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第8話 エンドガーディアン

私は滝のように汗を流し、まずいまずい!と焦っていると頭を抱えていた北本が口を開いた。


「エンドガーディアンとは、人生本をハッピーエンドにするための専門の人のことを言います。エンドガーディアンはその人の人生に入り込んでハッピーエンドへと導きます。本来ならその時代にいないはずの人間と言うことになるのでそう簡単に誰でもなれるものではありません。コミュニケーション力、適応力、忍耐力など様々な能力が必要です」

「なるほど〜。でも私にそんな能力は...」


《いえマスター。マスターの情報を取得した際、それぞれの能力パラメータを作成しましたが平均以上の数値が出ていました》


「えぇ〜!そうなの!?自覚ないんだけど.....」


私はちょっと困惑していた。


「ちなみに人生本のことを裏屋さんから詳しく聞いていますか?」

「人生本について?そういえば詳しく聞いてないや」

「裏屋さん??」

「いや〜物忘れが酷くてのぉ〜歳じゃなぁ〜」


北本に問い詰められるが知ったかぶりをする吉太。


「はぁ〜.....人生本とはその人の人生が書かれた本です。人生は重要な選択肢の連続と言いますよね?自分が選んだ選択の未来で“こんなはずじゃなかった”、“こうなるならいっそのこと楽になろう”など心が壊れた、もしくは壊れかけた時に生まれる本なのです」

「じゃあ心が壊れたというか人生本が生まれた人たちはどうなるんですか?」

「個人によりますが、約40%の人が人生本が生まれてから3年以内に自ら命を絶っています。そして約20%は未遂に終わった人、約30%は現在病院で治療している人です。残りの10%は差し支えなく生きている人です。なぜこのような現象が起きたのかは未だに不明ですが、政府はこの危機を受け止め、エンドガーディアンの育成を始めました」


政府も危機的状況をなんとかしたかったのだろう。しかしよく思いついたものだ。


「先程も申しましたがエンドガーディアンは危険を伴います。ですのでそれぞれの能力を総合的に見て“優秀”と判断した者のみが時環アカデミーに入学できるのです」

「真日奈はその能力値が高かったということじゃな?」

「はい。校長先生は真日奈さんの能力を見込んで入学を提案したいのでしょう。なんせエンドガーディアンは常に人手不足ですから」


とりあえず話を一通り聞いた私。


「ん??私が吉太の人生本をハッピーエンドにしたってことは吉太にも心が壊れそうな事があったってこと?」


私は疑問をぶつけてみたが、2人は下を向いた。すると吉太が言いづらそうに「それは....」と言ったが北本に止められた。


「その人にとっては思い出したくない記憶でもあります。なのでそれ以上はどうか模索しないでいただきたい」

「そう......だよね。ごめんね吉太」


私は素直に謝った。

人生本は心が壊れかけた時に現れる本だって説明を受けたはずなのに。私ってまだまだだな......。


「いいんじゃよ真日奈。それより北本くんの話はどうする?」


吉太と向き合った。一緒に来てと言われても正直なところ行きたくはない。でもここまで聞いてしまった以上、私にも責任というものがある。


「私はエンドガーディアンになりたいわけじゃないし、人生本についてだってよく知らないけどそれでも.......誰かの力になれるならとりあえず話だけでも聞いてみようかなって思う」

「そうか.....真日奈らしい答えじゃな........というわけで北本くん。真日奈をよろしく頼む」


吉太は頭を下げた。それを見た私も慌てて頭を下げる。


「頭を上げてください裏屋さん!真日奈さんの事は私が責任を持って連れていきます」

「あぁ。そうじゃ真日奈、もし困った事や大変な事があればクロノアに聞くとよいぞ」

「うん!分かった!」

「真日奈のことを頼んだぞクロノア」


《かしこまりました吉太郎様》


そして話はまとまった。私は時環アカデミーの校長先生に会いにいくことにした。北本は自分のクロノリングに触れ、手を前に差し出す。すると大きい白い扉が現れた。


「扉??」

「この扉を通ればすぐに時環アカデミーへと行くことができます。準備はよろしいですか?」


私は緊張して手が震えていたが自分の決めた事だ!と強い思いを持って深呼吸する。


「はい、大丈夫です!」


北本は扉に触れるとドアがゆっくりと開いた。扉の中は眩い光に包まれている。北本はそのまま歩いて扉の中へと歩いていった。


「よし.....じゃあ行ってくるね!吉太!!」

「気をつけるんじゃぞ!」


私は吉太に手を振ってからクロノアと一緒に扉の中へと走って飛び込んだ。


─────────────────────────────────


「まっぶしっ!!」


扉に入った後、しばらくして視界が良好になった。すると目の前には大きい校舎が立っていた。


「うわぁ〜.......なんか魔法学校みたいな見た目してる」


学校はレンガ造りの5階建てだった。校門の先の広場に噴水があるのが見える。人もまぁまぁ多い。


《情報を更新しました。現在地は時環アカデミーの校舎前です》


「ここが時環アカデミー........すごい大きい建物だね〜」

「科が分かれていたり、さまざまなコースがあるので全校生徒は約200人くらいです」

「200人!?私の高校よりも少なっ!!」


私の隣に立っていた北本の説明を受けて驚く。

だって私の高校は全校生徒300人くらいだったし。


「それだけ入学基準が厳しいのです」

「あ、そっか......」


北本に案内され、敷地内にある校舎へと足を進めようとしたが、ある事を思い出してポケットからスマホ取り出した。


「あれ??スマホが使えない」


たった今、お母さんに連絡していないと思い出したのだ。手に取ったスマホを起動したが画面が真っ暗。ボタンを押してもつくことはなかった。


「確か充電はあったはずなんだけどなんで??」


《マスター。それはここが西暦3500年だからです》


「さ、3500年っ!!!???」


<続く>



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