子どものお医者様
だが、今のところ子どもたちにとって、経験を積むにはこれ以上にない環境になっている。
お隣の雑兵たちには恨みはないが同情するつもりもないので、治療が失敗してもこちらは別に構わない。
成功すればそのまま借金奴隷としてモリブデンに出荷するだけなので、今のところ収支はプラスだ。
子どもたちの技能習得を考えると大きなメリットしか無いので、今のところそのままにしてある。
本当は、こちらで押さえている雑兵たちを集めて王都にでも送ればどうにかなりそうーなのだが、面倒でもあるし何よりコストがばかにならないくらいの費用がかかるらしい。
なので当分は現状そのままにしている。
お姉さん方もこれについては何も言ってこないので、多分俺の対応は間違えてはいないらしい。
しかし、こんなことを続けていてお隣は大丈夫なのかと心配にすらなっている。
お隣も領地が破綻でもして、そのつけがこちらに回ってこないかそればかりが心配になるが、お姉さん方が言うには雑兵の件は王都の侯爵の指示もあるだろうから、もしお隣が破綻しても侯爵あたりがどうにかするから心配ないと言っている。
少なくとも流行り病でも起きない限り影響は出ない……らしい。
でも、これってフラグってことはないよな。
この地でも病気関連は落ち着いてきたので、やっとこさ領地の再開発に取り掛かれてきたのに、また流行り病対応などさせられたら、本当に俺だけでなくこの地に住まう主だった者たちは過労で倒れるぞ。
そろそろ病院関連も人に任せたいが、キョウカあたりからも人手がほしいと言われたばかりだ。
病の治療は最近ほとんど無くなってきているようなのだが、怪我の治療が信じられないくらいのペースで増え、魔法での治療も限界になっているとか。
魔法を使う治療については例外なく治療費を頂いているから、十分に稼いで入るが、それでもそのままにしておくわけにもいかない。
俺の方から子供を使って応急治療をさせているが、キョウカはそれをもっと活用したいらしく、傷薬というのか、この地ではなんというのか知らないが、よもぎのような薬草を使った怪我の治療を重点に置きたいとか。
お金を払える高ランク冒険者には希望により魔法を使うようにしていくことにしたいと言ってきたので俺は『任せる』とだけ言ってある。
これで、病院から手が抜けるかと考えていたのだが、今朝お姉さん方から、傷薬の量産を考えてほしいと言われた。
あれほど俺には『新たなことを始めるな』って言っていたはずなのに仕事を振ってきた。
どうも冒険者だけでなく、雑兵がとにかく多く拾われてくるので、悠長に構えていられなくなっているらしく、キョウカからお姉さん方にヘルプの依頼があったようだ。
俺に言っても埒が明かないと判断したのか俺には頼まず直接お姉さん方に訴えてくるあたり、この領地での力関係を正確に把握している。
キョウカ侮りがたし。
とにかく、人手が足りないということで、久しぶりに領内にお触れを出した。
『手が足りないので手伝って』という感じのお触れを屋敷にいる人に頼んだ。
それと、まだ残っている病の治療のために患者たちを集めている屋敷に向かい、回復してそうな子どもたちを集めて、キョウカの元に連れて行った。
子どもたちにはキョウカは顔なじみだ。
病気の治療をしてもらっていたのだ、キョウカの頼みならば素直に聞くだろうという大人のずる賢い考えがあった。
子どもたちは俺の思惑通り素直にキョウカの指示にしたがって仕事の手伝いを始めた。
俺は、病院を離れて屋敷に戻る。
こちらでも、先のお触れの効果があったのか徐々にだが、大人も子供も集まりだした。
ここで集まった人たちには冒険者の護衛を付けて薬草を探してもらう。
当然給金も出すが、住まいの方も俺の方で用意したほうが良さげな人たちばかりだったので、空き家も屋敷に詰めるメイドに探してもらった。
まだまだ住民たちの生活の基盤は整っていそうにない。
前に、周りの村を潰して住民を集めた時に住居を与えたはずなのだが、ここに集まってきた人たちは着の身着のままの格好で、とても定住先があるとは思えない。
どうも俺の施策に漏れがあったようだと少し反省している。
とりあえず集めた住民たちをスジャータが面倒を見ている。
本来ならば、そのままここを守っていたバトラーさんに丸投げ案件なところ、そのバトラーさんは職場移動で今王都にいる。
あちらもあちらで色々と忙しいので、もう一度こちらに呼ぶわけにもいかない。
まあ、スジャータは今まで物理的な戦力としての活躍を期待していたが、さすが元騎士爵だけあってこういう政にも精通している……らしい。
俺が困っているとお姉さん方の一人が俺に教えてくれた。
『お困りならばスジャータにでも相談されれば』と言ってきた。
お姉さん方でも、これくらいならば問題も無さそうでもあるが、とにかくあちらも忙しい。
それに引き換え、シーボーギウムに連れてきた元騎士たちは、本来俺の護衛として連れてきたが、領地のあまりの荒廃ぶりにとにかく住民の治療に専念するべく、そういう方面で協力してもらっていた。
それも、この地で猛威を振るっていた病も落ち着き、今では街の周りの警戒のために巡回しながら雑兵を拾ってくることをしていたのだ。
そう、彼女たちがしなければいけないような仕事ではない。
なので俺は、彼女たちをこの地の経営の手伝いに配置換えした格好だ。
王都では店の用心棒兼給仕としてもらっていたが、ここでも便利使いになってしまった。
そのうちきちんと彼女たちを報いていきたい。
できれば貴族として取り立てたくもあるが、あいにく俺は男爵だ。
騎士爵の任命もできるかどうかはわからない。
領地持ちならば、できるようなことを前に聞いたことがあるが、そういう権利面での切形を俺は受けては居ないので、勝手にはできない。
そのうち王都の屋敷がお披露目でもできるようになった時に、伯爵か、宰相にでも聞いてみよう。




