忘れる君と
三題噺もどき―ななじゅう。
お題:忘却・あなた・昨日
「あなたは、誰?」
目覚める度に、君はそう言って。
僕の、柔らかいところを、優しく、突き刺していく。
眠る度に、日々のことを忘れ、毎日が新しいことだらけの君。
昨日したことも、一昨日話したことも、一週間前に約束したことも、全部忘れて。
君は、目覚めると、どこか不安そうに見えるけれど。
きっと、毎日が楽しいのだろう。
新しいことを知るたびに、僕と話をしているだけでも、君は、優しく笑う。
キラキラとした、太陽のような、向日葵のような、まぶしい笑顔で。
その笑顔を見るのは好きだ。
いつまでも見ていたいと願っている。
君の笑顔が、枯れることがないようにと、願っている。
―それでも、堪える時はある。
優しく、少しずつ削られていくモノ。
それを、どうしても、どうやっても、守ることも、忘れることも、できなくて。
毎日がキラキラする君と、毎日削られていく僕。
―なんて不毛なんだろう。
そんなことを思うけれど、僕は君を離したいとは思わない。
君が、離れたいというのなら咎めはしないけれど。
そんな日がくるまでは、どうか、君の隣にい続けることができるように祈っている。