20-3.王家の対立(3)
「母上、本当によろしかったのですか?」
王との謁見が終わり、王太子の執務室には、この部屋の主であるコンラッド、そして王妃エリアナがいた。二人は王に呼び出され、長時間に及ぶ話し合いの末、ここへ戻ってきたのである。
「いいも悪いもないわ。この世界はゴード神によって作られたもの。その世界に住む私たちは、ゴード神の意に背くことはできません。彼女は私とは違い、ゴード神がこの世に遣わされた本物の聖女なのだから、意に沿わない婚姻など結ぶわけにはいかないわ」
コンラッドが聖女について興味を持ち調べ始めた時、エリアナは自らが持つ情報を、余すところなく息子に伝えた。
彼は、彼女の話、そしてクラーク王国が所有する聖女についての書物を読み漁り、知識を深めていく。
その後、ある仮説を立てるのだが、そのきっかけとなったのが、ネイトとの出会いだった。
オルグレン帝国の学園に二年ほど留学していた際、同じ学園で学んでいた皇族のネイトは、クラーク王国の王族であるコンラッドをもてなす立場でもあり、彼らは一緒にいることが多かった。自然と、互いについて話し合う機会も増える。
ネイトと話をするのは、コンラッドにとって楽しみの一つだった。彼の話は興味深く、話題も尽きない。馬が合ったこともあり、深い話をするまでにそれほど時間は要しなかった。その話が、聖女についてだ。
ネイトも聖女について興味を持っており、彼なりにいろいろ調べていた。帝国には王国にはない文献も数多くあり、一般閲覧できないものも、ネイトの権限で見せてもらえた。
二人は何度も議論を交わし、そして、真実であろうことに辿り着く。
『聖女は、大陸に存在する大きな瘴気溜まり(瘴気の森)近辺に遣わされ、その場所は、現在のクラーク王国ターナー領であり、クラーク王国にだけ聖女が生まれるという説は間違っている』
『聖女は、ゴード神の使いである聖獣を従えている』
『聖女は、大陸の広範囲に渡って魔を退けることができる』
これらを考え合わせると、何代にも渡って継がれてきた聖女たちは、皆本物ではない、という結論になる。
ここ何代かを遡ってみても、大陸の広範囲を護ることのできた聖女などいない。クラーク王国内を護るだけで精一杯だ。
つまり、彼女たちは生まれつき多くの魔力量を持って生まれてきたがためにクラーク王家に取り込まれ、国のために尽くすことを強要されてきたということ。
もちろん、対価はある。それが「王妃」という地位だ。女性として頂点に君臨し、生家も富と名誉を享受する。
貴族たちは、こぞって魔力量を多く持つ女児を求めた。条件を満たしていれば、元平民の身分でさえ関係ない。そういった子どもが生まれなければ、養子を取ってでも、という家は多かった。
王妃として嫁いできた娘は、聖女として、王族としての仕事より国に結界を張り、魔物から国を護ることに専念する。
どの範囲まで護れるかは、個々の魔力量によって左右される。クラーク王国全土を護ることのできた聖女もいれば、そうでない聖女もいる。そうでない聖女の方が圧倒的に多かった。
小国とはいえ、一国を護れるほどの魔力量とは凄まじいものだ。どれほど修行を積んだとしても、生まれつきの魔力量も相当でなければ、難しいことだった。そして、そのような女児など、そうそう生まれるわけではない。
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