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『おなごが困っていたら助けなさい』という祖父ちゃんの遺言を守って助けまくったら大変なことになった  作者: マノイ
同級生編

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1. おなごを守るのがおのこの役目じゃ

『おなごを守るのがおのこの役目じゃ』


 祖父ちゃんはそう言って僕に色々なこと・・・・・を教えてくれた。


 でもそれらを使う機会なんてあって欲しくない。


 だってその機会があるってことは、女の子が守られる必要があるほどの危機に瀕しているってことだから。


 女の子の困りごとの中で一番あってはならないソレが、彼女達との関係のはじまりだった。




 あれ、あそこにいるのは山瀬さんかな。


 授業が終わり街をぶらついていたら見知った顔を見つけた。

 遠くからなので顔がはっきりとは見えないけれど、鞄に『まねこねこ』の小さな人形が沢山ぶらさがっているので多分そうだと思う。


 山瀬さんは僕と同じクラスの女の子で、肩口で揃えたサラサラの黒髪がとても似合う綺麗な人だ。

 スタイルも良くて誰にでも優しくて『まねこねこ』が好きすぎるところも可愛くて男子にとても人気がある。


 その山瀬さんがカラオケボックスの前でガラの悪い男達に囲まれていた。

 男達は荒れていると評判の高校の生徒達だ。


 もしかして絡まれているのかな。

 助けに行かないと。


 山瀬さんは男達に連れられてカラオケボックスの中に入った。

 僕は慌てて後を追ってお店に入る。

 一つ一つ部屋を覗いて確認するけれど、どこにもいない。


 おかしいな。

 間違いなくこの店に入ったはずなのに。


 ふと、立ち入り禁止の看板が目に入った。


 このカラオケボックスは一階~六階まであってワンフロアが狭いタイプのお店だ。

 その六階へと向かう階段のところに立ち入り禁止の看板が置いてあったのだ。


 いくら平日とはいっても、ワンフロア丸々使わないなんてことがあるのかな。


 僕は嫌な予感がして六階へと侵入した。

 予想は大当たりだった。


 六階の廊下にはカラオケボックスの店員と男達の仲間らしき一人がいて、下卑た笑みを浮かべて談笑していたのだ。


「今日のターゲットすげぇ上玉だよな」

「順番が回って来るのが楽しみだぜ」


 恐らくは店員もグルで、奴らは見張り役なのだろう。

 山瀬さんは本当に危ない状況になっているようだ。


 僕はその場で110番に電話をかけた。


「はい、110番です。事件ですか、事故ですか?」

「事件です。女の子が悪い男に閉じ込められて暴行されそうになってます。場所は緑が丘駅の東口を出て大通りを真っすぐに進んでコンビニ『ローチョン』の脇にある細い路地を右に曲がって少し進んだところにあるカラオケボックス『カラオケの名人』の六階です。この電話を通話状態のままにして僕が突入しますので、急いで来てください」

「待っ」


 早口でかつはっきりと状況を伝えてから、僕はスピーカーをミュートにして電話を切らずにポケットに放り込んだ。

 そして堂々と彼らの前に姿を現す。


「ちょっとお客様、困りますよ。ここは立ち入り禁止です」


 僕の事に気が付いた店員が不機嫌さを隠そうともせずに止めに来た。


「山瀬さんを助けに来た」


 僕はそれだけを口にして店員を無視して横を通過した。


「チッ、待てこの!」


 正体を露わにした店員と目の前にいるもう一人の男が僕を挟み撃ちにして襲って来たのでさっと無力化・・・・・・しておいた。


「いや!止めて!」


 丁度そのタイミングで部屋の中から山瀬さんの悲鳴が聞こえてきた。


 僕は扉を蹴破った。

 わざわざ派手に突入したのは男達を驚かせて一瞬だけでも動きを止めるため。


 僕の狙い通りに男達は驚いて固まっている。

 山瀬さんはソファーの上に押し倒されて今にも男達の毒牙にかかりそうな状態だった。


 男達が正気に戻る前に僕は山瀬さんの近くに寄り、彼女を押さえていた二人の男の首根っこを片手ずつで掴んで後ろに放り投げた。


「なんだ!」

「ぐわ!」


 男達は大きな音を立てて壁にぶつかった。

 それなりに痛いだろうから、すぐに復活することは無いだろう。

 部屋の中には他にも二人男がいたが、戸惑っている様子だったのでこちらもしばらくは放置だ。


 今のうちに山瀬さんの様子を確認しないと。


「山瀬さん、大丈夫?」

「え?椙山くん?どうしてここに!?」

「山瀬さんが彼らと一緒にここに入るのを見たんだ。どう見ても山瀬さんの知り合いには見えなかったから、おせっかいかもしれないとは思ったけど様子を見に来たんだよ」

「そ、そうなんだ。ありがとう……」


 あれ、おかしいな。

 てっきり怖くて震えていると思ったんだけれど、妙に顔を赤らめて僕の方を見てくれないな。


 学校でも女の子達は僕が見つめると逸らす人が多いんだよね。

 どうしてなんだろう。


「念のため聞くけど、知り合いじゃないんだよね」

「もちろん!」

「それじゃあコレ」

「え?」


 僕は学生服の上着を脱いで山瀬さんの頭から被せた。


「しばらくこのままじっとしててね。出来れば耳を塞いでおいてね」


 何故こうしたのか。

 それは学校で山瀬さんが友達としていた話の内容を思い出したからだ。


『私は暴力で何もかも解決しようとする人は嫌いです』


 男達はどう見ても『話し合い』で解決出来る人種には見えない。

 そろそろ問答無用で襲い掛かって来るだろう。

 だから僕が彼らを返り討ちにする姿を見せて怖がらせないようにするために、山瀬さんの視界を奪った。


「す、すす、椙山くんの香りが……はぁん」


 あれ、今なにか山瀬さんが奇妙なことを言ったような。


「てめぇ!ぶっ殺してやる!」


 おっと、どうやら時間切れみたいだ。

 最初に吹っ飛ばした男の片方がリーダーなのかな。

 そいつの声で残りの三人も臨戦態勢になった。


 ここはこの店で一番大きな部屋かな。

 これだけの広さがあるならそこそこ動きやすいな。


 先手必勝。


 僕は目の前のテーブルの右側を蹴り上げて真横に倒してから、左に蹴飛ばした。


「ぐぇっ!」


 そのまま左にいた男を巻き込んで壁に激突し、男はカエルが潰れたような声を出した。


 突然のことに他の三人が驚いているうちに、右にいた男の腹部に一撃。


「ぐふ、お、お、お゛ええええ!」


 うんいいぞ。

 程よく手加減出来た。


 肋骨にヒビが入っている程度だろう。

 ついでに内臓を揺さぶっておいたから、しばらくは立ち上がれずに蹲っているはずだ。


 後は最初に投げ飛ばした二人か。


「て、てめぇ!ぶっ殺してやる!」


 あ~あ。

 やっちゃった。


 僕としては今後の手間が省けるからありがたいけどね。


「ナイフ出しちゃったか。しかも『殺してやる』の台詞つき。明らかに殺人の意思があるから未成年とはいっても社会復帰は無理だろうね」

「うるせぇ!」


 ナイフを持った相手への最適な対処方法。

 それは逃げることだ。


 でもここはカラオケボックスの中。

 しかも後ろに山瀬さんを庇っている状況だから逃げられない。


 まぁ何も問題無いけどね。


『力なくしておなごは守れん』


 椙心流近代武術。


 祖父ちゃん直伝の技があれば、例え相手が銃を持っていようが問題無い。




「山瀬さん、終わったよ」


 僕が男達を無力化して数分後、警察がやってきた。

 警察が男達を拘束している間に、僕は椅子に座っている山瀬さんの隣に腰かけて声をかけた。


「うん」

「もうソレをとっても大丈夫だよ」

「もう少しだけ……ダメ?」

「え?いいけど」


 部屋の中が荒れているのを見るのが嫌なのかな。

 暴力が振るわれた後にしか見えないし。


「ごめんね、山瀬さん。ケンカとか嫌いでしょ。怖がらせちゃったよね」

「そんなこと無い!」


 山瀬さんは僕の制服からぴょこんと顔を出して、力強く答えてくれた。


 良かった。

 思っていたより元気みたい。

 それに嫌われなかったのも嬉しい。


 でも表向きは元気かもしれないけれど、実際はトラウマになっているかもしれないからね。

 その辺りはプロに任せよう。


「それじゃあ僕は警察の人と話をしてくるね」

「……」


 僕は椅子から立ち上がり部屋の外に出ようとするものの、山瀬さんにシャツの裾をきつく掴まれて動けなかった。


「山瀬さん?」

「……」


 僕は山瀬さんの様子を確認するために顔を覗き込もうとしたけれど、彼女はまた僕の学生服を被って顔を隠してしまう。


 ああ、やっぱり本当はまだ怖くてたまらないんだろうな。

 落ち着くまでもうしばらく傍にいてあげよう。


 あれ、でも隠れる前にチラっと見えた山瀬さんの表情は怖くて真っ青じゃなくて真っ赤だったような気が。

 怖くなるとそうなるタイプなのかな。




 何はともあれこれにて一件落着。


 これほど強いなら事前に警察を呼ばなくても大丈夫じゃないかって?


 そんなことはないよ。


『己の力を過信してはならぬ。何が起きてもおかしくないと考え準備するのじゃ』


 もしかしたら相手にとんでもなく強い人がいるかもしれないし、僕がミスして敗れてしまうこともあるかもしれない。


 一番大事なのはどんな形であっても山瀬さんを無事に助ける事。

 だから警察に連絡して保険をかけたんだ。


 これで良かったんだよね、祖父ちゃん。


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