2平凡な日のはず
今日は中学校の終業式がある。
明はワクワクしながら通学路を歩く。すると、
「お、西原、おはよう。」
「あ、おはようございます、斎藤先輩。」
後ろから陽介がやってきて、明はぺこりと頭を下げる。
「終業式だぜ、終業式。」
「まあ、夏休み中も部活動はあるんですけどね。」
「でも、どっか旅行は行きたいよな~、夜獣狩り組で旅行行く?」
「楽しそうですね。」
二人が笑いながら話していると、
「おはようございます、斎藤先輩、明!」
今度は日奈が走ってきた。
「夏休み、どこか行くの?」
「ああ、行けたらいいなって思ったんだよ。都合のいい日があればな。」
「都合のいい日くらい~、私が探してあげるよ~。」
「あ、菜々子!」
日奈の肩から菜々子が現れる。
「いいね、僕田舎に行きたい!」
「はいは~い。オッケ~だよ~。」
菜々子は小さなカレンダーを見始める。
「うーん、この日、どう?」
「おー、三連休じゃん。」
「そうそう、だから二泊三日~。」
「私行く!」
「僕も!」
「俺もだ!後で本田にも知らせておくな。」
こうして旅行に行くことが決まったのだった。
時刻は二十三時。
日奈たちはぐっすりと眠っている。
今日は夜獣も出てきていない、平和な夜だった。
菜々子も眠ろうとしていた、その時だった。
夜獣の鳴き声を、菜々子は聞いたのだ。
「いつもと違う、特大級だ~。」
菜々子は急いで夜獣狩りたちを起こしに行った。
「こいつが、特大級の夜獣…?」
桃子が静かに尋ねる。
「なんでこんな奴がいるんだ?」
「わからないけど、倒さないといけないよね。」
明が言う。
「じゃあ、戦うよ!」
日奈は宝石を握り、早速魔法を繰り出す。
「目くらまし!」
明るい光が夜獣に降りかかる。
「氷風!」
明は手を伸ばし、凍てつくような風を生み出す。
だが、夜獣はびくともしない。
今度は陽介が炎を浴びせる。
しかし、あまり効いていない。
「星の闇!」
桃子が魔法を使うと、夜獣はひっくり返った。
「よし、光のしず」
最後に日奈が魔法を使おうとするが、突然夜獣が吠えた。
それに驚き、日奈は昼の光を落としてしまった。
その白い宝石を、夜獣がつかむ。
「ちょっ…待って!」
日奈は慌てて取り返そうとする。
「返しなさい!」
桃子が魔法を乱発するが、夜獣は宝石を放さない。
そのまま宝石は握りつぶされ…。
「大輪の花傘!」
突然、何者かの詠唱が聞こえた。
不意打ちに驚いた夜獣は、宝石を手放す。
「宝石は取り返しました。もう大丈夫ですよ!」
人影は小走りで近づいてくる。
「私は佐々木美々。吉野宮市からきた夜獣狩りです。」
小さな少女は、笑って名乗るのだった。