3吉野宮の夜獣狩り
「よ、吉野宮って…あのすごいところじゃん!」
「うんうん、電車とかいっぱい通ってて、新幹線もあるっていう!」
陽介と明は驚いて叫ぶ。
「それで、なんでここにいるの?吉野宮の夜獣狩りが。」
桃子は、日奈の昼の光を手に取り、日奈に返す。
「ああ、この夜獣を倒すためですよ。こいつ、吉野宮の夜獣なので!」
「え、そうなの!めっちゃ強かったんだけど!」
日奈は驚いてひっくり返っている夜獣を見つめる。
「まあ、私だけじゃこいつは倒せませんよ。あなたたちみたいに仲間がいます。」
そう言って美々は後ろを振り返る。
「みんなー、おいでー!」
すると、後ろから数人の子供が走ってきた。
「この人たちが、私の仲間です。」
「そうそう、私は如月真菜!中一だよ!」
「僕は中一の相原一郎。」
「私は小学六年生の、若月奈央子です。」
「俺は中一の秋山海斗だ。」
「あたしは中三の伊藤涼香さ!」
五人は日奈たちに笑いかける。
「六人いるのね。」
「ああ、あたしらのとこの夜獣、結構強いからなー。」
日奈は、もう一つ質問をする。
「美々ちゃんって、結構小さいけど、何年生なの?」
「えっと、美々ちゃんは、小学五年生です。」
「え、ちっちゃ!」
「でしょう、ちっちゃいでしょう!人材不足だからって、こんなちびっ子をスカウトする必要ありますか!?スカウトに乗ったのは私だけど!奈央子ちゃんもそう思うよねっ?」
「えー、うーん、うん。」
「やっぱり!」
小学生二人(主に美々)がぎゃおぎゃお騒いでいるのを、みんなは笑顔で見守る。が、
「あ、夜獣が!」
突然海斗が叫んだ。
ひっくり返っていた夜獣が起き上がっている。
「蛍町の皆さん、ここは私たちがやっちゃいます!」
真菜がさっそく走り出す。
「蹴散らし風!」
どうやら真菜は風魔法の使い手のようだ。
「氷像造り!」
「岩と砂の雨!」
次に一郎が氷魔法を、海斗が土魔法を放つ。
「水のささやき!」
「夏の向日葵!」
奈央子が水魔法を使い、美々は花魔法を使う。
美々が叫ぶ。
「涼香ちゃん、やっちゃってよ!」
「あいよ!」
涼香は片手を勢いよく前へ突き出す。
「炎竜の炎!」
竜のような炎が夜獣を包む。
夜獣は明るく光りながら消えていった。
「よし、退治完了です!」
美々は勝利を喜ぶ。
「わー、強いなあ。」
明は驚き、感心する。
「数で押してるだけなんだけどね~。でも美々ちゃんは普通に強いよ。」
「美太郎、蛍町の奴らの魔法適性調べてよ。」
真菜が説明し、涼香は誰かに声をかける。
「ああ、わかったぞ~。えっとな、こいつが風、こっちは闇、あいつは光、あっちは炎~。」
小人の美太郎は、日奈たちの額に手を当てる。
「闇の君と光の君は、美々といい勝負ができそうだね~。」
「ま、勝負する必要もないけどね。」
日奈はくすくす笑う。
「じゃあ、俺たちはもう帰るな。」
「今日はありがとうございました!」
海斗が手を振り、桃子がそれに答える。
「あんなに強い夜獣もいるんだね…。」
でも、いい勉強になったよ!と日奈は言う。
四人はそれぞれの家に帰っていく。
「そういえばここ、工事してるんですよね?」
日奈は蛍町自然公園を指す。
「そうみたいね。公園の中央に大きな街灯を建てるとか。」
「その間この公園は閉鎖中だから、みんな文句言ってるんですよね。」
二人はくすくすと笑う。
「また明日。」
「はーい、また明日。」
そして二人は別れた。
「…何も起こらなければいいのですが。」
木陰から誰かが見ていることも知らずに。