12-2.きゅいの主張(2)
神殿に戻った後、シェリルは大神官や聖女にきゅいが見つかったこと、そして、きゅいの願いについて伝える。
「きゅきゅきゅ~~うっ! きゅいっ! きゅうきゅっ!」
「本当に、聖獣様はターナー領へ行くことを望まれているのですか?」
不信感を露わにする大神官に、シェリルは冷や汗をかく。シェリルと同じように額を合わせても、大神官にはきゅいの言葉が伝わらなかったのだ。
「聖獣様、私にもお声を聞かせていただけますか?」
今度は聖女が挑戦する。きゅいは自分から額をぴたりと当てた。
先ほど大神官と額を合わせたのだが、きゅいは嫌がる素振りを見せた。それとはえらい違いだ。
「きゅいぃっ!」
「こいつ……男と女で態度違いすぎだろ」
ネイトが悪態をつく。実は、ネイトも少々嫌がられた。しかし、ネイトにはきゅいの声がちゃんと人語として伝わった。
『おでこコツンするの、しぇりるのほうがいい』
「うるさいっ! 俺だってそうだよ!」
「ネイト様? きゅいはなんて?」
「こいつは間違いなく男だ! しかも我儘!」
なんていう会話を繰り広げたくらいだ。
「きゅきゅきゅーうっ! きゅいきゅいっ、きゅううううっ!」
「まぁ……そうなのですね」
どうやら、聖女にもきゅいの言葉が理解できたらしい。大神官が目をむいている。
「聖女様! 聖女様は聖獣様のお言葉がおわかりに?」
聖女は静かに頷き、シェリルに向き直った。
「シェリルさんの言うとおり、聖獣様はシェリルさんとターナー領へ帰ることをお望みですね」
「そうなんです……」
「なんですと! しかしそれは……」
大神官の言葉を手を制し、聖女は決意したように告げる。
「聖獣様の望みを叶えて差し上げるのが私たちの務めです。すぐに陛下に相談しなくては。大神官、あなたも一緒に来てください」
「か、かしこまりました」
聖女は大神官を連れて、王宮へ行ってしまった。
後に残されたシェリルたちは、神官長や他の神官、そしてベリンダとカレンの疑いの眼に晒される。
(聖女様が私の言うことを正しいと認めてくださったのに、どうして皆そんな目でこっちを見るのよ!)
「きゅう?」
きゅいがシェリルを見上げる。シェリルはきゅいを抱き上げた。
(いたたまれないわ。部屋に戻りましょう)
そう思って歩き出した時、ベリンダとカレンに行く手を阻まれる。
「ベリンダ様にカレン様、ここを通していただけますか」
すると、ベリンダがきゅいを指差し、こう言った。
「私にもやらせなさい」
「え?」
「聖女様が聖獣様の声を聞くことができたなら、私にもできるはずですわ」
なんと、ベリンダもきゅいと額を合わせ、言葉を聞きたいと言い出す。それはカレンもだ。
聖女候補なのだから、自分たちにも当然聞こえるはずだという主張である。聖女は聞くことができたのだし、聖女候補から外れたシェリルにだって聞けるのだから、と自信満々だ。
「おいおい、これで聞こえなかったらどうするつもりだ?」
「私たちは聖女候補です。聖獣様のお声を聞く権利があるはずですわ」
食ってかかる勢いの二人に、ネイトは両手を挙げる。降参、もしくは勝手にしろ、という意思表示だ。
「シェリル、さぁ、聖獣様をこちらに寄越しなさい」
「ぎゅっ!」
きゅいはシェリルにしがみつく。
こうなることは予想していたが、このまま何もせずにこの場を立ち去ると後々面倒だ。シェリルは小さく溜息をつき、きゅいを宥めた。
「きゅい、ベリンダ様とカレン様にも声を聞かせて差し上げて」
「ぎゅう……」
不服そうな声をあげるが、きゅいが二人の方を向く。




