第10話 勧誘
「彼はこういう性格をしていますが正真正銘の校長先生です。満とは時環アカデミーに通っていた時の同期なんです」
「は、はぁ......」
すると校長先生は「立ち話もなんだし座って座って!」と言い、私たちは向かい合う形でソファーに座った。
「そ、それで私に話ってなんでしょうか?」
私は恐る恐る聞いてみる。ただし、恐怖感は感じない。校長先生があんな性格だから。
「実は人生本をハッピーエンドにしたってモニターに出ているのに報告書が届かないって政府から僕に連絡が来てさぁ〜、写真付きの書類が送られて来たんだけど見覚えが全くない子だっただよねぇ〜。
だから僕の秘書に頼んで調べてもらったんだけどなんとビックリ!その子はウチの生徒でもなくこの時代の人間でもなかったわけ。そこでエンドガーディアンに必要な能力パラメータを見たら時環アカデミーの入学基準に達してるじゃん!だったら早くウチに入学させよう!!ってことになったんだよねぇ〜!キミを」
すごく大切な話をしているのに校長先生の性格が変だからそれほど重要に感じなかった。
「校長先生は私が入学基準に達していて、ハッピーエンドにできたからここに入学してほしいってことですか?」
「そういうこと!って言いたいけどもう2つ理由があるんだ〜!」
私は「ん?」と首を傾げた。
「1つ目は、終書顕現なしで元の時代に帰ってきたこと!!説明は面倒だから誠司に聞いてね!!」
「終書顕現??」
「エンドガーディアンが人生本をハッピーエンドにするとその人の人生本が現れます。その本を扉にはめることで元の時代に帰ってこれます。本を扉にはめて元の時代へ帰る.....このことを終書顕現と言ってエンドガーディアンは終書顕現なしでは元の時代へは帰れません」
「え?でも私の時は本なんて出てこなかったけど....」
「そこなんです。終書顕現なしで元の時代に帰って来た人は我が校でも20人もいません」
「そんなに少ないの!?」
私は目を見開いた。ここの全校生徒は200人。そのうち20人もいない....けれどその1人に真日奈は入っているのだ。
「本が現れない時の理由として多くはハッピーエンドにできなかったということです。ですが真日奈さんの場合は本が出現しなかったにも関わらず、ハッピーエンドにしており、尚且つ元の時代へと帰って来ています」
「そんなことできる人は今のこの学校でもそうそういないし?キミが入ってくれたら超ハッピー!になっちゃう!!」
「な、なるほど....」
私は意外にも、すごいことをやり遂げていたようだ。
「そして2つ目!!それはもしかしたらキミが予言に出てくる1人かもしれないからです!!」
「校長先生大丈夫ですか??」
校長先生があまりにもおかしいことを言うので私はどこかに頭をぶつけたのかと思い、校長先生に聞く。
だって予言?みたいなよくわからないこと言い始めたし.....昨日悪いものでも食べたのかな?
「満のことは心配するだけ無駄なのでやめた方がいいですよ」
さすが同期。校長先生の扱いに慣れてる人は違うなぁ〜。(※扱いが雑なだけです)
「それで予言って?」
私はあんまり信じてないけど聞くだけ聞いてみようと思い尋ねる。
「今から5000年前、当時研究者だった水谷教授が
“5000年の時を経て、破滅の危機に直面するべし。危機を乗り越えられるのは5人の異人のみ”
という予言を残しているのです」
「もっちろん、当時は誰1人として信じてなかったし今だって信じてない人は大勢いるんだよ〜。
......だけど予言の時が近づくに連れて“人生本”が出現し始めた」
今や人生本が出現する確率は100人に1人だという。その影響で心が壊れて亡くなる人が増加し、人口は減り続けている一方だという。
「このまま人口が減り続ければ、約1000年後には人類が滅びるというデータがあると政府が発表しました」
「そしていつの間にか予言が本当だったのでは?という噂が広がり始めたんだよねぇ〜。研究者が言うには、
“人生本の出現” “人類が滅びる可能性”
この2つが予言の時期とピッタリ合うんだって。ただの偶然っていう人もいるけど偶然にしてはあまりにもできすぎている.......って思っちゃうんだよ〜!」
私は話の壮大さを知り、更に混乱する。そろそろ頭がパンクしそうだ。予言.....果たして本当なのだろうか?予言の真偽については分からないとのこと。
「でも所詮は予言ですよね??それに5人の異人としか言ってないじゃないですか。きっと私じゃないですよ」
「それがそうとも言い切れないんだよ〜もう牛になりそうだよねぇ〜」
校長先生の冗談は放っておき、北本が私の隣で説明をしてくれた。
「この予言については多くの研究者が長年にわたり研究を続けてきましたが“5人の異人について”だけがどうしても分からなかったようです」
「そこで秘密裏に政府は研究者1人を水谷教授が生きていた時代に送っちゃったんだよ!!」
ん〜話についていけないかも!!
困り果てた政府は本当はやってはいけないことをこっそりとやったらしい。
「その研究者が帰ってきてすぐに内容を聞いたそうです。ですが水谷教授に
“1人の少女が別の時代から来る。真相はその時に分かるであろう”
と言われ帰されたそうです」
「もしかしてその別の時代からやって来る少女が私ってことですか?」
「そうかもしれないなぁ〜って思ってるんだけど.....何も知らないもんね〜?」
私は頷いた。
そもそもエンドガーディアンも知らなかったし、西暦3500年の未来だってことすら知らなかったのに予言についてなんて知ってるわけないじゃん!!
「やっぱり予言は嘘なんじゃないですか?そんなことは気にしない方がいいですよ」
私は笑って言った。予言は予言だ。そういうのは私の世界でもいくつか聞いたことあるけど所詮は嘘。だから今を見る方が断然いい!
「嘘....ねぇ?」
校長先生はソファーに腕を置いて頬杖をついた。その時の校長先生は笑っていたけどどこか恐怖を感じた。
「確かに嘘だって言う人がほとんどですし無理もありません。それに真日奈さんがその1人だっていう証拠もありませんし決めつけるのは良くないですよね」
「そうですよ!!予言の話は終わりにして入学についての話を____」
《お話がありますマスター》
突然、今まで聞いてるだけだったクロノアが話し始めた。
「今喋ったのは噂の旧型のクロノリング!?え〜ちょーやば!!」
「満、次うるさくしたり話を遮るようであれば私は真日奈さんを連れて帰ります」
「ごめんごめんって!!」
どっちが校長先生なんだろう??
そう思っても不思議じゃないやりとりだった。ひとまず校長先生が大人しくなったのでクロノアの話を聞く。
「話って何?クロノア?」
《水谷教授の予言は本当です》
「え??何言ってるのクロノア?」
《水谷教授の予言は100%本当です。このままでは確実に人類は滅びると推測します》
「クロノアだっけ?どうして予言が本当だと言い切れる?」
さっきとは全く別人ではないかと思うくらい真剣な表情で校長先生が問いかけた。
《それは私が水谷教授に作られたAIだからです》
「え、えぇぇぇ!!!!???」
その場にいた3人は同じタイミングで驚いた。(※1番オーバーリアクションで驚いていたのはマスターです)
<続く>




