいけないパンドラの箱である。


これを開けていると白と黒のシンプルなカラーリングの車が赤い光をブン回しながら、社会のルールを教えにくることになる。


さて、わいせつ物陳列で俺が見られているのでないのなら、一体なぜみんな俺をちらちらと盗み見ているのだ……。


ま、まさか……、いや、そんなことがあるのだろうか。


これは……、みんな俺に気があるんじゃないのか!?


みんな俺のために、俺にアピールするためにそんな無謀なオシャレを!?


「やべえ、みんな俺のこと見てる。モテ期来たわ。勝ったわこれは」


「アホか」


そんな考えは皐月に一蹴される。


彼女曰く、女の子ってものは集まると自分の格好を意識せざるをえない生き物だと。


ああ、それでいくらかの子は着飾っているのか。


そう言われると納得してしまう。


今から何するかわかんねーってのに、無防備というか、なんというか。


そういう皐月班の女子たちは最小限のオシャレに留めているようだった。


一番のオシャレは茉莉のホットパンツにニーソックスという大量破壊兵器だろうか。


このふともも部分の生足が少しだけ顔を出している、絶対領域……いやアレはスカートの場合だけだったか、まあ、そのわずかな隙間の魅力、魔力は男の視線を吸い付けて離さない。


やばい。


良い感じにニーソがふとももにむっちりと食い込んでて俺の愚息がやばい。


何がどう俺の息子がやばいのかということを、微に入り細に入り茉莉の耳元あたりで囁いてやりたいのだが、ここでは勘弁願おう。


白と黒のシンプルなカラーリングの車が赤い光をブン回しながら俺を捕らえにくることになる。


うおおおお頑張れ俺!目を離せ!変態扱いされるのは勘弁だぞおおお!


俺はみんなから不審がられる寸前であたりの木々を見渡した。


……不審がられてないと思う。そう信じたい。


ふう、このハーレムは誘惑が多いな。


「着いたわよ。ここからが私たちの担当区画ね。……馬鹿なこと考えてるんじゃないでしょうね」


皐月は鋭い眼光で俺を睨む。


こいつは小学校の頃から何かと鋭い。


委員長タイプという性格によるものなのか、そういう気配りができるから委員長タイプという性格になったのか。


鶏が先か卵が先かという話ではないが、まあ、そういうことで、皐月は何かとこちらの思考を読んでいるかのようなフシがある。


単純に俺の考えが表情に出やすいという説は、まるで俺がバカみたいに思われそうなので却下。


「あ、あの……、大変だと思うけど、……がんばって!」


香織が俺に声援を送ってくれる。


両腕を前でグッてするだけでもうかわいいのだから女の子ってのはズルい。


それだけで百人力である。


しかし香織は髪がくくれるほどないので、残念ながら首筋は見えない。


見えない……。


いや、見えないからこそ、そこは想像力で補うというものだ!


俺はおかっぱのようなショートヘアの髪をかき分けるように鼻を押し付けてうなじの匂いを嗅ぐことと、香織の若干嫌がる表情とを妄想して事なきを得た。


何の事なきを得たのかは知らん。


「じゃ、私たちはこっちデース!」


そう言ってジャネットがニコニコしながら手を振ってくれる。


気づいたら皐月と香織さんはもう木々の向こうへと見えなくなっていた。


いつの間に……。


妄想している間にだろう。たぶん。


そういえばこのそばかすのアメリカ人はずっとニコニコしている。


聞けば、かわいい女の子を見ていられるなんて素敵じゃない?とのことだったので、俺はジャネットのことは同志と呼ぶことにしている。


もちろん心の中でだけれど。


しかしかわいい女の子を見たいなら鏡を見ればいいのに、と思う。


ジャネットも十分かわいい。


昔見た洋画のヒロインみたいな、活発そうな金髪そばかす少女がジャネットだ。


うーん、外人はそばかすがこれほど似合うのか。


日本人だとここまでは似合わないだろう。


まあ、並んでみてくれないと正確な判断はできないけど。


無造作にふわふわしている金髪が与える活発そうな印象を、そばかすが後押ししている。


うーん、白いワンピースと麦わら帽子を装備させて、夏の満開のひまわり畑に放り込みたい謎の衝動が俺の内側から湧いてくる。


うん!いいね!いいよぉ!そうその表情!いいねー!いい絵撮れるよー!そうこっち向いて笑ってー!いいねえ!じゃ、ちょっとワンピースはだけさせてみようか?うん?ああそうそう肩紐をね、そう、ずらして。おお、いいねいいよーそうその調子!いいよー!うんインスピレーション湧いてきた!じゃあ、今度はそれ脱いじゃおう!脱いじゃおう!ね!それあれだから!もっと開放感ある絵が欲しいから!そう芸術、芸術だから大丈夫!大丈夫大丈夫!大丈夫!そう、ゆっくりとね!うんいいよ!そうまずは胸の部分行ってみようか!裸の金髪少女とひまわり!いいねえ!


「すまない、君一人に任せてしまって……」


……ハッ!?ここはどこだ……?ひまわり畑はどこに消えた……?


俺の目の前には茉莉とジャネットしかいない。


ご機嫌なジャネットと、彼女に両肩を後ろから掴まれて、まるで操り人形のように押されている茉莉しかいない。


なんだ、ひまわり畑と全裸の金髪そばかす少女は俺の妄想だったのか……。


あれはいい芸術作品になると思ったのだけれど。


そういえばジャネットはこういう茉莉みたいな子が好みなのか。


……あいつは本国じゃこんなことを話せるやつはいなかっただろうと思う。


茉莉はどちらかというと子供っぽい容姿である。


ザ・ナデシコって感じの、ザ・日本人形って感じだ。


背も低く、キョロキョロと動く大きな目もかわいい。


それに、いつもの市松人形のような髪は、今は頭の横で2つに束ねられていて……。


おお、これは幻のツインテールじゃないか……。


おそらくジャネットの職人芸……、いや仕業だろう。


ジャネットの情熱を感じさせるツインテールは高めの位置で止められていて、これまた見事にもみあげの部分の髪はそのまま垂れているのだ。


これにより小顔効果があるそうなのだが、まあそんなことはどうでもいいくらいにかわいい。


似合っている。


舐めたい。


……舐めたい!?


あとうなじは最高だ。


それに今日の服装、先ほど俺の目線を釘付けにして社会的抹殺を謀ったホットパンツとニーソックスが生み出す狂気の狭間。


これもジャネットによるプロデュースだろう。


……彼女はいい仕事をしている。


「ど、どうした……?やはり一人だけは不満なのか……?」


おっと、見つめすぎたようだ。


俺の気持ちを察したのか、ジャネットが親指をグッと突き立てる。


俺も同志ジャネットに最大限の敬服を表現するようにサムズアップ。


任せろ!という意味も込めてついでに茉莉にもサムズアップ。


異文化交流とは、こんなにも簡単なものだったのか。


茉莉がなんだか置き去りにされているようで非常にご不満な顔をしているが、まあ、それはジャネットがうまいことやるだろう。


さて、雑談していてもしかたがない。


俺の担当をしっかりとやらないとな……。



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