レッツゴー王都
「……まぁ王都の近くに森があるから、その中に降りれば大丈夫かな」
「おお!」
「くれぐれも、くれっぐれもオパールは見つかっちゃダメだからね!」
「わ、分かりました」
めちゃくちゃ念押しされて、若干引いてしまった。隠れなきゃいけない本人は私の頭の上で昼寝してたけどね。
「竜族の足だと……王都までどれくらいだろ?」
「そもそもオパールが王都の場所を分かってるか微妙な感じだけど……聞ける?」
「試してみます」
オパール。オパール! っと揺すりながら呼んだらあくび付きで起きてくれた。
「ギャウ?」
「オパール、王都の場所わかる?」
「ギャウギャ?」
「王都はえっと……一番偉い人間族の根城!」
「根城って……」
「ギャウ!」
「縦に首振ってますけど」
「嘘でしょ……」
さすが私のオパール。根城で通じるとは。賢いぜ!
『カヤ! お、俺様も分かったぞ! すごいだろ!』
いや、絶対にわかってなかったでしょと心の中で突っ込んだけど、敢えて口にしない。
だって、オパールに対抗心を燃やしてるダリアめっちゃ可愛いんだもん! 突っ込めば拗ねて暫く触らせてくれなくなるし。スルースキルも大事大事。
「ダリアもすごいね! いい子いい子」
『おう! もっと褒めろ褒めろ!』
「いい子いい子……もふもふもふ」
あ~。癒し。オアシス。楽園。ダブルもふもふ最高。
「それじゃ、明日にでも行ってきます!」
「……気をつけてね」
「はい!」
それじゃ、レッツゴー! 王都!!
◇
アルバさんに送られ、シロガネは王都に向かって大きな翼をはばたかせていた。下を見ると飛ぶように小さな村が何個も過ぎて行く。
「おお、人がゴミのようだ」
『なんだそれ』
「いや、一度言ってみたくて」
某映画の名台詞なんてダリアは知らないから、ふーんと生返事をしてオパールの体の上に寝そべっていた。
「けど、本当にミニチュアみたい」
近場にありすぎたせいかタワーとか登ったことなかったけど、きっと展望室から下を見たらこんな感じに景色が見えてたんだろうな。
「オパール。快調?」
「ぎゃう!」
「そっかそっか」
久々に元の姿で思い切り飛んでいるせいか、オパールの機嫌はかなり良い。今なら空中返りとか頼んだらやってくれそうだな。
そんなことを思っていたら、眼前に大きな緑の群衆が見えてきた。きっとアルバさんの言ってた森だろう。
「オパール―。あの森で王都に近い場所に降りるよ」
「ぎゃう~」
オパールは森の上をくるくる回った後、良い感じの広場に降りてくれた。降りてる途中、バチっと特大の静電気が走って寝てたダリアが飛び起きてたけど。
『な、なんだ今の!』
「静電気じゃないの?」
『……なんだ。そのせいでんきって』
訝し気なダリアの視線。そうだ。この世界には電気がないんだった。としたら、なんと説明したらいいのやら。
「うんと……えっと。毛を逆立てる現象?」
絶対違う。どうやっても違う! 自分で言っときながらセルフツッコミを入れてしまったけど、ダリアは本気にしたらしい。さらに毛を逆立てていた。
『お、俺様の毛並みをボサボサにする気か! 許せん!』
って言いながら、ダリアがし始めたのは毛づくろい。
……うん。癒しだ。