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エサ確定!?

「じゃなかった!」


 そうだ、今は目の前のドラゴンくんの怪我をどうにかしなくては。かといって、今自分の目の前にあるのはアンズちゃん太鼓判の高級? 回復薬だけだし。


「そうだ! 自分に使ってそれで効果があればドラゴンくんに使えばいいんだ!」


 なんでこんな簡単な事が思いつかないんだ自分! 


「よ~し、さっそく」


 アンズちゃんを降ろして、自分の手のひらに回復薬を数滴たらしてみる。


 すると……。


「おお! すごい!」


 私は目を見開く。みるみるうちに傷口が塞がっていくじゃないか! しかも、傷跡が全く残ってない。


 これはアンズちゃんの鼻が本当に正しいみたい。


「よし、これで」


 寝ているドラゴンくんを起こさないようにそっと近づき、傷に回復薬をかける。すると私の傷同様、みるみる傷が塞がっていく。


 量が足りなかったのか、多少痣みたいに傷は残っていたけど、痛々しさは全くない。心なしか、ドラゴンくんの表情も安心したものになった気がする。


「良かった……」


 思わず力が抜けてしまった。


 ドラゴンくんを助けられた。それが私の中でじわじわと熱を持っていく。


 本当に、本当に良かった。


「なんか、疲れた」


 ふかふか毛を触っているせいか、ドラゴンくんの体温が私よりも高いせいか、いい感じに日差しが降り注いでいるせいか。


 とても眠いんだよね。


「神秘の泉、行かなきゃいけないんだけど」


 言い終わった瞬間、大きなあくび。


 だめだこれ。動けない。


「アンズちゃん、ごめん。少し昼寝してから行くね」


『昼寝? アタシもする! 向こうに広場があるから、そこなら安全だよ!』


「動けん……」


 私はドラゴンくんの毛に埋もれるように体を横にした。うん。最高級の毛布の上に寝てるみたい。とても寝心地が良い。


『カヤちゃん! 竜族の近くは危ないよ!』


「大丈夫、大丈夫……」


 言ってる合間にも、私の思考は夢の世界へと旅立ち始めている。これはもう、目を閉じるしかない。


「おやすみなさい……」


 必死に叫んでるアンズちゃんには悪いけど。


 いい夢、見れそうだ。



――バッサバッサ。


「……むにゃ」


――バッサバッサ。


「う~ん。ふかふかさいこ~」


「ぎゃう」


「だよね~。……ん?」


 私は、首を傾げた。


 なんか全身がふわふわしてるんだけど。なんというか、雲に包まれているような水の中にいるような。


寝起きのせいか、まだぼんやりする頭を上げながら目を開き、


「うっぎゃあぁぁあああああああ!」


 大絶叫を上げた。


 目の前に広がってたのは、広大な緑。それが今さっきいた森だと分かるのに、そこまで時間はかからなかった。


 頬を切る強い風と、それを打ち消す程の大きな羽音。腹を掴むように食い込むかぎ爪のついた大きな足。


 空を飛んでる。それ以上も、以下もなかった。


「どうなってるのこれ⁉」


 意味が分からない。寝ている合間に何起きた⁉ 混乱してると、胸の辺りがもぞもぞ動いた。


 ん? このもふもふ感は!


『プハ!』


「アンズちゃん!」


 胸の間からぴょこんと頭を出したのはアンズちゃん。けど、なんか。


「小さくない? アンズちゃん」


 私の知ってるアンズちゃんは、子犬くらいの大きさのはずなのに、今のアンズちゃんはどうみても手のひらサイズしかない。


 けど、小さくなっても変わらぬもふもふ感は最高だね~。今の状況がパニックだから余計、もふもふに現実逃避したくなってる私は悪くない。


『魔法で小さくなったの! あのままじゃ、置いてきぼりになってたから』


 どやって顔してるアンズちゃんマジ可愛い。けど、手ががっしり掴まれてるからよしよし出来ない。


 無念だ。


「とりあえず、なんでこうなったの」


『えっとね。カヤちゃんが寝た直後に竜族が起きてね。傷見てカヤちゃん見てたと思ったら、カヤちゃんがしってして、びゅ~って飛ぼうとしたの。だからアタシ、慌てて小さくなってカヤちゃんの服の中に入ったの!』


「……」


 どうしよう、全く分からなかった。


「ちなみに……どこ向かってるとか、分かる?」


『う~んとね。このまま行くと竜国だよ』


「……へ?」


 待て待て。少し整理させて。


竜国ってドラゴンくんの仲間たちが住んでる所だよね?


 アルバさんが人間族が竜国に入るのは、怖いもの知らずの冒険者か、食料確定された人間だけって言ってなかったっけ?


 つまり、この状況って……。


「私、エサ確定じゃん!」


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