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和菓子、異世界に上陸する


えーっと、荷物荷物はどこだっけ。)


私は転移したときに持っていた荷物を取りに、ギルドに戻ってきていた。


あった!

 荷物の中には和菓子の材料となる白インゲン豆(白あんの材料)、小豆、葛粉、黒蜜、食用色素赤が入っている。


 砂糖も買っていればよかったのだが、家に買いだめしていたためここには無い…


(買っとけばよかったな〜)


 ギルドの職員に仕事が見つかったことと、今までのお礼を言ってフェルシモに向かった。


 今ある材料で作れるのは簡単な練り切りかくずきりのどちらかだ。


(あんこを食べ慣れていない人にはくずきりのほうがいいかな…)


「タリアさん、荷物取ってきました!」


「二階の突き当りの部屋がさくらの部屋だよ。」


「ありがとうございます!」


 その日のパンが全て売れたあとタリアさんに家を案内してもらった。

 パン屋フェルシモは大通りを一つそれた道沿いにあるお店で、

一階がパンを売るカウンターと厨房、二階が生活スペースになっている。


「二階の左奥が物置、こっちが私達の部屋さ。子供らの部屋がここ。トイレが右手の扉を開けたところさ。」


 どうやらこの世界のトイレはボットン式で下の方にスライムが住んでいるらしい。


「二階はこんな感じになってるよ。」



 そうしているとドタドタと足音がしてネイアスくんが階段を駆け上がって来た。


「サクラ〜、早くお菓子作ってよ。」


「こら、ネイアス」


「大丈夫ですよ。ネイアスくんも楽しみにしてくれているみたいなので作ってもいいですか?」


「お願いしてもいいかい?」


 私の前を上機嫌に歩いていくネイアスくんに連れられて私達は厨房へと向かった。



「なあなあサクラ、どんなお菓子を作るんだ?」


「それは作ってからのお楽しみだよ。」


「え〜、教えてくれてもいいじゃんか

ケチ。」


 ネイアスくんを驚かせるために何を作るかは秘密にしておくことにした。


「その粉を使うのか?」


「そうだよ〜。」



荷物から葛粉と黒蜜を出して準備をする。

 まず鍋でお湯をわかしておく、葛粉と水を混ぜ粉の塊をほぐしていく。

 粉の塊が全てなくなると、鍋に型となる四角い容器を入れさっき作った葛粉の水を入れる。

 このとき粉が容器の底に溜まらないよう少しかき混ぜるのがポイントだ。

 半透明に固まってきたら容器を沈めお湯に全体をつける。

 透明になったら取り出し、今度は水につけて冷やす。

あとは細く切って黒蜜をかけたら完成だ!


「すげぇ〜!固まった!?」


「くずきりのいいところは簡単に作れるところなんだよ。」


ネイアスくんにタリアさんとリードさんを呼んでもらいみんなで食べてもらう。


「サクラ、もう出来たのかい?」


「この透明なのはなんだ?」


「私の故郷のくずきりというお菓子です。この黒蜜をかけていただくと美味しいですよ。」


みんな食べる前にしげしげとくずきりを見ている。


「ここには、ビスケットやタルトみたいなお菓子はあるけどこんなお菓子は見たことがないね。」


「早く食べようぜ!」


みんなでお皿にくずきりを入れ、お箸の代わりにフォークで食べることにした。


「いただきます!」


「なんだそれ?」


「ご飯を食べる前の挨拶みたいなものだよ。」


「変わった挨拶だな。」


 そんなことを言いながらくずきりを食べる。

 つるりとした食感に黒蜜の落ち着いた甘みが合わさりとても美味しい。


「こんなお菓子は食べたことがないな!食感がとてもいい。」


「すっげぇー!このかかってる黒蜜ってやつ美味しいな!」


「サクラが故郷から持ってきた食材で作ったのかい? 似たような食材があればパンと黒蜜を合わせてもいいね。」


 リードさんとネイアスくんはくずきりに舌鼓を打っていた。

 タリアさんは黒蜜がパン作りに活かせないか考えている。

 3人とも目を輝かせて食べてくれていたからよかった。


「確か、黒蜜は砂糖を煮詰めれば作れますよ。」


「生地に混ぜ込んだら美味しそうだな。」


「そんなに簡単に作れるものなんだね。」


「はい、くずきりも材料の植物を見つければ作れますよ。」


 くずきりは葛という植物の根をデンプンが多く含まれる冬に収穫して作る葛粉からできている。

 ただ、この世界には葛はないと思うから他の代わりになる植物を探さなくてはならない。

(葛は確かマメ科の植物だったから、豆をつける植物を探せばいいのかな…)


「サクラ、この黒蜜を使ったパンを売ってもいいかい?」


「いいですよ。タリアさんにはお世話になるので。」


 そうして、和菓子とこの世界のパンが合わさったパンが作られることとなった。

 おそらく黒糖パンのような味のパンになるはずだ。

 この店のパンには果物の入ったパンか砂糖をふりかけたパンしかなかったので楽しみだ。


「明日からパンを作る前に黒蜜の仕込みをお願いするよ。」


「はい! 他にも作ってみたい和菓子があるのでもし新しいパンが作れそうなら作ってみたいです!」


「あと、和菓子の材料になりそうな食材を探したいんですがどこかいいお店はありませんか?」


「それだったら、市場に行ってみたらどうだい?

あそこなら周りの国から来た行商人や森で収穫された食材を売りに来てる店がいっぱいあるよ。」


「ありがとうございます!行ってみますね。」


 無事くずきりを食べ終え食材を探すあてもついたところでパンの作り方を教えてもらうことになった。


「ほら、サクラこれを全部混ぜて捏ねるんだよ。」


「ふぎぎぎぎぎ…かっ固い…。」


 おおよそ女子高校生から出てはいけない声を出しながらパン生地をこねていく。


「これが終わったら発酵させるから少し休憩だよ。」


「頑張りますっ…。」


 タリアさんは慣れているのか軽々と生地を捏ねている。


 そんなこんなでパンの生地を作り、焼いたら完成だ。


 余っていた黒蜜を生地に混ぜ込んで焼いたパンは初めて作ったこともあり、香ばしい香りのまろやかな甘みがするとても美味しいパンになった。



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