花火の音、仲間と過したあの夏を。
花火の音で聞こえない。愛の告白。
...そんな事は全くなく!俺たちの夏祭りは...
男の声!男の体!花火の音は全く聞こえない!そして...2026年の夏祭り終了!
「なぁ陸!見てみて!」
口角を限界まで下げ、目を細める。
「ブロブフィッシュー」
「ぅ、うるさいよぉw、黙れw」
「なに?なになに?ブロブフィッシュだよ?陸くんよぉ」
「うる、うるさぁいいw」
「おぉ、お前らうるさいでぇ〜」
ブロブフィッシュは健太。茶色い短髪を逆立てた17歳の男。陸は、少し長い白髪をした17歳の男の子。関西弁でフランクフルトを持って現れたのは、大輔。茶色い長髪を後ろでまとめた17歳の男性だ。
「いやー今年の夏祭りは去年みたいな事なくてよかったなぁ!」
「せやなぁ〜去年は酷かったわ〜」
「あぁ〜なんだっけぇ〜去年は...」
─2025年高校1年生の夏祭り。
「よぉ!陸!大輔!」
「久しぶりぃ〜健太ぁ〜」
「学校変わって会えてなかったからなぁ、ほんまに久しぶりやわ〜って言っても4ヶ月ぶりやけどな!」
「まぁまぁ、いいっしょ!はやく屋台行こーぜ!」
走って屋台へと向かう健太を置いて、2人で話しながら屋台へ向かう2人。何故一緒に来た...ちなみに、卒業式から合っておらず、8月後半のため、4ヶ月以上会っていない。アホである。
「おいお前ら!おせーよ!もう俺おっちゃんから焼きそば買っちまったわー」
ニカッと笑い2人に焼きそばを見せて食べま始める
「ほまへらも、くふか?」
「食いながら喋んな!」
「めんごめんご!食い終わったからさっさと屋台!見に行こうぜ!」
「...え?健太、あの一口でだべたのぉ〜きもぉ〜」
「おい陸?あれはね?焼きそばが少ないの分かるかなぁ?」
不気味な笑顔で陸に話しかける。それからもしょーもない事を話しながら屋台を巡る。
「お前らなんも買ってねぇじゃん!」
右手にわたあめ、左手にフランクフルト、頭にお面、手首に下げてる金魚のふくろ。
「お前が買いすぎなだけやろがい!」
「僕お腹すいてな〜い」
「じゃ、裏山行って鬼ごっこ...」
「一人でやっとれ」
「2人共冷たいぃー健太くん泣いちゃうぞ!」
呆れた表情の2人が足早に神社の階段を登る。後ろから走って健太が追いかけてきて横に並ぶ。3人が知り合った9年前からこの調子である。何故こんなメンツが仲良くなったのかは、本人達も分からないそうだ。
お祭りの楽しい雰囲気とはがらりと変わり、静かな森の中からセミの鳴き声が聞こえる神社のベンチに座り込み、また雑談をはじめる。だが、一人険しい表情の男がいた。
「なぁ、話に水を差すようで悪いが...今年の祭りなんか変でない?屋台のおっちゃんみんな暗いし、町の人達も、みんな顔が暗いねん...」
「まぁ、言われてみればぁ〜」
「そうか?俺は全然わかんねぇわ!」
「町の様子もおかしいし、せや!健太ん家でゲームしょーや!もう祭りも全部まわったし!」
健太の首がガクンと落ち、下を向く。健太はイベント事も大好きだが、イベントとゲームならば、もちろんゲームとる健全な男子高校生である。
「いやいや、せっかくの夏祭りだし!みんなで楽しもうぜ!」
「それもそ〜だねぇ〜」
「あぁ、おかしな事を言ってしまってすまなかったな」
「いいってことよ!」
不信感を抱いた表情で苦笑いをつくり、受け流す大輔。もちろん、健太ならゲームを取ると思いした提案だったため、やはり険しい表情は変わらない。
一方で陸も、冷静な頭脳でいつも通りの受け答えをするが、町、健太に対して、不信感を抱いていた。
「あっそういえば!裏人間ってアニメ知っとる?」
「しらな〜い」
「どんなアニメだ?」
「まず、夏祭りがあるんやけど、その日町の様子がおかしいねん、ちなみにその祭りには男子高校生3人できったんやけどな、のそ中の1人が祭りの食べ物を食べて裏人間になっちまうっちゅう話やねん...あぁ、ちなみに裏人間っていうのはな、人間の形はそのまま、人間を食っちまうやべぇやつな」
健太が下を向き、立ち上がる。2人の方に振り返らないまま話し始める。
「なぁ、、、大輔、お前そのアニメ最後まで見たか?」
「いや?まだ途中やけど...」
「くっくっく、笑えちまうなぁ!そんなアニメがあったのかぁ!まぁいい、そのアニメで言うなら、俺は、いや、この町の人間は、裏人間だぁ!」
健太の目が充血し、血走っている。口を大きく開けて。健太は、ホラーやダークな話しは苦手であった。つまり、そんな冗談を自分から言う訳がないのだ...
「陸!とりあえず逃げるぞ!」
「うん!」
2人が裏山へ走り出す。健太は興奮状態で空を見上げている。
「ねぇ、大輔!健太を助ける方法みてないの!?」
「ちょっと待て!今思い出す!」
陸は柄でもなく焦り、周囲を警戒している。その後ろで、アニメの内容を思い出す大輔。
「...!健太、上を向いてたよな!?」
「うん!空を見上げてたよ!」
「裏人間にもな、王がいるんよ、その王が生まれるまで裏人間は裏人間をつくり続ける。健太みたいに飯とかを使ってな!普通の裏人間は上を向けないんだ、王の胸に埋め込まれたルビーのような心臓を抜き取り砕けば、裏人間は全員元に戻る!」
「でも、どうやって...?」
「正直本当にアニメ通りにいくか分からんけど、陸!花火をあげてくれ!」
陸の家系は、代々この町の夏祭りで花火を上げてきた家系である。そして、陸の両親は早くにして交通事故で亡くなっている。そのため、陸へ花火の打ち上げ方は受け継がれている。
「わっかんないけど、あげればいいのねぇ!花火を!」
「頼んだぞ!陸!」
陸はこの祭りの為に用意してあった花火台の元へ走る。2人の仲間を信じて。
一方大輔は、健太の元へ走り、高い所を好む裏人間の王の性質で、まだ神社に居ることを信じ、2人の仲間を信じ、神社へ走り出す。
「はぁ、はぁ、よし!健太はまだおるな、後は健太が大っ好きな花火を見ている隙にドーンやな!」
ドーンッパラパラパラ
この陸、大輔以外裏人間という町に、1つの芸術がさく。
「あ゛?...花、火?」
健太の目に仲間たちの繋いだ花火が移る。
「健太!」
森に隠れていた大輔が健太に向かって飛び出し、健太に抱きつく。
「だ、大輔...!はな、離せ...!」
「離さんで!お前おらんくなったら、俺は誰と花火をみればいいんや!」
その時、大輔が健太から心臓を取り出し、地面に叩きつける。
パリーン
「大輔っ!大輔ぇぇぇぇ!」
「健太、!ありがとうな...!」
「何がだよ!」
「俺が抱きついた時、お前は、俺を喰えただろ?...ま、お前はそんな事考えてねぇか!w」
「おい!」
泣きながら、いつものテンションに戻っていく2人の元にたった一つのお忘れ物が...
「ちょっとぉ〜2人で完結しないでぇ〜」
「お!陸!ありがとうな!」
「おー!陸!花火!綺麗だったぞ!」
─あれから1年。
「なぁ大輔、ブロブフィッシュー」