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王宮でのトラブル


 そこからの俺は、バトラーさんやメイドたちの命令通りに働いた。

 俺の上官は彼ら彼女らのようだ……貴族って一体なんだろう?


 10日もあればかなりゆっくりと準備をしてもお釣りが来ると俺は考えていたのだが、時間などいくらあっても王都では足りないらしい。

 とにかく色々とありすぎた。


 暁さんが冒険者ギルドで俺のことを呼んでいると人づてに聞いたので、俺は急ぎ冒険者ギルドに向かうとすぐにギルド長の部屋に通された。

 以前に王宮でのパーティーか何かで会ったことがあるようなことをギルド長は俺との挨拶で言ってきたのだが、あいにく興味も無かったのか俺は全く覚えていなかったが、そこはほれ令和日本で魔法使いになるための修行であったあのブラック職場で鍛えられたスキルがあるので、適当に話を合わせた。

 世間話程度ならばいくらでも話を合わせることはできそうだ。


 早速暁さん関連のトラブルについてだが、俺達が連れてきた野盗の扱いについて王宮からいちゃもんがついたと言っている。


 王宮からなのかな?

 俺は疑問に思ったのだが、とにかくいちゃもんがついた先を聞くと、どこぞの男爵の使用人からの話だそうだから、俺は早速王宮に問い合わせることにした。


 すぐに、屋敷のバトラーさんを通して宰相に文句ついでにこの件を問い合わせるようにアイテムボックス通信を使って指示を出すと、直ぐに返信が入る。

 この某男爵は俺達の仮想敵である……いや、完全に敵対しているか。

 その侯爵の縁戚関係で、王宮からこんな些細な件で冒険者ギルドに絡むことは無いらしいと、伯爵家の執事からの情報が届いた。


 仕事の早い人って、流石だな。

 

 俺は、今入手した情報をギルド長に知らせて今後の対応について話し合う。


「では、男爵が言われるのは王宮からではなく、彼らを使った貴族からの嫌がらせだということですか」


「嫌がらせと言うよりも、俺たちが捕まえた連中の件を表沙汰にできなくて、苦し紛れにギルドを脅してきたのではないかな。

 どうせ、解放しろとか言ってきたのだろう」


「ええ、解放しろというよりも暁さんたちを彼らを不法に捕まえたことで処罰しろとも言っていましたね」


「こういう場合、普通ならばどういう対応になるのかな」


「いえ、すでに目撃者も多くおりますので、全く話になりませんね。

 無視して処理します」


「それならば、今回の場合はどうして……」


「流石に王宮からの意見を貰えば、調査位は……」


 また、語尾を濁された。

 本当に王都というものは、魔物以上に鵺でも住んでいるのかな。


「なら、きちんと調査をしましょうか。

 王宮からの意見と言ってこられたのでしょう。

 それなら、きちんと王宮に対して調査依頼をしましょうか。

 犯罪人を王都には放てという意見に対して、どういうつもりなのかと」


「王宮に対して……」


「ええ、私も宰相に少々報告しないと行けない事案もありますし、一緒に済ませましょうか」


「一緒と言いますと……」


「まずは、王宮の窓口に対してギルド長から手紙でも書いてください。

 私も添え状を出しますので」


 その場で早速手紙を書いて、ギルド職員が王宮に持っていった。

 そのギルド職員がギルドに戻る時に、一緒に王宮の事務官を連れてきた。

 一体、お役所で、こんな素早い仕事を見たことがない。


 暁さんたちは、俺の隣で、事の成り行きを見守っているだけで、何もできない。

 まあ、当たり前といえば当たり前なのだが、流石にここで帰すわけにも行かないので、しばらく王都での権力闘争の一幕でも見ていてもらう。


 ギルド長室に通された王宮の事務官は、とにかく慌てて、今回の王宮からの意見について無かったことにしようと必死だ。


 そりゃそうだな。

 勝手に王宮を騙って極悪人を王都内に放てと言ってきたのが、王都内でもそれなりの権力を持つ侯爵に連なる人なのだから。

 しかし、事が俺達の手紙で公になっている。

 俺の持たせた添え状には、宰相宛の報告書もあるので、そちらは宰相まで行くはずだ。

 行かないようならば、この国は終わる。


 事務官はどうも敵方のようで、この件を知らなかったようなのだが、すぐに状況を理解して、事の収束を狙って急ぎ動いているようだ。

 

「事務官殿。

 どういうことですか」


「ええ、王宮から私が襲われたときの犯罪者を王都に放てと言ってきたのでは」


「え、男爵が襲われた……」


「ええ、私とそこにいる暁さんたちが撃退できたので、無事に王都に入れましたが、そんな彼らを無罪放免にしろとは、いかなることなのかきちんと説明いただけるのですよね」


「ええ、それが私にも情報がなく……」


「情報がないとは……

 では、事務官はここに何をしに」


「じょ、状況の確認ですよ……

 流石に冒険者ギルド長からの問い合わせについて、どうしても情報が不足しておりますので、お答えできないものですから……」


「それならば、私がこれから王宮に出向いていくらでも説明しますよ。

 襲われた当事者ですから」


「だ、男爵が……それには及びません。

 そうですよね。

 男爵を襲うような連中を無罪などできるはずもありませんし、何かしらの手違いでもあったのでしょう。

 これから戻り私が調査します」


「そうですか。

 まあ、近々私も宰相に報告もありますし、王宮に行きますので、その時までにこの件についてなにかわかれば良いのですがね」


「男爵が、王宮に……」


「ええ、私が領地を拝領できたのも宰相閣下のご配慮のおかげもありますし、そのあたりについて一度報告にでもと考えておりましたので」


「男爵が王宮に……宰相に報告……」


 事務官は急にぶつぶつと言い始めギルド長にろくに挨拶もせずに部屋から出ていった。


「だ、男爵……あれって」


 暁のイレブンさんが俺に聞いてきた。

 直前まではレイ様と言い方が治っていたのに、元に戻ってしまった。

 まあ、ギルド長の前でもあるし、一応ここのフォーマルということで俺も無理やり自分を納得させてからイレブンさんの問いに答える。


「いや、私と敵対している勢力の暴走なのでしょうが、流石に勝手に王宮を名乗ってはだめでしょう。

 それに気付いた事務官が慌てて無かったことにでもしたかったのでしょうが、運の悪いことに、ここに俺が居たから、それもできずに……今頃は更に事が大きくなってしまったことで、慌てて侯爵あたりに走り込んでいるのかもしれませんね」

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