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『おなごが困っていたら助けなさい』という祖父ちゃんの遺言を守って助けまくったら大変なことになった  作者: マノイ
閑話(夏休み編)

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閑話 大変なことになった(勉強会編)

2話目の前書きで申し訳ないですが、この閑話の章も通常と同じ6話構成です。

 今年の夏休みは予定がぎっしりと埋まっている。


 それも全てが女の子達との予定だ。


 女の子との縁が全くなかった僕が、まさかこんなにもリア充な夏休みを迎えることになるなんて。


 ここからはそんなリア充生活をほんの少しだけ紹介しようと思う。


 最初のテーマは勉強会。


 夏休みが開始して間もなく、宿題は先に済ませる組が集まることになっていた。


 その場所は僕の家・・・だ。




「お、おじゃまします!」

「オッス、よろしくな!」


 その日、僕の家にやってきたのは関さんと会長の二人。


 関さんはツバが広めの円形の帽子をかぶりピンク色のワンピースに薄手のカーディガンを羽織っている。

 どこぞの令嬢かと思える清楚な雰囲気が漂っているが、恐らくは日焼け防止を考慮した出で立ちを選んだら自然とそうなったのだろう。


 一方で会長はむしろ日焼けを歓迎しているかのような露出の多さ。

 派手めな赤い色合いのトップスは半袖どころか肩まで露出しているタイプのもので、ボトムスもデニムのショートパンツと攻めた格好だ。

 手足がスラっと長いからか露出が多くても色気より格好良さの方が強く感じられるコーデだ。


「チッ、本当に来たんだ」


 はぁ、美来にも二人を見習って欲しいよ。

 いくら家の中だとは言え、下着かと思えるほどの薄着でしかもずっとゴロゴロしているからしわくちゃだ。

 年頃の女の子としてどうかと思うよ。


「いらっしゃい、二人とも。あがってあがって」


 二人は緊張している様子だけれども当然だ。

 同年代の男性の家に来るのだから。

 僕が逆の立場だったらもちろんガチガチになるほど緊張するもん。


 二人を居間に案内した僕は、飲み物を準備するためにキッチンへ向かおうとした。


「それじゃあここで待っ」

「椙山君の部屋が良い」


 でもそれは遮られて、関さんに僕の部屋を所望されてしまった。


「オレも!オレも!」


 会長もだ。


 う~んどうしよう。


 会長にぬいぐるみを見せたかったし、後で案内するつもりだったけれど先の方が良いのかな。


 それとも勉強会を僕の部屋でやるべきなのか。


 みんなで勉強するには大きな机がある広い居間の方がやりやすいと思ったんだけどなぁ。


「絶対ダメ!」


 いやいや、なんで美来が拒否するの。


 美来の部屋じゃなくて僕の部屋なんだよ。


「それじゃあ案内するね」

「やった!」

「よっしゃ!」

「えー!」


 美来の抗議はスルーしよう。


 というかむしろ美来が僕の部屋に来すぎなんだよ。


 夏休み中ほとんど入り浸ってるでしょ。


「恥ずかしいからあんまりジロジロ見ないでね。あ、ぬいぐるみは自由に触って良いから」


 人生ではじめて家族とあの子・・・以外の女の子を僕の部屋に入れる瞬間。


 少し気恥ずかしくてドキドキする。


「ここが椙山君のお部屋……」

「ぬいぐるみがすげぇある!」


 床に座布団の類を用意して勉強用の簡易机をセットしたら、今度こそ飲み物を取りにキッチンへと向かった。


「それじゃあ適当なところに座って寛いでてね」


 今日も暑いから麦茶が良いかな。


 人数分の麦茶を入れて僕は部屋に戻った。


「あはぁん、超可愛い。これも可愛い。これも可愛い。こまっちゃ~う!」


 うん、知ってた。


 会長は暴走するだろうなって。

 ぬいぐるみの話をしている時の目がかなり怪しかったからね。

 ここまでだとは思わなかったけれど。


 問題はもう一人、というか二人の方だ。


「おーりーろー!」

「あなたこそ!」

「これは美来のだもん!」

「あなたはいつでもチャンスがあるでしょ!」

「……」


 僕のベッドの上でゴロゴロと転がりながら枕を奪い合っているんだけれど、これはきっと悪い夢に違いない。


「よその女の香りなんて絶対につけさせない!」

「あなたこそどうせ椙山君が見てない間に匂いをつけてるんでしょ」

「当たり前じゃない、妹だもん」

「今すぐ洗濯するわ!」


 匂いつけてるって一体何してるのさ。


 今度から枕カバーは寝る前に交換しておかないとダメかもしれない。


「お前らいい加減にしろ!」


 酷い有様だったので僕が怒ろうかと思っていたら先を越されてしまった。


「ミカンちゃんとリンゴちゃんが床に落ちちゃっただろうが!」


 あの、僕のぬいぐるみに名前を勝手につけるの止めて貰えませんかね。

 会長が果物の名前を付けるタイプってのは分かったけどさ。


「会長だってベッド狙ってるくせに!」

「そうですよ。それ持って潜り込むつもりですよね!」

「当たり前だろ。こんな桃源郷を見せられて我慢できるか!」


 我慢できないのは僕の方だよ。


「みんな、何してるのかな」

「ヒエッ」

「ヒエッ」

「ヒエッ」


 女の子には滅多にやらないんだけどね。

 流石においたが過ぎるからちょっとだけお怒りの空気を味わってもらった。




「う~ん、分からん」


 最初こそ大騒ぎになったものの、勉強会は普通に始まった。


 真面目な関さんと会長だからだろうか、問題を解くのに集中していた。


 この後、他の女の子達とも勉強会をする予定があるのだけれど、その時は絶対にこうはならないという確信があり今から頭が痛い。


 いやいや、今はそれを考えずに目の前の課題に集中しなくちゃ。


「なぁ、確かキミ達は優秀な成績だったよな。悪いけど、この問題教えてくれないか」

「いやいや、流石に三年生の内容は分かりませんよ」

「そうでもないさ。これって多分君達が最近習った範囲の問題だからださ。お恥ずかしい話なんだが、この辺りが苦手なんだよ」

「それでしたら……」


 一見してかなり難しい問題だったけれど、良く考えると確かに最近習った公式を使えば解けるかもしれない。


「関さんも見て貰って良い?」

「もちろん」


 こういうのいいな。

 みんなで協力して一つの難問を解くのって凄い楽しい。


「おにいちゃん、ここ教えて」

「それなら私が教えるわ」

「うん、それじゃお願いします」

「驚いた。てっきり嫌がるかと思ったのに」


 普段の美来の対応から考えるに、僕以外からは教わりたくないって言いそうだよね。


 僕だって美来の態度が今のままで良いとは思わない。


 僕に甘えることを優先して特に勉強を疎かにすることだけはあってはならないんだ。


 だから僕は勉強に関しては心を鬼にしてちょっとだけ厳しく接している。


 その結果、勉強している時だけはふざけなくなったんだ。


「むしろ二人の方が集中出来ないかと思ってた」

「私の場合は一緒に勉強できるのが幸せだから、他の事は今は・・あまり気にならないかな」

「オレは必死で我慢してる。だってせっかく優秀な二人に教わるチャンスだからな。ここを逃すのは流石に馬鹿だろう」


 いい、いいよ、こういうので良いんだよ。

 美来も普通にみんなとお話しできるじゃないか。

 こういうまったりとした空気こそが、最近の僕が望んでいた物だったんだ。


「会長は今年受験ですけど調子はどうですか?」

「それが微妙なB判定なんだよ」

「Bなら良さそうですけど」

「そうでもないさ。Aなら安心、Cなら頑張らなきゃ、D以下なら凄く頑張らなきゃか諦めなきゃ。Bって安心も出来ないし頑張りすぎる必要も無さそうだし微妙じゃね?」

「あ~言わんとすることは分かる気がします」


 勉強には終わりが無いからね。

 どのくらい頑張れば良いのかっていう目安がある方がやりやすい。


 確かにBだとどこまで一生懸命になれば良いのか分かり辛いかもしれない。


「次の模試でA判定になるように、キミたちに教えてもらうさ。ということで、こっちの問題も良いか?」

「はい、見せて下さい」


 僕と関さんと妹は夏休みの宿題だけだけれど、会長は受験勉強も兼ねているようだ。

 学校での騒ぎで色々とお世話になっているから、その恩をしっかりと返さないとね。


「おにいちゃん疲れた」


 気付いたら勉強を開始してから二時間近く経っていた。

 そろそろ休憩をしようか。


「それじゃあ準備して来るからちょっと待っててね」

「わーい」

「?」

「?」


 勉強会とはいえ女の子達がせっかく来るんだからもてなしたいと思ってクッキーを作った。


「これは!?」

「まさかキミの手作りなのかい?」

「わーい」

「紅茶も用意してありますのでよろしかったらどうぞ」


 僕はコーヒーも好きだけれど、個人的にはクッキーには紅茶が好きだ。


 もちろん淹れ方もこだわっている。


「ふわぁ、美味しい」

「この紅茶とすげぇ合うな」

「もぐもぐ、もぐもぐ」


 お口にあったようで何よりだ。

 今日は会長が分からない問題を多く解いたんだけれど、どれもかなり難しい問題だったから脳みそフル回転だった。

 だからだろうか、甘いクッキーがとても美味しく感じられた。


「進学なんか止めて就職したくなってきたわ」

「あはは、まさかお菓子屋さんとかですか?」

「いや、ここ」

「え?」

「永久就職」

「え?」

「ダメですよ会長。それは私が狙ってるんですから」

「え?」

「家族の反対により却下です」

「え?」


 まったく、冗談が上手いんだから。

 心地良い空気がいつもの不穏な感じに塗り替わりそうになっているけれど、きっと気のせいだ。


「就職と言えば、会長は将来何になりたいって決めてあるんですか?」

「お嫁さん」

「……ああ、冗談ですか。真顔で言わないで下さいよ。それに将来的に結婚するにしてもそれとは別いやりたいことってあるんじゃないですか?」

「冗談じゃないんだが……まぁ、あるにはあるな」


 おお、あるんだ。

 羨ましいな。


 僕はまだ何になりたいか分かって無いから。


 それにしても会長がなりたい職業か。

 なんだろうな。

 やっぱり好きなことに関するお仕事かな。


「もしかしてぬいぐるみ作りだったりして」

「…………やっぱり変か?」

「え、本当にそうなんですか?」

「…………」


 ぬいぐるみを作ったりするなら玩具メーカーとかな。

 それとも個人で売ってみたいのかな。

 

 どっちにしろ素敵な夢だな。


「いいですね。とてもお似合いだと思いますよ」

「え?」

「いやいや、なんでそこで驚くんですか」


 ぬいぐるみを愛する者の同志として、それを仕事にしたいと思えるなんて羨ましいくらいだ。


「いや、だってオレだぜ。似合わないだろ」

「そんなことないですよ。ねぇ関さん」

「はい。先ほどあんなにぬいぐるみのことを愛でていたじゃないですか。逆にそれ以外に考えられないくらいですよ」

「そう……か。そうか、うん、ありがとう」


 もしかして『オレにはそんな可愛いのは似合わない』とか思って悩んでたのかな。

 そんなことあるわけないのに。


「ねぇ椙山君、私は何の職業が似合うかな」

「関さんは教えるのが上手いから教師が似合いそうだね」

「教師……ありがとう、参考にするわ」


 今日も会長に教える時に僕よりも関さんの説明の方が分かりやすかったしね。


「はいはーい。おにいちゃん、美来は何が似合う?」

「美来はとりあえず兄離れしないと何も出来ないでしょ」

「ぶー!なんで美来だけ!」


 相応しい職業はいくつか思いつくけれど、そもそも独り立ちが出来そうにないのが問題だ。


「美来だって」

「なぁ、妹君」

「はい?」


 またいつものように妹が甘えだすのかと思ったら、会長が割り込んで来た。


「君がいてくれて助かったよ」

「え、その、あの、そうですか」


 おお、あの妹がしどろもどろになっている。

 僕に助けを求めて目線をやられても困るよ。

 僕だって意味が分からないんだから。


「オレの夢は誰に言っても本気だと思ってもらえなくてね。『会長には勿体ない』とか『もっと相応しい職業がありますよ』なんて言われ続けて正直なところ凹んでたんだよ」


 なんて失礼なことを言うんだ。

 会長みたいな可愛らしい人にはお似合いの職業じゃないか。


「そんなオレにカレがあんなことを言ってくれたわけだ。妹君がいなかったならば、関君がいなかったならばどうなっていたことか」

「!?」

「!?」


 あの、二人とも何で僕の前に素早く移動したんですか。

 まるで会長と僕の間に壁になるような形なんだけど。


「お礼ついでで申し訳ないが、一つだけお願いがあるんだ」


 おかしいなぁ。

 将来の話を和気藹々としていたはずなのに、これから先に大騒動が待ち受けている予感がするぞ。


 会長の目がいつの間にか据わってるんだもん。


「オレを止めてくれよな!」


 ちょっと脱ごうとしないで!

 僕のベッドに飛び込まないで!


「それは絶対にダメです!」

「止める!まだ美来もやったことないのに!」


 ああ、綺麗にベッドメイクしたのにぐちゃぐちゃになっちゃう。


 今晩あのベッドで寝るの。


 彼女たちの香りが……考えるな!

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