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シーボーギウムに向け船で移動

 

 結局王都からモリブデンまでは、かなり急いだのだが4日もかかった。

 そこで、すでに準備させていた船に乗せて、シーボーギウムに向かった。

 お供の騎士たちは船に合わなかったのか、それとも……多分両方だな。

 事務官たちもずっと馬車の中にいたのにかなりぐったりしている。


「すみません、ここから3日は船中になります」


「……」


 多分、すでに船酔いになっていると思われる事務官と騎士たちからの絶望の視線を浴びた。

 俺のせいじゃないぞ。

 文句なら宰相にでも言ってくれ。


「そこで、少しお話がしたいのですが」


 俺は、構わず懸案事項を持ち出して打ち合わせに入る。

 相手が正常運転でない今なら俺に有利にことが運べるはずだ。


 もともとからして、俺には一切関係のない話……原因が俺だと言われるのならば関係ないとも言い切れないが、それでも、領地運営で失敗など俺のせいじゃないだろう。

 その立て直しだって、俺が関わらなければならないことはないはずなのに、本当に面倒ばかりだ。


 船中で、とにかく食糧問題と、領地復興に重点を置いて話し合う。

 俺がどこまで関与しなければならないかもきちんと線引をしてしまう……が、流石王都で事務官として宰相に仕えていただけのことはあり、体調が十分でないのにもかかわらず、肝心なことに関してはお茶を濁される。


「ですが、シーボーギウム卿。

 肝心の領地の状況が見えてない現状で、そこまで決めることはできかねますが」


「たしかにそうなのですが、最悪に備えて、私がどこまで援助できるかを聞いておくことはその後の対応にも良い影響が出るのでは」


「確かにそういう部分もありますが、せっかく聞かれても、状況がこちらの想定を一切無視されるような状況もありうるわけですし、そうなった場合、ここでの取り決めは意味がなくなりますが」


「事務官殿の言われることは理解できます。

 では、我が領地の状況をご説明しますので、そこから私どもにどこまで依頼されるかをそちらでお考えください。

 何分、こちらはお隣と違い『破綻』した領地を引き継いで、立て直しの最中なのですから」


 俺はこのように切り出してから、状況を説明していく。

 現状は、とにかく俺からの持ち出して食糧援助をしていることを説明して、領地が自立できてないことを何度も言葉を変えて、説明していく。

 その上で、再建にあたる人の手配が全くできてないことを切々と話している。


「できれば、貴方がた事務官の方たちはお隣に行かず我が領地の再建を手伝ってほしいくらいなのですがね」


「私としては、卿のお困りも理解できますし、できればお手伝いをしてもと考えなくもないですが、それ以上にお隣の領地が危機的だという情報を得ておりますので」


 一体どこからそんな情報を得ているのか不明だが、確かにあれほど働き盛りの男たちを無駄に死傷させているくらいだ。

 まともに領地運営などできてはいないだろう。


 しかし、まともに領地運営できてないのは俺のところも同じだ。

 いや、俺のところは先代領主の無能無策により、完全に破綻させられていたのをゼロからどころかマイナスからの再建になっている。


 緊急で、食料を輸入して、病気なども治療をしてやっと領内は落ち着きを見せてきたが、領地運営にはほど遠い。

 これから、海に出ての漁や農作業などで、食料を生産してもらわないと税すら取れない。

 未だ俺からの持ち出して領内を維持しているのだからな。


 幸いというか、冒険者が集まってきており、魔物の素材取引でそれなりの利益も出てき始めているから、そのうちこれだけでも単年の赤字は止められそうだし、黒板の販売が始まれば、どうにかなりそうだとは思う……でも、これって俺が領主として取り組みというよりも、明らかに商売の範疇だよな。


 貴族である必要ないよ。

 それなのに、今目の前にいる事務官の世話など、貴族のしがらみで、面倒事に両足をどっぷり漬けられている。


 何度も、俺の領地の問題を説明して、協力することはやぶさかではないが、できる範囲は限られるとアピールしているが、どこまで効果があるのか……王都で平気で生きていける事務官たちだ。

 暖簾に腕押しとはこのことなのだろうな。


 3日後に無事、シーボーギウムの港についた。

 王都を出てから10日もかからずに、ここまで着いたことに一様に騎士も事務官たちも驚いている。


 俺は彼らを接待するつもりもないので、森をパトロールしている元騎士の彼女たちをともなって、すぐにお隣に向け移動を始める。


 この素早い対応を、彼らは例外なく驚いてはいたが、決して喜んではいない。

 接待でも受けられるとは思ってはいなかっただろうが、それでも数日ここで準備をしての移動となると予想はしていたようだ。


 そんな時間の無駄なんぞ俺にはできないと、船の中で散々説明してきたのに、未だ理解してなかったようだ。

 本当にめんどくさい連中だ。


 俺達は船から降りて、港に迎えに来ている自衛団的な森の偵察部隊を率いて隣の領地に歩いて向かった。


 なにせ、街道など整備をするつもりなどサラサラ考えなかったし、現状物流などの心配もしなくてよかったので、せいぜい森の魔物を間引きに行く冒険者や自衛団的な連中が通れれば良かっただけなので。


 騎士たちも多少は文句を言いたそうな顔をしているが、そんなの知らん。

 それよりも、事務官たちの体力が、俺よりも遥かに足りなく、途中でしなくても良い休憩に時間を取られた。


 休憩のときに、流石に事務官たちに気を使い、果物や、それを絞ったジュース類に、パンなど、休憩ごとに色々と支給してどうにかしている。


 俺から支給されるものが、あまりに不自然だったこともあり、騎士団長から尋ねられたが、ダーナのアイテムボックスだと話して誤魔化した。


 本当はシーボーギウムの屋敷に、その都度人数分を作らせて送ってもらったものだが、正直に話すと必ず面倒になるので、ごまかしに徹した。


 本当はアイテムボックスも秘密にされるようなのだが、俺が商人からの成り上がりだったこともあり、かえってアイテムボックス持ちの奴隷が居るとわからせても、問題はないそうだ。


 このあたりもお姉さん方からのアドバイスだが、これから頻繁にやり取りをしている。


 まあ、お姉さん方にしても俺がさらに余計な仕事を作らないか心配なようで、三人と王都に残る元男爵家のメイドやバトラーさんと相談の上、対応してくれるらしい。


 とにかく、何かあればすぐに知らせよとお姉さん方から厳命されている。


 やれやれだな。


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― 新着の感想 ―
うん、ほっといたらなんか始めだしてやらかすよね つーか、なんでそんな手厚い対応シーボーギウムには無かったんやろ?(目反らし
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