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第四連 動き出す歯車―Rebirth-day―

「おーい、龍村・・・。」

誰かが頭を叩いて呼びかけている。

頭がボーッとする。

眩しくて、周りがよく見えない。

「おい、龍村!」

「はいッ!」

突然の大声で意識がスーッと冴えわたる。

驚きのあまり大きな声で返事をしてしまった。

「おい、龍村!何、ボーっとしてんだ。てめぇの意識はテキサスまで吹っ飛んじまってんのか。」

「す、すいません・・・」

先生から指導され、クラスから笑いが起こる。

龍村は恥ずかしくて、顔を真っ赤にして、座ろうとしたのであったが、

(うん?ちょっと待って!)

龍村はある違和感を抱き、再び立ち上がり、先生に質問するのであった。

「せ、先生!今日は何月何日ですか。」

龍村の突拍子の質問に先生は驚きを通り越して、呆れ顔を浮かべるのであった。

「おいおい、お前の頭はお留守か。もしかして、脳みそは那覇でバカンス中か。」

再び、クラスで笑いが起こる。

「龍村、今日は5月25日、金曜日だ。」

教師の言葉を聞き、龍村の全身から力が抜けたのであった。

驚きのあまり、言葉を失い、ゆったりと席に座ったのであった。

「5月25日」。それはあの怪物「辺獄」が現れ、「白銀の巫女」である東御院あやかが死んだ日。

(そうか、あれは全部夢だったんだ。よかった・・・よかった!)

窓際の席で座って、元気そうに笑っている東御院あやかを見て、龍村は安堵したのであった。

だが、その瞬間、彼は現実を知ることになるのであった。

(えッ!この緑の印は・・・。)

ふと、自分の手のひらを見ると、そこには小さな赤い丸印が刻まれていたのであった。

徐々に背筋が冷たくなり始めていったのであった。

(ま、まさか・・・?!)

龍村はポケットの中に異様な重みを感じて、手を入れたのであった。

ポケットの中には懐中時計があった。

懐中時計は時を刻む音は聞こえるものの、劣化し過ぎてて時間を読むことができなかった。

だが、龍村はこの赤い丸印を!この懐中時計を!知っているッ!いや、「体験」しているッ!

そして、龍村は理解したのであった。

(あれは夢じゃない・・・現実だったんだ・・・。だったら、俺がすべきことは一つッ!)

龍村はウェルギリウスの言葉を思い出しながら、懐中時計を眺めていた。

(タイムトラベルしたのか、俺は・・・。)

彼は決意を秘め、懐中時計をポケットの中にしまい込んだのだった。

(今度こそ、俺は東御院さんを救ってみせるッ!)

窓際の席に座って、真面目に授業を受けている東御院あやか。

彼女はこれから起こる出来事、彼の決意、知る由もないのであった。


「おい、龍村。食堂行こうぜ。」

「あ、ごめん!俺、ちょっと用事があるから、先に行っといて。」

「そうか・・・。珍しいな。まぁ、あとでちゃんと来いよ!席は取っておいてやるから。」

「ありがとう!じゃ、また・・・」

昼食の時間になり、友人たちはいつも通り、龍村を誘って、食堂に行こうとしたが、彼はその誘いを断り、その場を去ったのであった。

彼は全力で走った。一刻も早く、あの場所へ、「辺獄」が現れる場所に到着し、あの親子を人質になるのを防ぐために・・・


「どうしたの、あやか?男子なんか見て?」

「ふへっ!はわわわわわわわ・・・み、見てないよ、わ、私、龍村君のことなんか見てないよッ!」

親友の言葉に慌てふためる東御院。

そんな彼女の様子を見て、親友は呆れるのみであった。

「あのね、あやか。龍村って、あやかが思うような人じゃないよ。あいつ、口だけのビビりなのよ。あやかは可愛いんだから、あいつよりも、もっといい男にすればいいのに・・・。」

「そうなのかな、りょーちゃん。龍村君ってとーても優しくて、かっこいい人だと思うんだけど・・・」

「恥ずかしくて、一言も喋ったことがないのに・・・。」

「ふぐぅ!そ、それは・・・」

東御院は親友の指摘に何も反論が出来なかったのであった。

彼女もまた恥ずかしくて、龍村に喋りかけることができずにいたのであった。

「そんなことよりも珍しいわね。あいつが友人の誘いを断るなんて・・・」

「なーんだ、りょーちゃんも龍村君のこと、ちゃんと見てるんだね。さすが幼馴染・・・」

「うるさいあやかはこうしてやるぅー!」

「アハハハハハッ!やめて、やめて、アハハハハハッ!りょーちゃん、くすぐったい、アハハハハハッ!」

親友とじゃれ合っていた東御院であったが、突然、禍々しい魔力を感じたのであった。

「あ、ごめん!りょーちゃん、用事できちゃったから、ちょっと行ってくるね。」

「えー、また・・・。今日の弁当、一緒に食べないの・・・。」

「うん、ごめんね、りょーちゃん。すぐに戻るから。」

「じゃ、待っとくね。」

「ほんとにごめんね、りょーちゃん。戻ってきてから一緒にお弁当を食べようね。」

そういうと、東御院は走ってどこかへ行くのであった。


「やっぱり、こうなっていたか。」

龍村が到着とすると、すでにそこは地獄絵図が広がっていたのであった。

あの時と同じく、大量のゾンビたちが人々を襲っていたのであった。

「お、お願い・・・た、助けて、うあぁぁぁぁぁぁ!」

バコッ!

「大丈夫ですか!早く逃げてください!」

「あ、ありがとうございます。」

龍村はゾンビの頭を椅子で振りぬいて、ゾンビに襲われていた人を助けたのであった。

龍村はありとあらゆる物を使い、ゾンビに立ち向かっていた。

そして、多くの人々を助けていたのであった。

確かに、ゾンビと対峙することに関して、龍村は恐怖を抱いていた。

しかし、彼は知っていた、この後、彼女が現れること、そして、ゾンビなんかよりもっと恐ろしい怪物が現れるということを。

その時のために、彼は彼女の邪魔にならないように一人でも多くの人を助けてようとしていた。

その姿は、かつて地獄絵図を前に、恐怖のあまり絶句し、立ち尽くすことしかできなかった姿はなく、果敢にもゾンビたちに立ち向かっていたのであった。

全ては彼女を救うために・・・。

そして、彼はあの親子を見つけたのであった。

グラァァァァァ!

その時、上空から強烈な光が降り注ぎ、ゾンビたちを焼き尽くし、灰にしたのであった。

「もう大丈夫ですよ。さぁ、俺が赤ん坊ごと抱えますから、早く逃げましょう。」

「あ、ありがとうございます・・・。でも、なんで、私達に気づいたんです?」

「まずは逃げましょう。」

上空には白く美しい髪に、乳白色の肌、巫女装束のような純白な小袖とミニスカを身に包み、その手には槍のような物を持っている「白銀の巫女」が佇んでいた。

龍村は彼女の姿を見ずに、躊躇なく親子を抱え、走り出したのであった。

そして、彼女は手に持っている槍の様な武器の先に、光を収束し、

「ファイアー!!!」

掛け声と共に、光は分散し、閃光となって、ゾンビたちを焼き尽くしたのだった。

瞬く間にゾンビたちは灰になっていくのであった。

「ふぅ・・・」

ゾンビたちがいなくなったことを確認し、彼女は安堵するのであった。

「なんてヘビーな火力だ。これが『白銀の巫女』か。これはヘビーな戦いになるな。」

上空に佇んでいる彼女の後ろに、突然、男が現れたのであった。

彼女は男の気配を感じると、男の方を向き、槍の先から極太ビームを男に放出した。

「おいおい、挨拶なしでの攻撃とは、ヘビーじゃあないか。巫女様は礼儀をライトにしているのかい?」

男は極太ビームを間一髪で避け、軽口をたたいていたのだった。

その男の格好は、男性にしては小柄な体型で、髪はやや金髪が入っているオールバックであり、軽薄そうな印象を与えていたのだった。

「あなたは誰なの?」

白銀の巫女の気配が明らかに変わった。明確な殺意を持って、その男に対峙していた。

「『白銀の巫女』様は意外と無愛想なんだな。まぁ、俺の名前は『背徳者』の一人、『辺獄』だ。」


「『背徳者』。ようやく会えたわ。」

「おいおい、その名前で俺を呼ぶのはヘビーだぜ、巫女様。俺のことは『辺獄』って呼んでくれ。」

「名前なんてどうでもいいわよ。どうせ、ここで清浄してあげるから!」

「ハハッ!そいつはライトなジョークだな。」

彼女の武器の先から光のビームが何発も放たれた。

彼女の攻撃は熾烈を極め、「辺獄」と名乗る男は避けるだけで精一杯であった。

「おいおい、こいつはヘビーな状況だぜ。」

男は避けながらも距離を取りつつ、小石を拾っていたのだった。

「隙ありだぜ、巫女様!」

男は一瞬の隙間を狙い、小石を彼女に投げつけたのであった。

小石程度避ける必要はないと判断した彼女であったが、

「がはっっっっっ!」

小石に当たったとは思えない程の衝撃が彼女を襲うのであった。

あまりの衝撃に一瞬、気を失い、上空から落ちるのであった。

「くぅ!ハァ・・・ハァ・・・あなた、なにをしたの?」

彼女は何とか地面に直撃する前に意識を取り戻し、着地に成功したのだが、身体には先ほどの痛みがまだ残っていたのだった。

「ハハッ!決まっている。俺の能力は『物の重さを変える』。石が当たった瞬間に重さを何倍にしただけさ。」

「そういうことね。じゃ、さっき空を飛んでいたのは、自らの重さを軽くしたからなの。」

「その通りだよ、巫女様!」

「自分の能力をそんなに簡単に教えるなんて、あなた、優しいね。」

「優しい、いいや違うぜ。これは余裕の証だぜ、巫女様。」

男はそう言うと、周りの椅子や机、花壇、マンホール等が宙に浮きはじめたのであった。

「さて、巫女様。パーティの開演だぜ!」

そして、宙に浮いた物たちが一斉に彼女を襲い始めたのであった。

彼女はそれらをビームで全て撃ち落としていたのだった。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「なんてヘビーな火力なんだ、巫女様。」

(だが、しかし、これほどヘビーな火力。いつか、魔力切れが来るに決まっている。勝負はその時ッ!)


巫女の攻撃を避けつつ、辺りの物を空気よりも軽くすることで浮かし、それを放出し、相手の魔力切れを狙う「辺獄」。

それらを全て、撃ち落とすのと同時に男にもビームを放つ「白銀の巫女」。

その戦いを常人の域を超えていたのだった。

そんな中、龍村は二人の戦いが見れなくなるところまで親子を抱えて逃げることに成功したのであった。

「すいません。この人たちのことお願いします。」

「了解した!」

「本当に、本当にありがとうございました!このお礼はどうしたら・・・」

「大丈夫ですよ。俺は当たり前のことをしたまでですから・・・」

龍村は親子を病院に預けたのであった。

彼はあの親子を「辺獄」に人質にされずに助けることができたことを満足していた。

幸せそうな親子の姿を見て、龍村自身も救われるような気持ちであった。

彼は病院を出て、再び、二人は戦っている場所へと走り始めたのであった。

(あの親子を救ったのに、なんだこの嫌な予感は・・・。)

妙な胸騒ぎが止まらなかったのであった。


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