第5話 大切なもの
「食パン1斤 100円!?」
あれから私たちは家を出て、商店街へとやって来た。今も昔も人の多さは変わらない。だけどいろんなものが違う。私は食パン100円の値札が目に入り叫んでしまったのだ。
「そんなに驚く?普通の値段だよ?もしかしてこういう商店街って来るの初めて?」
「そ、そうなんだ!私住んでるところめちゃくちゃ田舎で商店街もないくらいの田舎なの!」
またも「あははは〜」と誤魔化す。
食パン1斤が100円の時代があったなんて。私の時代じゃ食パン1斤530円もするよ。値上がりしすぎだ〜。
「あっ!駄菓子屋さん!?」
「そうだよ!あの駄菓子屋さんのおばちゃんはいつもサービスしてくれるんだ!行ってみよう!!」
食パンの話はおいておき、目に入って来た駄菓子屋さんへと一直線に走った。駄菓子屋に入ると子供たちが何人もいた。さすが人気の駄菓子屋さんと言ったところだろう。
「へぇ〜くじ引きにあめ玉、チョコレートにポテチも売ってる!」
「コーラとラムネもあるよ?僕はコーラが好きなんだ〜」
「コーラね!美味しいよね〜私も毎日飲んでお母さんに怒られたことあるよ...」
私はコーラを手に取り、おばちゃんがいるところまで進む。
「おばちゃん!このコーラ一本ちょうだい!」
「おや?見かけない子だねぇ〜?」
「田舎から遊びに来てくれたんだよおばちゃん」
「あら吉くんのお友達?それじゃあサービスしないとね〜はい、20円に割引きするよ」
やっっすい!!一本20円なんて!ここは天国だろうか。普段ならコーラ一本は200円もするのに。
「お金は......ってあっ.....」
ポケットに手を入れ、小銭を出したがその時気づいてしまった。そう、現代のお金しか持っていない!!つまりこの時代のお金は持ってないのだ。
「えーと.....ごめんおばちゃん!やっぱコーラはなしに___」
「僕のコーラと2本分でいい?」
私の話を遮ったのは吉太。おばちゃんに私の分のお金も一緒に出していた。
「あいよ、また来ておくれよ」
吉太は「また来るよ〜」と言ってコーラを2本持って駄菓子屋を後にした。そして向かったのは小さな公園。ブランコに座ると吉太がコーラをハイっと手渡して来た。
「あ、ありがと.....あとお金、持ってないの忘れてて」
「お金は気にしないよ、それよりコーラ飲みたかったし」
そのままフタをカパっと開けて飲む。
美味しいコーラだ!量は少ないけど値段も値段だったしいっか!
私はそのままゴクゴクとあっという間に飲み終えた。
「美味しかった〜!!........っていうか買い物って言っても駄菓子屋でコーラ買っただけだよね?それだけでよかったの?私のコーラ奢ってもらっちゃったし....」
「うん良いんだ。買い物って言ったけど欲しいものなんてなかったし、たまたまコーラがあったから買っただけだから」
「もしかして吉太は友達と買い物巡り?的なことをしたかっただけ??」
吉太はハッとした顔をしたけどすぐに普通の顔に戻った。
多分図星。それならそうと早く言えば良いのに〜って思ったけどさっきまでの状況とか悩みとか考えたら素直に言い出せないか。
「吉太は楽しかった?誰かと一緒に回る買い物」
「....僕は....」
「別に正直に言っても良いんだよ?私と友達でしょ?だから少しは素直になりなよ」
「.........正直に言うと楽しかった。友達と買い物行ったことなかったからこんなに楽しいんだって初めてわかった」
その言葉を聞けて少しホッとした。
もし吉太がこの時代じゃなくて私と同じ時代に生まれて一緒に学校にも行って遊んでいたらその時はどうなっていたんだろう。友達になれていたのだろうか?吉太も自分に自信を持って過ごすことができたのだろうか?そんなことを今考えても仕方ないんだけどな.....。
「愛菜は、自分の家に帰らないと行けないんだよね」
「え、あ、そ、そうだね」
そうだった。今はそんなこと考えている場合じゃない。早くハッピーエンドにして帰らないといけないのに......でも帰り方が分からない!!
「遠く離れて、しばらく会うこともできないけど愛菜は......僕と友達でいてくれる?」
吉太は下を向いて言った。私は吉太の方を見たけど暗い顔をしている。でも答えは1つしかない。
「友達なんでしょ?吉太が私のことを友達と思ってくれてるなら私だって友達だよ!」
私はブランコから立ち上がって吉太の前に立った。そして制服の赤いリボンを取り外して吉太に渡した。
「え、?」
「はいこれ、私の赤いリボン。友達の証ってことで吉太にあげるよ」
「で、でも、それは愛菜が....」
「いらないなら渡さな〜い.....けど?」
リボンを付け直すという仕草をしようとしたけどなんか欲しそうだった。
「だから友達の証ってことであげるって」
「僕....大切にするよ!愛菜との友達の証!」
吉太はニコッと笑顔になった。それにつられて私も思わず笑顔になる。
「もうそろそろ帰らなきゃ行けないんじゃないの?」
「本当だもうこんな時間。早く家に帰らないと家族が心配する」
吉太はブランコから降りて、走って公園の外まで行く。そして一度立ち止まってこっちを振り返って手を振ってきた。
「今日は楽しかったよ愛菜!!また遊ぼうな!!」
私は吉太に元気よく手を振りかえした。
これでもう大丈夫...かな。
そのまま吉太の後ろ姿が見えなくなるまでずっと見守っていた。
「......で、どうすればいいのこれ??」
1人ポツンと公園に残された私。とりあえず腕についてる時計を見る。
【残り時間:15時間】
いつの間にかそんなに時間が経っていたんだ。でもどうしたらいいのやら....。
「あ、そうだ!!」
私は1番最初にこの時代にやってきた扉がある公園へ向かうことにした。
もしかしたら何かヒントがあるかもしれない!!
しばらく走ってようやく扉がある公園にたどり着いた。
「え.....えぇっ!!??」
公園に着くとこの時代に来た時に消えたはずの扉が現れていたのだ。
ま、まさか帰れる??
私は扉に近づいて触れると突然光出した。そしてそのまま、扉が徐々に開き私はその光の中へと吸い込まれたのだ。
<続く>




