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久しぶりの森の中の冒険

 今スジャータは前の部下だった騎士の二人を手伝わせて、住民たちに屋敷をあてがっている。

 これが結構手間の係る仕事のようで、今日いっぱいは掛かりそうだ。


 それに集まった住民たちの健康状態も少し気になる。

 まあ、今までまともな住居がなく生活していたのだ。

 弱っていても不思議はないが、幸いなところ病人は出ていない。


 尤も病人がいれば、街を巡回している仲間たちが有無を言わさず集めていたので、ここまで困窮することもなかったのだろうが、そちらのケアも必要になりそうだ。


 そのあたりの塩梅もスジャータは心得ているはずだ。

 何せ、この地での最初の仕事がそれだったのだ。

 だからなのかこういうケースには慣れたもので、スジャータは部下に住民たちを任せて自分は食料の確保に走っている。


 先程も俺に許可を求めてきたので、俺も許可を出すと同時に手持ちのアポーの実を全て供出しておいた。

 最近集めていなかったこともあり、だいぶ手持ちも少なくなってきていたこともあり、全部出しても大した量にはならなかったが、それでも集まった住民達に与えるくらいはありそうだ。


 近々、またダーナやサーシャを連れて採取にでも向かおう。

 最近あまり二人にかまっている時間もなかったことだし、それくらいはしても問題にはならないだろう。


 そういえば、俺のところも大所帯になったものだ。

 皆を満足させるまで、なかなか相手ができないのに、仕事のほうは一向に減らない。

 いや、仕事が増えている。


 なんかブラック真っしぐらって感じだな。

 考えていたら暗くなってきたので、くだらないことを考えるのをやめてスジャータに今後について丸投げでお願いして、ダーナたち二人を連れて周りの探索に出ることにした。


  久しぶりの冒険だ。

 冒険??

 まあ、冒険者がこの世界では俺の最初の仕事だったし、森の中が仕事場のようなことをしていたので、本当に久しぶりだ。

 何度も王都とモリブデンとの間の行き来で同じようなことはしていたが、どこかに向かうついででない仕事は久しぶりだ。


 それに、そのついでの仕事も貴族になってからというもの殆どできていなかったこともあり、久しぶりの森の中の冒険に同行しているダーナたちは本当に嬉しそうにしている。


 彼女たちとの肉体を使ったコミュニケーションはそれなりにしており、決して放って置いたわけでもないが、それでも俺と三人だけでの冒険はいつ以来だろうか。


 そんな訳で、彼女たちは見つけた端から魔物を問答無用で狩っている。

 まあ、魔物に問答もないだろうが、返り血を浴びていないから良いようなものの、あれで返り血ベットリならば俺は絶対に引いていただろう。


 それにしても強くなったよな。

 確かにパワーレベリングっていうのか、それを必死にしたことはあったが、それにしても今の彼女たちは強い。

 何時以来か忘れたが、冒険者としての仕事を受けていないから、俺達はヘタをしなくとも冒険者としての資格は失効しているだろうが、俺達の冒険者としてのランクはそれほど高くはなかったが、それでもこの地にやってくる冒険者でも彼女たち以上に強いものは多分居ない。


 あの熊の魔物だって、彼女たちは一人で倒しているのだから。

 上級冒険者でもチームを組んで倒すのがやっとか言われている魔物を、ほとんど瞬殺だ。

 二人とも、確実に魔物の急所を一撃だ。


 ほとんど首の後ろにある頸動脈を切ることで倒しているが、一体誰が教えたのだ。

 俺のところには上級と呼べる冒険者など居なかったはずだが、俺の奴隷となったらパワーレベリングで強くはしているが、それでも技術というか経験に基づく知恵のようなものは俺達にはない。


 それでも確実に急所を狙って、さらにそれも難なく成功させているから凄いと思う。

 後で聞いてみると、どうも俺等がしている勉強会で学んだらしいが、一体何を教えているんだ。

 ……え、子どもたち相手に応急処置を教えてもらった時に体の仕組みについても習ったと言っている。


 どんな動物でも大量の出血があれば死に至ると教えているから、それを狙えば良いと考えたようだ。

 その場合、確実なのが頸動脈とキョウカやムーランの二人の先生から習ったらしく、それを面白がって魔法使いのサリーが更に詳しく指導したらしい。


 そんな指導をされたのは彼女たちだけのようで、俺は安心したが、絶対に子どもたちには教えないように一度釘でも刺しておこうと思った。


 で、俺は彼女たちを眺めているだけかというと、そんな訳なく、今はアポーの実を探しながら森の中を歩いている。

 二人が俺の護衛を兼ねながら魔物を狩っているので、俺は安心して薬草や木の実などを探しながら森の奥に入っていった。


 俺やダーナがアイテムボックスを持っているので、問題はなかったが、それにしても今回の冒険が楽しかったらしく、とにかくものすごい数の魔物を狩っていた。

 昼過ぎから夕方までの限られた時間では合ったが、この領地に集まってくる冒険者のどのグループよりも多くの魔物を狩っていた。


 まだ、二人は満足していなかったようではあるが、日も沈んできたこともあり俺達は屋敷に戻ることにした。


 何せ、誰にも言わずに冒険にきているので、夜をこすことは俺には恐怖でとてもじゃないができない。

 夜の魔物が凶暴になるからというのではない。

 お姉さん方を始め屋敷にいる全員から責められる。

 大概の場合、責められるのは俺だけで、ダーナたちはお咎めがないのが普通だ。


 ダーナたちはそういう場合に俺を擁護しようとはしてくれない。

 一人で嵐が去るのをじっと待つだけだ。

 俺もかなり学習しているので、怒られるギリギリの時間で屋敷についた。


 結果、怒られることはなかったが、嫌味を言われた。

 それも夜遅く彼女たちが満足するまで頑張っての結果だ。

 正直、今の俺って、天国にいるのか地獄なのかわからなくなってきている。


 まあ、社畜の時代から比べると明らかに天国よりなのだが、人間の業は深い。

 満足できなくなっている。



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仕事が少なくて満足できないって?(スットボケ
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