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腐れ縁との珍道中


「しかし、奴隷の件は理解しましたが、それならなぜ王都でそれも面倒なオークションを」


 当然聞かれることと、覚悟していたので、俺は素直に理由を説明していく。


「はじめは世話になっている奴隷商のいるモリブデンで、その奴隷商に任せようかと考えていたのだが、モリブデンの御領主様に止めてくれと頼まれた」


「その理由をお聞きしても」


「ああ、貴族にはいろんなしがらみがあるようで、先の侯爵の閥との関係で、つまらないいざこざは起こしたくないそうだ」


「それでですか。

 その噂が出るようになりまして、ギルドの方にも各方面から少し」


「やはり侯爵からの妨害はありましたか」


「借金奴隷のオークションを禁止しろと」


「それで、ギルドとしては」


「禁止などできませんよ。

 この国では奴隷関係はかなりナイーブな問題をはらんでおりますから、政治的な力押しは禁止されております。

 ですので、圧力という形でしか、私どもにはありませんが……」


「その圧力が無視できないと」


「いえ、そこは陛下よりのお話でしたら考えますが、侯爵様にも敵は多くおりますので、私どもがナイーブな問題をはらんだ奴隷の件で侯爵サイドには立てません。

 今はその説明でしのいでおりますが。

 そもそも、噂が本当かどうかすら今まで分かりませんでしたので」


「だから私が急に訪ねてもすぐにお会いできたのだな」


「はい、ちょうど私どもの方から調査のために男爵様の方にお伺いを立てようかと各方面に働きかけていたので。

 それよりもなぜ急に来られたのでしょうか」


「いや、私は忙しいギルド長に会うつもりは無かったぞ。

 窓口で、一応情報だけでもと思いここを訪ねたのだが」


「「窓口!」」


 俺を部屋に案内してきた窓口の責任者のような人と、ギルド長は俺の説明を聞いて驚いていた。


「何をそんなに驚く。

 俺はまだ、商人ギルドに籍はあったはずだが」


「はい、大変珍しいことなのですが、男爵様の登録はまだ生きております」


「なにを考えているのだ。

 俺はギルドの会員としての務めを果たすためだけに寄ったのだが。

 それに伯爵からも王都を離れる前にギルドによって来いと言われていたこともあるので」


「伯爵様が動いてくださいましたか。

 しかし……」


「なぜとお聞き居しても堂々巡りになりそうですね。

 しかし、このような重要案件ですから、それに男爵様のお立場もありますので」


 先振れを出さずにギルド来たことをやんわりと非難されている。

 俺は会員として窓口に用があっただけなのだが、どうも貴族は窓口を使わないそうなのだ。

 つい最近まで俺は使っていたがと反論しても、その時はまだ俺が貴族でなく、ただの新興商人扱いだったことなのでと、理由まで説明されて以後いきなりの訪問を避けてくれと言われた。


「もし、今後も商人ギルドに御用がありますのならば、私どもを呼びつけてください。

 いつでもすぐに駆けつけますので」


 どうも商人ギルドとしては俺にいきなりでなくともそもそもギルドに来てほしくなさそうだ。

 用があれば、ギルドの方から人を出すとまで言っている。

 少なくとも王都の貴族との関係はそのようだとまで説明してくれた。


 俺がギルド長に詫びを入れて、一度領地に戻ってから次来る時には奴隷を連れてくるので、オークションの件をよろしくと言って、ギルドを出た。


 一旦俺の店によって、領地に戻る準備をはじめた。

 店の者には、バッカスさんと、ドースンさんに、モリブデン行きの予定を伝えてもらった。


 明日には王都を立ちたかったのだが、王都に残る者たちの福利厚生という名の夜の大運動会が、彼女たちからの満足感をいただいていない。


 数日頑張り初めて帰郷?のお許しを頂いた。


 ドースンさんの用意した馬車での移動だが、俺に合わせてくれるのか、途中の村にはよらずに夜は野営で移動したので、馬車での移動では5日かかるところを4日の昼にはモリブデンに着くことができた。


 馬車はそのまま俺の経営する娼館に着けてそのままお二人を接待する。


それで、俺は店に入り、俺の留守中の様子を聞いた。

 まだ時々、風呂の改装工事の問わせを頂いて入るが、少しそれらの工事を止めている。

 なにせ、それらの工事を任せているガントさんは王都の俺の屋敷を頼んでいるので、屋敷が終わるまでは、無理だ。


 それ以外には特筆するようなことは無いとのことで、俺はその足でフィットチーネさんの店に伺う。


 俺が王都に立つ前に話しつけていたシーボーギウム行きの件だ。

 船の方は、王都から立つ前に俺の方からアイテムボックス通信を使い手配は済んでいる。

 まあ、今となっては毎週のようにこことシーボーギウムとの間で定期的に船は出ているので、こちらから事前に手配をしなくともどうにかなるが、他の冒険者や商人たちに迷惑をかけるわけにも行かないので、シーボーギウムからいつもの船をここに寄越してもらった。


 翌日、接待をしていたバッカスさんたちお二人は、満足ができていなかったように残ると言い始めたが、そこをフィットチーネさんが宥めていた。


 別に、ここで遊びたいのならば、俺達が戻るまで遊ばせても良かったが、俺の領地も見たかったこともあるのか、渋々二人は船に乗った。


 ここから3日でシーボーギウムに着くが、正直うっとうしかった。

 船内では俺達にはやることがない。

 女遊びも女性を連れ込まない限りできない相談だが、あいにくこの船には乗せていない。

 

 この船にはベテランの船乗りが少しと、今勉強中の船乗りの卵が乗って、操船をしている。

 俺がシーボーギウムで作った船員学校がだいぶ形になってきているようだ。


 暇になるとバッカスさんたちは俺にうざ絡みをしてくる。


「シーボーギウムで娼館を作らないのか」


「作るようなら、開店前に俺等を招待しろよな」


 なんて、完全に目的がおかしい。

 たしかにこの二人には王都でさんざん世話になって入るが……いっそ縁でも切ったろか……なんてね。


 でも、この人たちは娼館に通うために仕事をしていると言い切れるだけの奇人だ。


 シーボーギウムでも近い将来娼館を作らないとまずいことになるのは理解しているが、現状それどころではないのだ。


 まずは、シーボーギウムで預かっているお隣からのお客様の処理が先だ。

 それを済ませてから、王都での屋敷のお披露目を済ませれば、また落ち着いて領地の運営に掛かれる。


 とにかく、それまでは我慢とばかりに、先を見ている。


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