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絶体絶命

 やばい! 絶対絶命! 捕まってるんだから既に風前の灯火だよ!


 このまま私、ぺろって食べられちゃうの? まさかの恩を仇で返されるパターン!


 あれでしょ。これからドラゴンくんの家に運ばれて、でっかいお皿に裸でのせられて、ナイフとフォーク持ったドラゴンくんに食べられちゃうやつでしょ⁉


 あ、出来るなら皿にドラゴンくんのふかふかの毛を敷いてくれるとめっちゃ嬉しい。


 じゃないだろ私!


「やめて~! 食べないで! ほ、ほら! 私、不規則な生活してたし、添加物豊富な物ばかり食べてたから毒だらけだよ。美味しくないよ!」


『竜族は毒大丈夫だよ?』


「その情報、今欲しくなかった!」


 そう言ってる間にも、どんどん進んでいくドラゴンくん。


 あの濃い霧の先が竜国なのかな……。


 なんかもう、完璧に現実逃避し始めたよ。


「私、神秘の泉に行って、もっふもっふのパートナー貰うだけだったのにな……」


 今頃、神秘の泉で神族さんが作ってくれたパートナーを抱きしめてるはずだったのに。こんなのあんまりや。


「ごめんねアンズちゃん。巻き込んで」


『アタシはアルバにカヤちゃん守ってって言われたから、最後まで守る!』


 私も竜族みたいに火吹けるんだから! と胸を張ってるアンズちゃんに涙が出てきた。


 なんていい子なんや。


 私だけならまだしも、こんな可愛い子を犠牲なんてできない!


「なんとしても神秘の泉に行って、アルバさんの元に帰らなきゃ!」


 そうだ。諦めるのは早いぞ、狭山華夜! まだ竜国に辿り着いたわけじゃないし、下には森が広がってる。それなら逃げ出す希望があるじゃないか!


 社畜ど根性見せたるわ! 人間なめんな! といき込んだ瞬間。


「ぎゃうー!」


「ちょ、え……」


 ふわっとした浮遊感に、私は嫌な予感を感じた。


 お願い。外れて! 外れてくれぇ! と叫ぶけど、悲しかな。こういう時の嫌な予感って大抵的中するんだよね。


「うっぎゃあぁぁああ‼‼」


 突然の急旋回。世界がぐるぐると回り、全身に重力と遠心力がもろにかかって、体が変な悲鳴を上げた。絶叫系のアトラクションはそこそこ好きだけど、これはダメなやつだ!


「無理無理無理! あ、また……おっひょぉぉぉぉぉ!」


 今度は急上昇からの急降下。かかる重力は予想外。


 あれか、餌の私が逃げるだなんだ言ったから、逃げないように弱らせる気か! そういう事か!


「負けるか……うぎょぎょぉぉぉぉ!」


 突然の加速に、私は見えない風の壁に常にぶちあたっているような状態になっていた。これは、しゃべるのもままならない。


「ぎゃーうー」


 そんなこんなしていると、ずしんという一際大きな振動と共に飛んでる感覚がなくなった。


「なにが……起きたの……?」


 知らぬ間に閉じていた目を開けると、目の前には森が広がっていた。どうやら、ドラゴンくんが地上に降りたみたい。


 安心もつかの間、シェイクされた胃からなにかがせりあがってきていた。口を押えながら物陰にダッシュした私は、それを地面に吐き出す。


「うぇ……死ぬかと思った」


 あんな体験できればもうしたくない。命いくつあっても本当に足りないよ。


「そうだ! アンズちゃん!」


 慌てて胸元からアンズちゃんを出すと、完全に目を回していた。まぁ、こうなるよね。


「で、君はどこに私たちを連れてきてくれたの?」


「ぎゃう!」


 多分、竜国にはまだ入っていない。なのに何故か嬉しそうに鳴くドラゴンくん。


 どうやらドラゴンくんの言葉だけは分からないみたいなんだよね。おかげでなに言ってるのか、さっぱり分からない。


 説明を求めるにも動作で分かる程、私はドラゴンくんと仲が良くないからな……。


「取り敢えず、自力で考えてみるか」


 呟きながら私は辺りを見回した。


 暗いうえに霧が立ち込めて視界が悪い。けど、見上げるとここだけ木々がくり抜かれたように空がきれいに見える。


「霧の時って、空も見えないんじゃなかったっけ?」


なんだか不思議な現象だな。


「ここは広場かなにかであってるのかな?」


 周りの様子を知りたくて、てくてくと歩いていると……。


――ズル!


「……へ?」


――ジャッパァァァン‼‼


「うっぎゃぁぁぁぁ!」


 何故か、水の中にダイブした。


 って! 私泳げないんだけど!


「た、たすけ……うっぷ! あっぷ!」


 必死に上がろうとするけど、口に水が入って上手く言葉が発せない。


 これどうしよ!


「うっへぇ! おぶ!」


 死ぬ……。私はこのまま溺れ死ぬんだぁぁぁ!



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