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シーボーギウムの冒険者

 


 あれからも王都からは店を通してバトラーさんから報告がはいる。

 まだ、王都の屋敷は改装中なので、バトラーさんは店を拠点に貴族外交に(いそし)しんでいるとか。


 その報告では、対立する侯爵がしきりに王宮外交を展開しているようだが、一向に効果が出ていないらしい。

 それどころかシーボーギウムの前の領主の統治についての検証が必要ではないかとの話も出てきており、今ではその対応に追われているようだ。


 侯爵は、ここの統治に関与はしていなかったはずなのだが、前の領主あたりからうまい汁でも吸っていたのだろう。

 少なくとも、俺が聞いている限り公平に調べられれば、いくら令和日本と常識が異なるこの世界とはいえ、この時代の感覚でも限りなく黒になるらしく、調べられるとまずいらしい。

 現在、侯爵たちはまだ俺のことを諦めては居ないらしいが、それよりも足元を固める作業に重点を置いているとか、バトラーさんからの報告にはあった。


 まあ、俺には関係ない……いや、邪魔が入らない分だけ良い方向になるのではとも思うが、正直ここへの直接的な邪魔は今までも一度もないし、侯爵たちの動きは俺に関係ないとも言える。

 正確に言うと、どうも俺の領地のシーボーギウムと王都を結ぶ唯一の街道が止められていたようなのだが、俺達はその街道を一切使っていないので影響がまったく無かった。


 モリブデンでの荷留の話が出たときには流石に少し慌てた。

 あの時には、直接商業連合国との航路を探す話まで出たくらいだ。

 その話も、先の王都でのパーティーで話がついており、問題は今のところ無い。

 いずれはシーボーギウムから他の国との航路も必要にはなるが、周りの海には水棲魔物も多数生息しており、いまは保留になっている。


 しかし、俺が『新たな航路を』と言った時にお姉さん方が三人がかりで止めてきたのには驚いた。

『もうこれ以上やること増やすな』って言われたよ。

 なので、いまは領地の特産品、特にチョークと黒板の生産について領内を調整している。

 基本的に、労働力に孤児たちを使って自立のための方策も兼ねていく。


 今でも、航路という面では水棲魔物の危険性がないとは言わない。

 シーボーギウムが賑やかだった頃では定期的に魔物を狩るなどもしていたようで、魔物の危険性は殆どなかったらしいが、それもシーボーギウムの港が機能しなくなっては航路の維持もされずに、魔物が増えてきているらしい。


 俺もモリブデンからシーボーギウムに来るときに、何度か船上から魔物を狩る場面に遭遇したが、同乗している魔法使いや弓使いなどが簡単に排除していたので、まだそれほど脅威な魔物は住み着いていないようだ。

 良かったよ、シーサーペントなどの水棲魔物で、かなり脅威な魔物でも住み着くようならば、シーボーギウムとモリブデンとの間の行き来にも苦労しただろう。


 まあ、どうにかしたかとは思うが、それでもしなくとも良い苦労はしたくはない。

 それに、俺達がかなりの頻度で行き来している関係で、今では弱そうな魚に似た魔物ですら見なくなってきている。


 そのおかけというわけでもないだろうが、あの王都でのパーティー以降からパラパラとモリブデンから人が来るようになってきた。

 俺が使っている船にほとんど無理やり同乗してくる者や、別の船をチャーターしてやってくるものが出てきた。

 モリブデンの商業ギルド長や冒険者ギルド長との雑談で、俺も『是非にお越しください』などと社交辞令を言ったしな。


 せっかくここまで来てくれた商人でも、大店の人以外はほとんどすぐに帰っていった。

 先行投資先として魅力はあると思うが、そこまで資金力の保たない弱小の商人にはここシーボーギウムは魅力的には見えていないのだろう。


 しかし、問題は冒険者の方だ。

 俺が、冒険者ギルド長に釘を差しておいたが、それでも力の不足している冒険者はやってくる。

 いや、実力のある冒険者のほうが行動は慎重だ。

 だから、いまでは毎日のように付近を見張っている仲間が森から重症の冒険者を拾ってくる。


 毎日は大げさだが、それでもうちに所属している冒険者は『仕事にならない』とこぼしているくらいだ。

 また、この領都ではギルドがないので、その冒険者の殆どが俺の奴隷たちなので、今まで必要性を感じていなかった冒険者ギルドだが、外からやって来る冒険者のためにうちからモリブデンとのギルドの仲介のような仕事までしている。


 そもそも資本力のない冒険者は、この街で生活するにしても森から魔物を狩ってそれを換金しないと生活資金が無いが、その換金がこの街では難しい。

 ギルドがないし、そのかわりになる商店も殆どないからだ。


 あの王都でのパーティー以前では商店と言えるものは一つもなかった。

 唯一俺が頼み込んで食料確保のための店を置いてもらったが、それ以外では商業活動はこの街では無くなっていたのだ。


 あのパーティーからは、本当に少しづつだが大店が調査のための活動拠点を置いていくようになってきた。

 そこでの主な商いは魔物の部材取引になっているが、それもここに来る冒険者の需要を満たすまでは大きくない。


 仕方がないので、俺の方でギルドとの仲介をするようにしている。

 俺等が素材を預かり、定期便にてモリブデンに運んでギルドに卸す。

 それを、手数料を引いて冒険者たちに渡すことを初めた。


 卸し先も冒険者ギルドでもいいのだが、モリブデンでの話し合いの結果商業ギルドに卸すことになった。

 モリブデンでどういう話し合いが保たれたかは知らないが、魔物の素材は冒険者ギルドから商業ギルドに渡るらしく、俺が持ち込むものはそのまま商業ギルドに持ち込むことになった。


 俺等に素材を預けた冒険者は俺等に手数料を取られてかつ、冒険者としても功績も得られないから、果たして冒険者にとってメリットが有るのかと思ったのだが、それでもここでの狩りには旨味があるらしい。

 素材の価値という部分でだけになるが、かなり高価な素材が割と簡単に得られるようだ。


 これは、高価な素材を提供してくる魔物が弱いのではなく、そういう魔物の数が多くいるために探す手間がかからないという一面だけで得られるメリットのようだが、それでもそういう強い魔物を狩れる冒険者に取っては捨てがたいメリットのようだ。


 しかし、高ランクの冒険者の方は問題ないが、森で大怪我を負って俺達が拾ってくる冒険者が後を絶たない。

 なので、こちらでも簡単な治療のできる病院を作ることにした。


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