表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/17

道はつながっている

 今日は、久しぶりに東京に行く新幹線に乗っている。

 流れゆく景色を見ながら、見たことのある景色だと安心している。

 だが、そうではない景色もちらほらあった。

 二か月ほど前、日本が大きく揺れた。

 東日本大震災である。

 日本は混乱し、物流は寸断された。

 あの絶望的な日を迎え、これからどうなるのだろうと思っていた。

 だんだんとライフラインが復旧していくが、物流が回復しないことが、私の心の隅に暗い影を落としていた。

 震災が起きてからは、ほぼ仕事と買い物しかできず、近所をぐるぐると回ることしかできなかった。

 津波もなく、家も無事だったので幸運だったと言えるが、旅行が好きだった私の心には、もやもやとたまるものが出てきていた。

 そんな中、訪れた知らせが新幹線の開通だった。

 東北新幹線も、壊滅的な打撃を受けた。

 ニュースの写真で見て、これはしばらく復旧しなさそうだと絶望的な気持ちになっていた。

 だが、わずか四十九日で新幹線は全線開通となった。

 私たちの状況も、ライフラインが復旧し、家が無事だった私は、物流以外はわりと元の生活に戻りつつあったので、私は仕事が休みの日にさっそく新幹線の切符をとった。

 行動を起こしたのは、ほとんど無意識だった。

 それからは、その日を今か今かと楽しみに過ごしていた。

 少し気もそぞろになっていたことは否めないだろう。

 そして、今日を迎えた。

 特に目的はない。計画もしていない。行き当たりばったりだ。

 気分転換を兼ねて、東京観光をしようと思う。

 東京の方も、計画停電などで大変そうだが、交通が止まっているわけではないし、気をつけていけば何とかなるだろう。

 何もかもが変わってしまったが、新幹線から見える車窓の景色は、昔見た面影を残してくれていた。

 それだけで、涙が出そうだった。

 何もかも変わったが、変わらないものもあった。

 この新幹線に乗って、感じることができた。

 また、私たちの生活は取り戻せると。

 実際、今確実に取り戻しつつある。

 そうでない場所も、また築くことができるはずだ。

 胸が熱くなり、視界がわずかに潤んだ。

※ ありがとう、新幹線。

 あなたが今までつないでくれていたこと、そして今つないでくれていること、私はずっと忘れない。

 私は、ゆったりと背もたれに預け、目を閉じた。

 かすかな新幹線の走行音と揺れを感じる。

 新幹線はこれからも、力強くレールを駆け抜けていくのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ