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プリン



 俺とドースンさんとの雑談はそんな感じで時間を潰すだけだったが、それでも俺には成果があった。

 今回の騒動の発端というか原因がわかった。

 しかし、利益が絡むとやたらと面倒になる。

 それも、誤解なのだから。


 誰も、今回の件で儲けなど出ていない。

 俺が食料を頼んでいるフェデリーニ様も儲けなど、度外視で協力してもらっている。

 当然、俺からは持ち出しなのだから儲けなどありえない。

 領民にしたって、本来領地を管理する貴族がまともならばあそこまで困窮することなどなかった。

 未だに原状回復にも至っていないので、儲けとは呼べないだろう。

 前に三方一両の損って話を令和日本にいたときに聞いたことがあるが、まさにそんな感じだ。

 俺も、俺に協力してくれるフェデリーニ様も、領民も誰も儲けなど無い。

 まあ、俺もそうだが、生きているだけで儲けものだといえば儲けだと言えるが、そんなことで羨ましがられるとか妬まれるとか、本当に割に合わない。


 それに初めて聞いた話だが、モリブデンの商人もいただけない。

 儲けの匂いを感じたのならば直接シーボーギウムまでくればいいのだ。

 それが商人というものだろう。

 ほかが儲けていそうだからと妬むのではなく……まあ、王都での商売での雑談でモリブデンを含む近隣の状況などを貴族に話していただけで、妬むとかいうものでもないのだろうが、相手があの連中とドースンさんに言わしめる貴族たちだ。


 どこの馬の骨ともわからないような若輩が、降って湧いたように急に領地を拝領されたかと思うとあれよあれよという間に領地を回復させて相当景気が良いと聞けば妬みもする感じかな。

 まあ、今回のドースンさんの所への訪問で、やっと事の本質が見えた。

 俺は、ただでさえ人が足りないので、奴隷を頼んだが、いつものごとく俺のニーズに合う奴隷はいなかった。

 まあ、予想はしていたから本当に雑談だけをして俺は店に戻っていった。


 店の戻ってからは、それこそいつものごとく店の奥で手伝いなどの仕事をして時間を潰す。

 伯爵邸で催されるパーティーに向けて新たな料理の施策などもしており、いまあるレパートリーのポテトフライに唐揚げ、ハンバーグ、それにあの微妙な味でしか無いピザを一通り作ってみたもののそれ以外に俺に作れそうなものが思い浮かばない。


 じゃがいもがあるからポテトサラダがほしいとは思ったのだが、肝心のマヨネーズが作れない。

 作り方は、うろ覚えではあるが知ってはいる。

 しかし、生の卵って正直怖い。

 異世界転生モノの定番ではあるが、卵って生だと病気が怖いんだよな。

 そのあたり俺が今まで読んできたライトノベルではご都合主義的に解決していた。

 確か殺菌などの魔法があったんだけど、そもそもこの世界で殺菌などという概念があるとは思えない。

 なにせ、俺の男爵だって、その菌によってのパンデミックで貰ったようなものだ。

 病気の蔓延を防いだ功績だったけか。

 王都に連れてこられた大量の奴隷たちの衛生管理をしただけだったのだが、そのために病気持ちの領地を押し付けたれたんだよな。

 今もそのせいで苦労する羽目になっているが。


 この世界にも確かに菌は存在する。

 流行り病が、殺菌を目的とした対処方法でどうにかなるのだ。

 顕微鏡などを持っていないので、直接確認はできないがあるのだろう。

 そうなると、どうしても生の卵を使うのには躊躇してしまう。


 卵で思い出したが、プリンでも挑戦してみるか。

 冷やすのならばどうにかなりそうだ。

 俺は思い立つと王都のバザーに向かう。

 暇そうにしていたサーシャがついてきたが、今日のところはアイテムボックス等必要もないのでダーナは連れずに表に出た。


 久しぶりの王都の町並みだ。

 そういえば、まだ俺はゆっくりとこのバザーを見て歩いたことがない。

 それこそ、最初に王都についたときにドースンさんの店を探すときに見て歩いた限りのような気がしてきた。

 俺はほとんど王都にはいなかったしな。

 店を構えてからは、店には滞在するようにはなったが、それこそ店のできる前では王都には仕入れ訪れただけで、とんぼ返りのようにモリブデンに戻っていったから、ゆっくりとバザーで買い物を楽しむのはとても新鮮だ。


 モリブデンでもあまりバザーのようなところにはいかなかったが、それでも病院を作ったのは港の直ぐ側だし、バザーも近くにあり賑やかな場所だ。

 病院に行くときにバザーの中を通ることもあるので、見たことはある。

 いや、殆ど見てこなかったのだろうな。

 興味もないし。


 しかし、いざゆっくり見て回るとモリブデンのバザーもそうだったが人の出入りも多く、活気があって気持ちがいい。

 やはり商人として生きていくには、こういう活気は大事だ。


 それこそ開港祭のときや王都の建国祭のときのようにあそこまで人は多くはないが、それでもさすが王都と言えるくらいに人は多くいる。

 俺は買い物客とぶつからないように気をつけながらバザーの奥にどんどん入っていく。


 材料としては、どれも新鮮な牛乳と卵、それに砂糖があればいいんだよな。

 香りをつけるためのバニラビーンズなんかも使うはずのような気がするが、それがなくとも問題はない。


 王都のバザーの賑を楽しみながら目的だった品物を入手した。

 流石にこんな喧騒のど真ん中でアイテムボックスを使うわけにもいかず、手頃なカバンも一緒に買って店に戻った。


「あれ、レイ様。

 お買い物でしたか。

 言ってくだされば私どもが……」


「いや、王都の街を楽しみたかったんだ。

 買い物はついでだ」


「で、何を買われたのですか」


 珍しく暇そうにしていたカトリーヌが俺に声をかけてきた。

 

「今度の伯爵邸でのパーティーに持っていける料理をと考えているんだよ」


「料理ですか……ひょっとして新たなレシピだとか」


「ああ、そのつもりだ。

 デザートになるかな」


「甘いお菓子ですか」


「お菓子といえば言えなくもないが……焼き菓子の類ではないぞ」


 俺はそう言ってから、カトリーヌといっしょに店の奥に入っていった。

 その後は娘のマリアンヌまでがまじり試行錯誤の末にやっとこさプリンもどきができた。

 そう、俺の思っていたプリンとは少し違う気がするが、それでもピザもどきよりは遥かにマシだ。

 それにあとから加わったメイドたちにも好評で、早速店のメニューに加えられた。

 名前もそのままプリンとしてだ。


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自家製マヨネーズはサルモネラ菌を増殖(培養)させる細菌兵器 https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/foods_archives/foodb…
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