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夢の世界



 知らぬ間に閉じた目を開くと、頭上には雲一つない青空が広がっていた。


 いや、ただの青空じゃない。地平線に向かえば向かうほど、まるで夜になるかのように色が濃くなっており真ん中辺りでは夕日、端では星空が輝いていた。まるで、朝から夜までの空を切り抜いて貼り付けたみたい。


 しかも、地面はもふもふの雲の絨毯みたいになっている。この感触、まるでマシュマロだ。


「……確かアルバさんに離れを借りて、掃除して……寝たはずだよね」


 とすると、ここは夢かなと思って頬をつねったら、やっぱり痛くなかった。


 なんかもう、今日は色んな事が立て続けに起こるなとは思っていたけど、まさか最後の最後までこんな摩訶不思議なことに巻き込まれるなんてね。


「……ねむ」


 正直、早く休みたい。


「おっほっほ。こんばんは、華夜殿」


 突然、背後から聞こえてきた声に振り向くと、頭に天使の輪っかをのっけた八頭身のおじいさんがいた。



 神様だ。



 これはどう見ても神様だ。十人中十人、必ず神様って言うやつだ!


「すごい! 神様なんて初めて見た!」


「人間族の前には早々現れないからのぅ。無理もないわ」


「うわ、めっちゃ写メ撮りたい。SNSにあげたい!」


 言った後に、そうだ。私別世界にきてるから無理なんだと気づいた。


 くぅ……絶対、話題になるのに!


「そうだ、神様! あの手紙なんですか!」


「手紙?」


「勝手に殺して勝手に異世界に放りだして‼ アルバさんがいなかったら、私死んでましたよ!」


言ってるうちに、手紙をもらった時の怒りがまたぶり返してきた。理不尽な事は会社だけで十分だ!


「それの送り主は、華夜殿の世界の神からじゃ。ワシらは関与しておらぬ」


「だとしても、同じ神様でしょ!」


「……神でもどうにもできないこともあるのじゃ」


 神妙な顔でそう言われてしまえば、二の句が続かなくなる。


 正直、アルバさんと出会えたせいかそこまで怒ってはいない。これで戦火の中に放り込まれてたら、本気で神様の首絞めてたけどね。


「それで、私になんの用ですか?」


「過去からの盟約により、明日神秘の泉にて、そなたに従族を渡そうと思っておる」


「じゅうぞく?」


 なんじゃそれ?


「従族については、アルバから聞くといい」


「ここで説明してくれれば、わざわざアルバさんから聞くっていう手間が省けるんですけど……」


 言ったら、何故か神様は、頬をぷくってして、両手をパタパタさせ始めた。怒ってるんだろうけど、可愛くしか見えない。


「ワシも忙しいんじゃ! 今日で5徹目なんじゃぞ!」


「5徹……」


 そんな事を言われると、同情というか、尊敬というか……なんか仲間意識みたいのが芽生えてきた。


……まぁ、神様なんだし、人間のブラック生活よりも真っ暗な生活をしてるんだろうな。


「大変なんですね。神様も」


「そうじゃ、エンジェルプリティスの連続公演が近いからのう」


 ……ん?


「華夜殿の件が終われば、半月の有給なんじゃ!」


「ブラックどころか真っ白だった!」


 有給半月ってなんだよ! 


あれか、神様の仕事スタイルは海外スタイルなのか!

 

羨まし過ぎる!


「行き場所もアルバがしっておるから、目が覚めたら聞いてみるといい。あやつ、そなたと会えるのを楽しみにしておったからな、仲良くしてやってくれ」


 神様が言った瞬間、なんかどんどん眩しくなってるような気がして、目を細めてたら。


「……あれ?」


 気づいたら、見慣れない天井を見つめていた。眩しかったのは、朝の陽ざしのせいだったみたい。


「変な夢だったな~」


ゆっくりと体を起こし、ぐっと伸びをする。


 いつもアラームに起こされてたからね。こうやって自然と起きるのが久々過ぎて、じんわりと感動してしまった。


「改めて見渡すと……すごい場所借りちゃった」


 離れと聞いてたからこう、プレハブ小屋みたいにこじんまりしたものかと思ってアルバさんに付いて行ったら、一軒家みたいなのが出てきて本気で驚いたわ。


 中に入ると広いし、家具もある程度そろっていた。アルバさんに話を聞くと、どうやら幼馴染が使っていたとか。


『あいつ、冒険で家を空けるし片付けしないから、俺の家の二階に移動したんだよね』


 冒険って言葉が出てくるとは、さすが異世界。やっぱりモンスターとかいるのかな。ちょっと興味があるけど私、一般ピーポーだしね。なるべく危ないことには首は突っ込まないようにしないとね。


 何事も平和が一番。


「一度アルバさんの家に行ってみようかな」


 夢に出てきたおじいさんが、アルバさんに聞けってほぼ丸投げしてたし。


 それに、離れの件も改めてお礼を言わないとね。



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