第6話 現在への帰宅
「.....!、ここ....は....?」
扉に触れた瞬間、光に吸い込まれゆっくりと目を開けるとそこは元々いた本屋さんだった。
よかった...戻って来れたんだ私....。
そのままスタスタとおじいさんを探して歩く。
「おや?もしかして....」
声がした方を見るとそこには椅子に座って待っていたおじいさんがいた。私を見る目は少し驚いている。
「ただいまおじいさん!私帰ってこれたよ!!」
「よく帰ってきてくれたのぅ〜。ささ、まずは座ってお茶でもしようかね」
そう言われておじいさんと向かい合わせに座る。そしてお菓子とお茶を持ってきてくれた。
「やった〜!じゃあ遠慮なくいただきま〜す!」
私はお菓子をパクッと食べる。
ん〜!やっぱり美味しい〜!
「よく戻って来てくれたね真日奈」
「うん!........ってあれ?私おじいさんに名前言ったっけ?」
「いや言っておらんぞ?なんなら自己紹介すらしてないのぅ」
マジですかぁ!!??吉太の時は「まず自己紹介からだよね?」とか自分で思っておきながら忘れてたじゃん!!
「え〜とじゃあ改めて自己紹介を...」
「する必要はなさそうじゃよ?」
「ふぇ?」
おじいさんをきょとんとした目で見ていた。
ピ...ピピ....ピピピ!!
ん?なんだろうこの音??
《......持ち主のデータを確認しました。これより再起動に移ります》
「え.....えぇ〜!!嘘!!??」
腕につけていた時計が突然変な音出し始めたし、変な音声で喋り始めたし!!
「これっておじいさんがくれたものじゃないの?」
この時計は扉をくぐり、移動した時代についた時に既に自分の腕に付いていたもの。てっきりおじいさんがくれたアイテムなんだと...。
「それはわしのじゃ........なかったような?そうだったような?」
「いや!大事な部分忘れないでよっ!!」
「最近物忘れがあって歳かのぅ〜?」
「もういいや....それより再起動中のこれって何?」
私は腕についてる時計をおじいさんに見せる。文字盤には【再起動中】と書かれている。
「人生本をハッピーエンドにするためにはいろんな時代に飛ばなきゃ行けないであろう?けれどいつの時代か場所がどこなのか分からないまま無闇に歩き回るのは危険じゃということで開発されたのがこの”クロノリング“」
「クロノリング??」
「そうじゃ、しかしよく見るとそのクロノリングは”旧型“じゃな」
「リングに旧型とかあるんだ...」
話によるとクロノリングには”新型“と”旧型“があるらしい。新型は人生本を登録すれば情報が自動でインプットされてそのまま行くべき時代に飛べる。けれど旧型は自動で人生本をインプットできず、時代を飛ぶための扉を使わないと行けない。さらに扉をくぐった時に現れる光を吸収してデータを読み込むことしかできない。だがどちらにもAIシステムがついているとのこと。違いは性能らしい。
「真日奈の腕についていたということは現代と過去を繋ぐための扉の異空間で誰かが落としたか、捨てたんじゃろう」
「捨てることなんてあるんだ。ちょっと意外」
「わしだって資源ごみを異空間に捨てることがたまにあるぞ?」
「異空間だとしてもポイ捨てはダメでしょ!!不法投棄だよそれっ!!」
「冗談じゃよ」と笑ってたおじいさん。なんか本当にやりそうではある。そうこう話をしているとピッと音がした。どうやら再起動したらしい。
《.....再起動しました。これよりデータを読み込みます》
「へぇ〜すごい」
《情報を確認しました。名前、安西真日奈。春笛高等学校、2年Bクラス》
「本当に私の情報取得できるんだ〜」
「まだまだ面白いのはこれからじゃよ」
おじいさんはお茶を飲みながらのんびりしている。私は驚きすぎて言葉が出ていない。
《4月15日生まれ、17歳女性。情報漏れがないことを確認しました。これよりAIシステムをご使用いただけます》
「これで次からはやりやすくなったじゃろう。君のAIは優秀じゃよ?早速疑問を聞いてみるといい」
「質問か.....あ、名前は!?」
《はいマスター。私には名前は存在しません》
「そうなの!?じゃあ名前付けてあげるよ!」
ん〜、AIシステム、名前、名前....。可愛くて呼びやすいのがいいよね....。クロノリング....AI?クロノ....AI.....あっ!
「クロノアでいいんじゃない!?」
《かしこまりましたマスター。私はクロノアです。》
「じゃあ早速!クロノア、私がハッピーエンドにした吉太は本当に幸せになったの?」
《最適解を検索中......。発見しました。吉太はその後学校を卒業して就職し、愛する家族にも恵まれました。幸せかどうかは判断できないため、本人に直接聞くことを推奨します》
「え、本人??」
《はい。マスターの目の前にいる人です》
目の前って......おじいさん?
おじいさんは立ち上がって何やら古そうな箱を持って来た。箱には埃が被さっていたがほろって開けると中には赤いリボンがしまってあった。
「あぁ!!!それ私のリボン!!でも吉太に渡したのになんでおじいさんが...」
「まだ気づいておらんのか?というかわしは最初に言ったはずなんじゃがまぁよいか。わしの名前は裏屋吉太郎。吉太じゃよ」
「........え、えぇぇぇ!!!」
動揺を隠せない私。というより混乱してるの方が大きい。
「え!だって....え!?」
《マスターの心拍数が上昇しています。深呼吸を推奨します》
「あ、はい、すいません!」
私は深呼吸をして落ち着きを取り戻した。
「おじいさんがあの吉太だったんだ....」
「そうじゃよ?」
《恐れながらマスター。最初に出会った時に吉太=おじいさんと説明がありました》
「クロノアは黙ってて!!」
めちゃくちゃ恥ずかしい。そういえば本屋で出会った時に「わしの人生本をハッピーエンドにして欲しい」とか頼まれてなんやかんやあって現状に至る...だったはず。忘れては....いないよ!!(※マスターは完全に忘れていました)
「じゃ、じゃあその...吉太...さん?」
「前のように吉太で良いぞ」
「あ、はい。えーと私は吉太を幸せにできたの?ハッピーエンドにできたの?」
「そうじゃのぅ〜。あの後就職して働いて、もちろん大変で辛いこともあったけど自分は自分だと言える自信もついた。更に家庭を持つこともできた。それだけで十分わしは幸せじゃ。その幸せはきっと愛菜という人物...つまり真日奈と出会うことができたから、友達になることができたから今のわしがいるんじゃ」
おじいさん.....吉太はゆっくり静かに語ってくれた。
分かってたんだ...私が愛菜じゃないって。気づかれてたのかもしれないけど合わせてくれて...。
「吉太、今回いろいろ学んだよ。反省することばかりだけど私............もう少しだけいろんな人をハッピーエンドにしてもいいかな?」
それが今の私にできることだと思った。たまたま寄った本屋さんで話しかけられてお願い事を引き受けた。
全部“偶然”かもしれないけど私はちょっと成長できた気がしたんだ。
吉太はニッコリと微笑んだ。
「いつでも来るといい。わしはここにいるからのぅ」
「うん!ありがとう!また明日、ここに来るよ!」
私もニコッと笑った。そしてその日はお茶をしてお菓子を食べてクロノアにいろいろ教えたり教えられたりを繰り返して長い長い1日が終わった。
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「失礼します校長。こちらが例の書類になります」
黒い服を着た男は目の前に座る校長の机に一枚の書類を置いた。
「ご苦労、どれどれ........」
校長は書類を手に取り読み始める。
「“安西真日奈”........面白そうな子だねぇ〜」
「報告によると終書顕現なしで元の時代へ戻ったようです」
「終書顕現なしで戻った!?」
「はい、それにクロノリングを使用した痕跡もほとんどないようです」
「つまり未使用...と」
椅子の背もたれに寄りかかり考える。
うちの学校でも終書顕現なしで帰るなんて報告は過去20件もない。それをいとも簡単にやり遂げたと言うのか??
「その真日奈とやらはどこの学校にいる?」
「それが西暦2220年の春笛高等学校です」
「まさかこの時代の人間じゃないだと!?」
校長は尚更頭を抱える。
他校であればすぐに転校手続きできるはずがこの時代の人間ではないときた。これまでこのような事例がなかったわけじゃない。ぜひうちの学校に来て欲しいが真日奈にとっては未来に来ることになる....。
「如何いたしますか?」
「..............北本に“真日奈を連れてこい”と伝えろ。念のため意思を尊重してな?」
「承知いたしました」
男は校長室から出ていった。
北本に任せれば大丈夫だろうが...もしかしたらその真日奈という人物は予言に出てくる“逸材”なのだろうか....。
<続く>




