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馬車を使ってお隣に



 親書は、中を改めるまでもなく……一応中を読んだけどやっぱり……『助けて』だった。


 どういうこと?

 事務官に聞くと、宰相は更にお隣に助けを求めるために一人の事務官を派遣したらしいけどこのあたりいる領地の状況を理解したようだ。

 どんなだよ。


 俺は自分のところしか知らないけど、そういえば俺がお国入りするためにはじめに手紙を持ってここに来たときに通過したけど、あまり良い感じはしなかったな。


 件の事務官が言うには、もたらされた情報は、派遣した更に奥(王都に近い方)は、お隣ほどひどくはないが、経済が停滞しており、かなり寂れて、とてもじゃないが、他に援助などできそうにないとか。


 それよりも酷いことに、調査に出向いた事務官を出迎えたのは領主館に務める執事とメイドだけで、領主は当然としても、誰も政を担当している者は見かけなかったらしい。


 宰相は、問題の領地の復興のために、このあたり一帯の領地と対応策を一緒にと考えたいと、一度関係者を集めて話し合いたいらしい。


 周りといったけど、今の話では、お隣の更にお隣、俺からは問題の領地を挟んで向こうの領地からは誰も来られそうにないだろう。


 流石に屋敷の執事やメイドを呼んでも意味ないし、そもそもからして、勝手に他の領地に出向いて話し合うことが許されるかどうかを判断できる者すらいないのだ。


 俺に今もたらされた情報は、酷いことばかりだ。

 本当に凄いな、この国は。


 この世界では政も王都からのリモートだよ……てことなど有るはずもなく、貴族たちが政を放棄しているようなものだ。


 少なくとも俺にはそう思えて仕方がない。

 それでいて、しっかりと税だけは取っていく。


 いいかげんにしろよな。


 しかし、そんな状況で俺を呼んで宰相はどうするつもりだ。

 とにかく、宰相は自身の権限を使い、広域領主会議を開くらしい。


 それを見たお姉さん方は全員呆気にとられながらも呆れている。


「レイさん。

 これは行かざるを得ませんね。

 宰相が自身の権限で領地貴族を集めておりますので、行かなければ後々まずいでしょうね」


「しかし、そのお隣はどうするおつもりなんでしょうか」


「ええ、代理を立てたくとも誰も判断できそうなものはいませんし、今から王都に使いを出しても間に合いそうにありませんよね」


「ひょっとして、そこも潰すおつもりでは」


「ちょっと待ってよ。

 潰すて簡単言うけど、潰されたお隣ですら先が見えてないけど」


「うちはどうしますか」


「行かないといけなんでしょ……あ、代理でもいいんだよね。

 俺が行くと色々とふっかけられそうだしな」


「ダメでしょうね。

 これって、端からレイさんを名指しで呼び出しているのですから」


「だからだよ。

 絶対に面倒事だよ」


「私達もご一緒しますから、行きましょう。

 こちらに隙を見せなければ宰相でも……」


「もういい加減に領地を返還しても……」


「最悪、それも考えませんと。

 しかし、まずは宰相の出方次第でしょうね」


「ああ、これだからここがなかなかうまく行かないんだよね。

 チョーク工場だけだよね、動き出したのは」


「学校も、船乗り養成の方はどうにか始まりましたが……成果と言われますと……」


「は~~、とりあえず、宰相の要請には答えるとして、いつまでに行けばいいんだろう」


「期日は……これって、本当にレイさんだけですね呼んでいるのは。

 期日は可及的速やかにとありますので、向こうのお隣は絶対に無理ですね」


「端からそのつもりなのでしょ、さんざん俺が嫌がっていたので」


「でしょうね。

 でも、しっかりと対応しましょう」


「任せてください。

 私達は貴族ではありませんが、しきたりなどには詳しいので」


「ああ、期待しているよ」


 俺は渋々ながらお隣にお姉さん方を連れて行く準備を始める。

 今回の移動は、お姉さん方もいることだし、何より俺が呼ばれているのが貴族会議とかというものらしいので、貴族としても体面がどうとか……端から俺を呼んでいるのでそんな体面などクソ喰らえだが、そこはそうも行かないらしい。


 お姉さん方の情報だが、今はお姉さん方にすがるしかないので、馬車を用意させた。

 馬はいる、馬車はというと貴族が乗るような派手な物は見つからなかったが、それでも商人が使っていたという馬車を見つけた。


 やれやれ、俺は良いけどお姉さん方を歩かせてお隣までいけるはずないので、馬車が見つかっただけでもよしとしよう。


 今はそれを使うしかないので、それに馬を繋いでお隣に向かう。

 貴族としての移動だし、何よりあの森を抜けるので護衛は必須だが、ここには護衛に向く人材だけはそろっている。


 元騎士爵で奴隷落ちしたのを俺が引き取ったスジャータやその部下のアイリーンとシルバーナはお揃いの甲冑を身の纏わせることで、どうにか形にはなる。

 それに、今回は何より俺たちにとって絶対に怪我一つ付けることを許されない重要人物でもあるお姉さん方の三人も同行してくれるので、護衛は念入りに準備する。

 幸いこの地の冒険者で俺の奴隷になっているガーネットとその仲間であるサリーとマーガレットも連れて行く。


 今回護衛として同行を許したのは全員女性だが……お姉さん方は当然だが、いつもの護衛でもあるジーナたちもいることだし、実力的には明らかにオーバースペックにはなるが、全員女性だということが少し俺には気になった。


 さすがに、移動中は良いが、あちらで大運動会を望まれても宰相たちがそばにいることだし……果たしてそれが許されるかどうか……でも、福利厚生とも言える俺たちの夜の儀式でもあるし……うん、成り行きに任すしかないな。


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― 新着の感想 ―
宰相閣下は少し前に商人から貴族にしたばかりの男に何処までやれると思っているのか。 上級貴族に依頼しての三男か四男ぐらいを領主にすりゃあ良い話だろ。
うわあ、色々押し付けられそう・・・ もうこの国から逃げる事考えるレベルだよなあ(目反らし
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