22.その頃の王都
今年最後の更新となります。
たくさんの作品の中から、拙作を読んでくださり本当にありがとうございました。
お話はまだ続きますので、来年度もどうぞよろしくお願いします!
聖女候補たちの見極め期間は、三ヶ月設けられていた。そして、その期間は終わり、最終決定をするために、連日関係者が揃って審議を進めている。
関係者とは、クラーク王、王妃であり聖女のエリアナ、大神官、そして王太子コンラッドである。コンラッドは、自らの妃を決めるということもあり、審議に参加していた。
「やはり、爵位からいって、アシュトン侯爵令嬢が妥当では?」
「いや、二人の魔力量はさほど変わらぬ。より聖女の資質のある方が良い」
「資質を考えてみても、お二人の力は拮抗しておりますわ」
「ならば、コンラッドの好みでいいのではないか?」
「恐れながら、そういった観点で聖女を決めるというのは……」
べリンダとカレン、どちらを選ぶのか。
関係者たちはずっと迷っている。話し合いは堂々巡りとなっていた。
というのも、どちらを選んでも一長一短、もしくは、どちらを選ぼうが同じこと。魔力量もほぼ同等であるし、今後の伸びしろも同等と思われる。
資質も、二人ともまだまだといったところだ。二人とも、王太子妃という地位ばかりを気にしていて、国を護るという覚悟には欠けているように思われる。
「筆頭であったターナー男爵令嬢が、やはり適任だったのでは……」
大神官の言葉に、王は眉を顰めた。
そんなことはわかっているのだ。聖獣がシェリルに懐いている時点で、彼女を聖女にすることが最適解だった。だが、最も厄介な邪魔が入ったのだ。
「まさか、帝国皇子がターナー男爵令嬢を見初めるとはな」
こんなことなら、聖獣が生まれた時点ですぐさま彼女を聖女と認定し、コンラッドの婚約者に据えるべきだった。
王は悔しげに大きく息を吐き出す。大神官も、悩ましい溜息を漏らした。
この中で涼しい顔をしているのは、聖女と王太子である。
「コンラッド、お前はどうするつもりなのだ。聖女をみすみす帝国へやるつもりか?」
コンラッドは肩を竦め、淡々と答える。
「やるとかやらないとかではありません。そもそも、本来聖女とは、ゴード神が現世に遣わした乙女、どの国のものでもない。独占すべき存在ではないのです」
「だが、あの令嬢と帝国皇子が結婚すれば、本来の聖女……いや、本物の、というべきか。それは、帝国のものとなってしまうではないか」
コンラッドは、王と大神官にはすでに聖女の真実について話している。
二人はなかなか納得しなかったが、エリアナも踏まえての説明に、不承不承飲み込んだ、というところか。
「いいえ。ネイトはそうしません」
「どういうことだ?」
王と大神官が、訝しげな顔でこちらを見る。しかし、コンラッドは相変わらず飄々としていた。
「それはまだ言えません。ネイトが慎重に事を進めている最中ですので。ただ、シェリル嬢を帝国が独占することはありません。それだけは確かです」
「本当なのでしょうか? 帝国は聖女を手に入れ、我が国も属国にしようとしているのでは?」
憂い顔の大神官に、コンラッドは笑ってみせる。
「ありえないな。もしそんなことになったら、私は全ての責を負い、王太子の座を降りよう」
「コンラッド殿下!」
驚愕する大神官を気の毒に思ってか、聖女が口を挟む。
「コンラッド、あなたの覚悟はわかりますが、そんなことを軽々しく口にするものではありません」
「エリアナの言うとおりだ。だが、そこまで言うのなら、とりあえずは静観するしかあるまいな」
どちらにせよ、シェリルをクラーク王国の聖女に据えることは、現状無理なのだ。
「あの皇子は、ターナー男爵令嬢が聖女だとわかっていたのでしょうか?」
彼は、聖女について興味があり、詳細を知るためにクラーク王国へ来たという。そこで彼女と出会い、何らかの方法で聖女であることを知って、彼女を──。
しかし、大神官のそんな考えは、聖女によって一刀両断にされる。
「ネイト殿下がシェリルさんを見初めたのは、そんな理由ではないと思いますわ。シェリルさんが聖女ではないかと思われた理由を思い出してください。きっかけは、ネイト殿下が漆黒の卵を見つけたことです。そこから生まれたのは聖獣でした。卵を孵したのはシェリルさん。だから私たちは、彼女が聖女であろうと考えましたが、ネイト殿下はそれ以前からシェリルさんを気に入っていたようです。コンラッド、そうですね?」
「そのとおりです」
大神官はぐうの音も出ない。
「彼が卵を見つけたというのも、何やら作られたような話だな」
「しかし、それが現実です。どう検証しても、何者かが故意にそうしたとは考えられませんし、人の力でどうこうはできなかった。彼があの卵を見つけたのは、いわば運命でしょう。ゴード神のご意思ともいえます」
ゴード神の意思。そう言われてしまうと、誰も何も言えない。そして、コンラッドのこの主張に、反論できる要素はどこにもなかった。
「ならば、アシュトン侯爵令嬢とピアース伯爵令嬢、どちらを我が国の聖女とするのだ?」
そして、話は最初に立ち戻る。
「どちらが選ばれてもさほど変わりがないのなら、この際コンラッドに選ばせるということで良いのではないか?」
王の言葉に、渋々ながら大神官が頷く。聖女も賛意を示した。かくして、聖女の選定はコンラッドに委ねられる。
コンラッドが選んだのは──
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