非日常の始まり
バタバタと朝の支度をして、ドタドタと走って学校へと兄弟は向かう。
使い込んだ自転車は、余りのスピードにタイヤやチェーンが悲鳴をあげている。
そのうちパンクするだろう。
それ程ボロボロになっていた。
家から駅までは徒歩で約20分。
下り坂なので、自転車ならば約7分ほどで駅のホームまで走りきれる。
二人は、なおも全力でこぎ続けた。
女子高生が止まっている原付バイクにぶつかり原付の前部分を破損させたが、見なかった事にして走る。
ヤクザのような怒声が聞こえた気がしたが気にしない。
よそ見して突っ込んだのはアナタ。
自己責任だ。
そんな風に内心思いつつ調子に乗ってクルクルと勢いよく漕ぐ。
そして勢いよく回しすぎたペダルは伸のスネを強かに打ちつけた。
ガツン
とってもイイ音が聞こえた。
しばし声にならない声をあげて悶絶している。
それを我慢しめ、先ほどよりスピードが落ちつつもふらふらっと懸命に走る。
ぶつけた瞬間を見てしまった三咲は
「ブホッ!」
吹き出して笑いを噛み殺した。
「わ‥笑うな~!!」
顔真っ赤にして年子の兄に喰ってかかる弟。
「いや、悪い悪い!まぁたまにアルな。ダセェけど」
ケラケラと悪びれずに先導をきる兄が、唐突に止まった。
目は前をただただ見ている。
勢い余って伸は兄の自転車にドンと衝突してしまった。
それでも兄は微動だにしい。
「ウォイ!どうしたんだよ!みー兄!!」
固まっている兄の前まで顔を出して叫んで、何を見ているのかと前方を見た。
そこには、いつも見慣れた駅のホームが真っ白な霧で覆われて全く見えなくなっていた。
「はぁ???」
そんな声しか出なかった。
顎が外れそうな程口が開いた。
「火事かなんかかな??」
首を傾げる。
すると兄はすぐさま
「いや…おかしいだろ」
弟を遮り押し戻す。
あまり見るなと言うように彼は弟の目線を無理やり変え、おもむろに、煙草を取り出し火をようとする。
何時も通りに、と思ったが少し手が震えているのか上手く付かない。
カチッカチッと何度か繰り返すとやっと火がついた。
そして三咲は思った事を口にしだした。
「なんで、あの煙の中を普通にみんな行き来してんだよ。
火事なら逃げんだろ。あんな煙で充満しているのなら一酸化中毒で一発で死んじまう。
むしろ誰も気づいてねぇかのようだが……」
「んなわけ!!ないだろ??」
煙を通って普通に人々は歩いている。
消防車も救急車もまるで来そうにない。
近くの交番ですら平常どおりだ。
違うとすれば、何時もに比べて人が少ないくらいだ。
三咲は携帯を取り出して、見つめ少しダルそうな顔になる。
「なぁ兄貴が何時も通りだったから癖で出てきたが今日学校休みだぞ…」
ブラリと弟に携帯の画面を見せる。
「うわっ!本当だ!俺らダセェ!!」
「で、お前…あの電車に乗りたいか??」
首をブンブン振って
「お断りします」
「だよな」
二人は踵を返して元来た道を帰っていった。




