モンスター狩り
下半身の大部分と片脚が吹き飛ばされ、動けなくなったワイルドボアが轉がっている。
僕とノエルはソイツの近くへ歩み寄った。
ブフォ ブフォ ブフォ
まだ生きていて、口から湯気の様な息を吐き、こちらを睨み付けている。
ドンッ!
僕はそんなワイルドボアの顔を踏みつけストレングスで動きを封じた。 ノエルに噛み付く可能性があるからだ。
「ノエル、できるか?」
「うん……、できる!」
ノエルは真剣な顔で頷くと、ワイルドボアの前で両膝を地面に着け、両手で握ったナイフを高く振り被る。
「やッ!」
グサッ!
僕が抑え込んでいるワイルドボアの首にノエルがナイフを突き刺した。
だがワイルドボアはまだ生きていて、僕の足の裏でバタバタと暴れている。
「やッ! んッ! やッ! えいッ!」
ノエルは何度もワイルドボアの首にナイフを突き刺し、そして――。
ワイルドボアは黒い霧になって消えた。
「レベルが1上がったッ!!」
「ああ」
ノエルは驚きと喜びが入り混じった顔で僕を見詰める。
それから飛び上がって大喜びした。
「やった!やったよ〜!! 嬉しいよぉ〜! ゼツ君ッ〜!!」
そして僕に抱き着いた。だから僕もノエルを抱きしめる。
「よかったな。 ノエル」
「うん!ありがとう。 ゼツ君、ありがとう」
ノエルは本当に嬉しそうだ。僕の顔もほころぶ。
誰でも最初はこうなる。僕と同年代の奴隷作業員が初めてレベルアップして飛び上がるほど大喜びする姿を何度も見てきた。
僕だけはいくらモンスターを殺してもレベルが上がらなくて、そんな大喜びする連中を僕はいつもドス黒い視線で見ていた。
そうか……、 僕はノエルに自分を重ねていたんだ。
12歳から17歳までの5年間、ずっとレベル0だった僕と15歳になっても無加護でレベル0だったノエルを。
だからノエルがレベルアップできて僕もこんなにも嬉しいんだ!
経験値は最後にモンスターの命を奪った者に入る。だからこの場合だと経験値は全てノエルに入り僕には一切入らない。
僕はモンスターを倒しても経験値を稼げない。
今後の冒険では僕がモンスターを瀕死状態にして最後はノエルがとどめを刺す、というやり方になるだろう。
そのやり方ならノエルがA級やS級クラスの強力なモンスターを狩ることができる。効率良く経験値を稼げる。
僕の仕事はモンスターを倒した後だ――。
「忘れない内にアレを探そう」
「うん!そうだね!」
僕達はワイルドボアが黒い霧になって四散した場所を探す。
「あった!」
そこには米粒程の大きさの銀色の金属が落ちていた。 ――――銀である。
この世界では鉱山から鉄や銅を採掘できる。 しかし銀や金、さらにレアな白金やオリファルコンはモンスターからしか採取できない。
そして、それらを鋳潰して貨幣や装飾品が作られる。だからモンスターを倒せるだけで金を稼ぐことができるのだ。
金や白金は高ランクのモンスターからしかドロップできないが、今の僕のレベルなら単独でもある程度狩れる筈だ。
「銀は街に着いたら換金しよう。 取り分はさっきも話したけど折半でいいよね?」
「本当にいいの? 私何もしてないけど?」
「まぁレベルが上がればノエルも単独で狩れるようになるから、それまでは僕が傍にいて君のレベル上げを手伝うよ」
「ゼツ君………………、うっ……」
ノエルは目を赤くして蒼い瞳に涙を浮かべた。
あれ?何か不味いこと言ったかな?
「わたし、がんばるから!」
「ああ、一緒に頑張ろう! 今日はモンスターと遭遇したら全部倒そう!」
「うん!」
ノエルは笑顔で頷く。
僕も風俗店に行く為に金を稼ぐ必要がある。 頑張ろう!
それから夜まで狩りを続けた。
基本的に〈ガンシャ〉で敵の動きを止めてノエルがとどめを刺す、という作業の繰り返しだった。
今日狩ったモンスターはワイルドボア〈F級〉、ワイルドウルフ〈F級〉、レッドボア〈E級〉、ブラックベア〈C級〉。
今日一日でノエルはレベルが14まで上がった。
普通レベル10前後で狩りをする場合、G級かF級のモンスターが妥当なのだが、E級のレッドボアの群れ50体と遭遇できたのと、C級のブラックベアを5体狩れたのが大きかった。
ノエルは前半はナイフを突き刺す作業が力仕事でかなりきつそうだったが、レベルが上るに連れてストレングスが上昇し、後半はサクサクモンスターにナイフを刺していた。
それとブラックベアから5体合わせて金貨1枚相当の金が採取できたのが良かった。街に着いてから野宿しなくても済むし、旅道具や武具を買い足せる。
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HNレッサーデーモン
Lv 14
②HP 161
③MP 236
①ストロングス 86
①アジリティ 86
②インテリジェンス 161
アクティブスキル
闇魔法即死Lv1、暗視
パッシブスキル
MP回復Lv1
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※アクティブスキル、パッシブスキルは本人のみ閲覧可。
※①②③は成長率。
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