13. 大変なことになった 2の2
「ささ、自己紹介も終わったことだしご飯を食べようか」
今回は『あ~ん』は無しだ。
絶対にやらないと事前に念を押してある。
十一人とおかずを交換したらいくら一口でもお腹いっぱいになってしまうからだ。
「そういえば検見川さんと佐川先輩は知り合いだったんだよね。他に元々知り合いだった人っている?」
どうせまた無言になりそうだから、ひとまず無難な話題を振ってみた。
「わたくしと佐川さんは二年生の時に同じクラスでございました」
「そだね。あんまり話したこと無いけど」
「お話をしても楽しそうな相手ではございませんでしたので」
「ウソ、奇遇。私も佐川さんの変な口調が気になって近寄りたくなかったんだよ」
「うふふ、気が合いますね」
あるぇ、おっかしいなぁ。
無難な話題だった筈なんだけど。
「もしかして二人は仲悪かったの?」
「いいえ、そのようなことはございません。ごく普通のクラスメイトでございました」
「そだね」
普通って何だろう。
僕分からなくなってきちゃった。
「さっきの会話は決してそうは見えなかったよ!?」
「今は敵同士でございますから」
「同じお宝を奪い合うライバルみたいなものかな」
何を奪い合っているのかは決して聞いてはならないんだろうな。
なので違う観点で突っ込んでみる。
「ライバルってもっと爽やかな敵対関係なイメージがあるんだけど」
高校生の場合は青春感あふれる正々堂々とした魂のぶつかり合いみたいなイメージ。
スポーツ物の漫画の読み過ぎかな。
「ウソ!和也君知らないの?女の子は『ライバル』と書いて『皆殺し』って読むんだよ」
「物騒!しかもなんでみんな頷いてるの!?」
女の子怖い!
これまた触れたらダメな話題な気がするから次に行こう。
「草間さんと金森さんとか、良く一緒に居るけど仲良いのかな」
「…………うざい」
ぐはっ、またしても話題の振り先を間違えた。
「草間先輩、安心してください。もう邪魔しませんから」
「…………どういう…………風の吹き回し?」
「もっとヤバイ相手が居ますから」
「…………納得」
だからなんで松木さんのことを警戒するのかなあ。
確かに、その、色気的な意味ではヤバいかもだけど、すっごく良い子なんだよ!
「椙山くんがまたあの顔してるですぅ!」
「金森さんの言う通り、何とかしないとまずいわね」
あの顔ってどんな顔さ。
それと関さん、勉強してる時以上に集中して考えてませんか?
「椙山クン、アタイは争わないよ」
「私達も」
「仲良くする」
検見川さんは佐川先輩と仲が良かったし、八乙女姉妹も誰かに暴言を吐くようなイメージが湧かないかな。
いや、別に他の女の子だったらイメージが湧くわけじゃ…………………………ないけど。
「椙山先輩、騙されちゃダメです!」
「…………希美は…………漁夫の利…………狙うタイプ」
「八乙女姉妹はワタシと同じで複数人も可のタイプ。男女比が違うけど」
草間さんと松木さんの言葉の意味を考えてはダメだとまた警鐘が……というか、警鐘が鳴りっぱなしで止まることが無いんだけどなんで!?
『実はアタイも一緒に三人で……』
止めろおおおお!
その未来はさっき否定したはずだろ!
『一緒に』
『愛してください』
考えるな。
考えるな。
考えるな。
これらの未来を認めたら、本当にヤバいことになりかねない。
具体的には十一人以上と同時に……
はっ、僕は何を考えてるんだ!
もうみんなの関係を話題にするのは止めよう。
「みんなは次の週末何するつもりなのかな」
言ってから思った。
この話題もダメだと。
最初に攻めて来たのは八乙女姉妹だった。
「私達の」
「私服を見に来て欲しい」
うん、確かにその約束はしたけどそれをここで言うのね。
「見せるだけなら一瞬で良いですよね。その後で良いので私と一緒に期末テストの勉強をしませんか?」
一瞬だけじゃなくてじっくり見たいんだけど、それを言ったら変態みたいだから言えない。
それに関さん、期末テストの勉強は一人でやって僕に勝つんだって言ってたよね。
「残念、今週末にはイベントがあるから和也君には私の手伝いをしてもらうつもりだよ」
そんな話聞いて無いんですけど。
無計画は手伝わないって言いましたよね。
「当日は空いてるじゃないですか。椙山先輩は私とデートするんです」
わぁお、直球だね。
でも決定事項みたいに言うのはどうかと思うよ。
「…………違う…………うちに来て…………料理を教えて貰う」
だからなんで皆さん決定してるみたいな言い方するのかな。
「うう、椙山様。今週末は我が家の蔵の大掃除が決まっておりますので残念ながらでぇとは無理でございます」
「蔵の掃除?」
へぇ、片栗さんの家って蔵があるんだ。
蔵の掃除興味あるなぁ。
「アカン、騙されんといて。椙山クンの興味を惹くために今決めたんや」
「滅相も無いことでございます。わたくしは偶然先ほど決まったことをお伝え申し上げただけです」
「そういうのを思いつきって言うんや!それより椙山クン、例のとこに来てーな。たっぷり例の服を見せてあげるかんな」
マグナカルテかぁ。
最近は放課後に良く訪れてるからなぁ。
ああ、でもあの人は土日しか来ないから前回のアレのお礼を言うために行くのもありかな。
「エセ関西弁は黙れですぅ!」
「エセって言うなや!ほんまやけど」
検見川さんの関西弁なにか変だと思ったら作ってたのか。
「それより椙山君、私とあの本について熱く語りましょう!」
あの本って言い方はBLの方だよね。
貴重な土日をそれで潰すのはちょっと。
「皆さんセンパイを困らせないでください」
松木さん、君って女の子は……
「またやられたですぅ!」
「天丼はズルいと思うわ」
「ですがわたくし達が真似をしても二番煎じ」
「…………今日は…………完敗」
君達は一体何の勝負をしているのかな。
謎のゲームはこれで終わりのようで談笑に思えない談笑が始まった。
少し不安だ。
せっかく出会えたんだから仲良くなって欲しいもん。
『無理じゃ』
祖父ちゃんは黙ってて!
よし、それじゃあこうしよう。
「じゃあ次の日曜に『みんなで』遊んだら良いんじゃないかな。参加出来る人だけで良いからさ」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
あれ、また静まり返っちゃった。
良いアイデアだと思うんだけど。
「ちなみに、椙山先輩は参加しますよね?」
「ううん、僕が居ない方が気兼ねなく遊べるでしょ」
女の子達が仲良くなるための交流会だからね。
男の僕が居ない方がうまく行くでしょ。
「はぁ~」
「はぁ~」
「はぁ~」
「はぁ~」
「はぁ~」
「はぁ~」
「はぁ~」
「はぁ~」
「はぁ~」
「はぁ~」
「はぁ~」
全員同時にクソデカ溜息つかなくても良いでしょ!?
なんでそんなダメな子を見るような目で僕を見るの!?
「ワタシはそんなセンパイも大好きです」
「そのフォローは微妙だよ!」
「むぅ……失敗でしたか」
いやいや、だから松木さんが失敗するの見て安心するのとか本当に止めようよ。
そういうのを無くすための交流会だよ。
結局僕のアイデアは保留という事になった。
後で女の子達の間で相談するらしい。
今日はなんとかこれで終わりそうだけど、毎週水曜日はこんな胃が痛くなる昼休みを過ごさなければならないのか。
十一人もいると大変……あれ、そういえば。
「山瀬さん、今日はほとんどお話しなかったね」
どの話題にも自分から入って来ないで聞き手に徹していたような気がする。
「やった、忘れられてなかった。椙山くんはやっぱり私の事を見てくれてるんだね」
「え?」
別に山瀬さんを特別意識しているつもりは……あるかも。
最初に仲良くなった女の子で、しかも時々僕をフォローしてくれることもあってなんとなく気にしちゃってるかも。
「私は椙山君の『一番』だから焦る必要はないの」
「なんですって!」
「い、いいい、いっいいっ、一番!?」
「…………まさか…………正妻の…………つもり!?」
「そんなこと認めへんで!」
「後から来た私達が不利なことぐらい分かってます!」
「いずれわたくしが越えてみせましょう」
「物語には近すぎるがゆえに『一番』になれないこともあるんだよ」
「一番と二番は」
「ゆずれない」
「今日戦果を稼いだからもう少しでワタシがヌけそうです」
ぬおおお、最後でいきなり火花が飛び交い出した!
聞こえない。
僕は何も聞こえないし考えない。
『女の戦いには手を出すな、そして何も考えるな』
祖父ちゃん、本当にそれでいいの!?
これにて先輩と後輩の章は終わります。
次は『特別な人達』の章になります。
マンネリにならないように気をつけます。
区切りが良いのでここで再度お願いします。
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ここから先は他の作品の準備をするため二日に一回のペース(時々連投するかも)で投稿する予定です。




